28.Euthanasia

ガラスケースに、一枚の写真が飾られていた。

柔らかく、優し気に微笑む少女の写真。

どこにでもいるような、ありふれた少女に見える。

「これは?」

「“Euthanasia”と呼ばれています。この展示物は、兵器かどうか曖昧なのですが。あるものは全て飾るのが当館の方針ですので」

「誰の写真なんだ?」

「不明です。この少女は、戦場に現れた集団幻想だと言われています。銀河系のあらゆる場所で同時多発的に、多数の兵士に目撃されました。これは少女を目撃した兵士たちの情報を元に構成されたモンタージュ写真です」

「ただの噂話では」

「問題なのは、この少女を目撃した兵士が、例外なく一週間以内に死亡したことです。皆一様に、ベッドの中で眠るように。疲弊した兵士が見る集団幻覚なのか、兵器を用いた何らかの情報汚染なのか……様々な説が唱えられましたが、詳しいことは結局分からないままでした」

死神か、救いの神か。

摩耗した精神の見せた幻か。

「あるいは――本当に、そこに『居た』のかもしれませんね」

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