14.さむらいソード

「剣かな、これ」

「“さむらいソード”ですね。信じられないくらいの切れ味が売りです。正式名称は諸説あり、ソードだったりサーベルだったりセーバーだったり、考証の結果何度も変遷しています」

「『信じられないくらい』ってどのくらい切れるんだ?」

ぱちん。

少女が指を鳴らすと、壁に映像が投影される。

まな板の上のトマトがスパスパと切れていた。

「潰れやすいトマト(合成)やこんにゃくなんかもこの通り!」

通信販売だったのだろうか?

「……という冗談はさておき、おおよそ銀河にある全ての物質を切断できるとされています。斬れないものなどあんまりありません。より進んだ時代のための、高貴で洗練された武器として兵器マニアの方々からの評価も上々です」

飾られている剣を見る。

柄の部分には焦げた跡があり、激戦を潜り抜けてきたものらしいことがうかがえた。

刀身には小さく動物のような模様が見て取れる。

「柄の傷跡は溶岩の熱によるものとされています。激戦を物語っていますね。刀身に彫られている四足歩行の生物は空想上の存在とされていますが、詳細は不明です。数々の戦場を渡り歩いた武器ですが、ガス状惑星での決闘の末、使用者の腕ごと切り落とされていたものを当博物館が回収しました。それから噂の域を出ませんが、使用者の倫理観が歪んでいると刀身が赤く染まるとか染まらないとか……」

「逸話の多い武器だな……」

「ちなみに、武器としての原理は刃に接した物質が共振崩壊を起こしているそうです。オーパーツの一つですね。切れ味が良すぎて、不慣れな人間が使うと自分を傷つけることもあったとか」

洗練された武器……なのだろうか。

常人には扱えそうにない。

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