26.Bacchus

「“Bacchus”は、一時期銀河で広く使われた戦闘用ロボットです。こちら、なんとコクピットへ実際に乗り込めるようになっています!是非ともお試しあれ」

「じゃあ、まあ……」

タラップを渡り、コクピットに乗り込む。

コンソールを叩くと、OSのロゴに次いで見慣れない表示が出てきた。

『20歳以上ですか?』

『はい』

「なんだこれ」

「『はい』を押してもらって結構です。形式的なものなので」

開いたコクピットハッチから顔を覗かせながら、少女が説明を続ける。

「“Bacchus”の特徴は、特殊な動力炉から放出される粒子です。これはあくまでも動力炉の機構上の副産物でしかないのですが、この粒子には周囲の人間を『酔わせる』というアルコール様の効果があり、士気の向上や痛覚の鈍化を目的にこの機体が流行する原因になりました」

『はい』を押す。

OSそのものは至って普通だった。

「これは周囲の人間だけでなく搭乗者自身にも影響を及ぼし、長時間の使用は判断力の低下や強い酩酊状態をもたらし最悪の場合死亡するケースもあったとか。恐怖感の軽減を目的に若年層に強く支持された機体でしたが、若年層ほど酔いの回りが早く、また経験の不足から戦闘を止めるタイミングが掴めなかったため早々に規制の対象になりました。『ドラッグよりはマシだ』という反発も少なからずあったようですが」

コクピットの隅には、小さなポスターが貼られていた。

『戦争は二十歳になってから』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る