6.ウルトラX

「これは?」

ガラスケースの中を、子供用の玩具のような小さなロボットがしゃかしゃかと走り回っている。

壁に激突しては向きを変え、起き上がって走り出す姿はなかなか愛らしい。

「“ウルトラX”は、もとは十メートル級ロボットのデザイン模型として作られました」

「それが何でここに?」

「これ、どうやって動いていると思いますか」

「電池かゴムかゼンマイか」

「どれでもありません。これは純度100%粘土製なんです。中に空間はありません」

「え」

でも現に動いている。

「はい。このロボットのようなものはどうして動いているのか誰にも分からないのです。しかし再現性はあり、全く同じデザインと原材料を使用すると同様に動き回ることが確認されています」

「軍事転用とかは?」

「試みられましたが、失敗しました。アンテナの位置を1センチでも動かしたり、小石一つでも余分なものを背負わせるとこれはただの粘土の塊に戻ってしまうんです」

ガラスケースの中で、変わらずしゃかしゃか動き回るロボットもどき。

「形状と原材料がアンテナ代わりになり何かを受信しているのではないか、とか様々な仮説が出ましたが、いずれもオカルトの域を出ませんでした」

しゃかしゃか。バタン。

しゃかしゃか。バタン。

このまま人類が滅んでも、ずっとこうしているのだろうか。

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