19.ER01

「これはコンタクトレンズ?」

「はい。“ER01”と呼ばれる兵器です」

「ナンバリングなんだな」

「はい。同一開発者の“ERシリーズ”がいくつか存在します」

「どういう兵器なんだ?ただのコンタクトじゃないんだろうけど」

「“ER01”は、いわゆる透視装置です。サーモグラフのようなものでは無く、色や質感、距離感まで完璧に透過できます。“ERシリーズ”の開発者は、専門の研究者でも何でもない、理系のごく一般的な男性でした。彼は驚異的な、信仰心にも似た集中力で人生のほとんどをERシリーズの開発につぎ込んでいました。まともな研究設備もないままに」

何が彼をそこまで駆り立てたのだろうか。

「元々は『衣服を透過する』ために作られたのですが、その妥協を許さぬ研究魂から金属すら透過するほどの精度を手に入れました。技術者の鑑ですね」

狂気的である。

「街中で使用していたところ、余りの挙動不審さに連行され、押収されたものが解析された結果余りの高性能さから国家によって軍事転用された傑作兵器の一つです」

発明とは案外そういうものなのかもしれない。

「あ、ちなみに、鉛すら透過しますが靴下だけは透過しないそうですよ。これがよく使用されていた時代の戦闘ロボット界隈では、機体の弱点を隠すために装甲内部にべたべたと靴下を張り付けるのが流行ったそうです」

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