27.魔法使い

それは、なんとも判別に困る代物だった。

ここに飾ってある以上ただの置物というわけでもないのだろうが、一見すると巨大な人型の彫像にしか見えない。

身体の大部分は半透明な水晶(?)でできていて、うっすらと透けて見える脊椎を模したような中核部は木材に見えた。

「これは何」

「戦闘用ロボットです。正式名称は不明ですが、便宜的に“魔法使い”と呼称されていました。この機体は、銀河の外れの沼の惑星で朽ち果てているところを発見されました」

「ロボット?」

「はい。動力源は不明ですが、この機体は確かに駆動することが確認されています。また、材質についてですが、装甲に使用されている水晶のような結晶体や中核部の木材状の物質は、この機体の他に銀河では確認されていません」

「誰が作ったんだ?」

「そこが問題で、この機体は、銀河のあらゆる技術体系から外れています。個人が作成できるようなものでもなく、未だに何もかもが謎に包まれた機体となっています。誰が作ったのか、どうして動くのか、何の目的で作られたのか」

「名前の由来は?」

「駆動する際、関節部に魔法陣のようなものが浮かび上がることからつけられました。この魔法陣はどうやら何らかの数式のようなものを演算しているらしく、これを解析した研究者も何人か居たのですが……目立った成果は得られませんでした」

「結局、分かったことは」

「確かなことは殆ど何も。専門家の予想としては、大まかに二つです。外宇宙から流れ着いたか、あるいは――この世界の外側から来たのでは、と」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る