第5話 拠点ゲットもボーナスですか?
「ありがとうございます、ありがとうございます……!」
ギガントロールの死体に向かう兵士達とすれ違いながら町に戻ると、さっきの商人が滂沱の涙を流しながら頭を下げて来た。
おじさん、鼻水出てる出てる。
「いえ、そんな……、俺は何も」
「いいえ! とんでもない! あなたは命の、ひいては町の恩人です!」
そりゃ、あんたが町に逃げて来たからじゃないのか。
とは黙っていたメネウだったが、町の人はその事についてはさして突っ込まない。
「私はこの町の商人ギルドを運営しているハーネスと申します。あなたは……」
やっと涙を拭いて鼻をかんだ恰幅が良い男は、改めて名乗ってくれた。なるほど、商人ギルドか。
町の経済を握ってる男だから町の人も何にも言わないんだな。
嫌われてるわけでもなさそうだし仲良くしておいて損はないだろう。
「メネウだよ。えーと……旅人で、崖から落ちて記憶を失っていて、あとはよく分からない」
今夜絶対説明を聞かなければならない。
特にあの、なんだ、あの何か出たやつ。本当によく分からない。
「とりあえず、ステータスを見たいとか、そういう所から忘れてるんだが……」
困っていたのは本当なので付け加えると、ハーネスはお任せくださいと胸を叩いた。
「メネウ様がこの町にいる間は、私が責任を持ってお世話させていただきます。一先ず私の屋敷にご滞在されてはいかがでしょう?」
それは助かる。
と、思ってはっとした。
手紙は日本語で書いてあったし、今も会話には困らないが、これ、何言語だ?
読み書きはできるのか?
「助かります。途方にくれてたんで……」
「私は生憎仕事があるので、娘をつけましょう。屋敷で一度落ち着かれたら町を見るのも良いかと」
「お言葉に甘えるよ。本当に助かる」
「命の恩人ですからな!」
いっそ転生モノで主人公が最初にチートを見せるのすらボーナスの一つなんじゃないかと疑い始めた。
都合のいい展開だが、そう考えればご都合主義も納得できる。実際誰も死んでないみたいだし。
ハーネスを迎えに来た従者さんに馬車に乗せられ、メネウはハーネスの屋敷へ向かった。
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