□2日目 光守

「学校の友達が、"守人"の家系だった・・・!?」


『かもしれない、っていうだけなんだけど。でも彼女自身はそのことを知らないんじゃないかな。ごく普通の子だし』


「へえー・・・」


 美波の声からは電話越しでも困惑が伝わってきた。その友達のことを全く知らない深夜でさえ驚くことなのだから、美波の驚きは相当なものだろう。


 電話がかかってきたのは解散してすぐ、準備を始めようとした矢先のことだった。かかってきたときは、こんなすぐに一体何の用なんだ、とイラついた深夜だったが、そんなものはすぐに吹き飛んだ。"守人"は力の種類が多いほど協力することでできることが増えていく。それならばその友達も連れて行ったほうがいいのではないだろうか。


「その人も力が使えるのか? 光守っていうことは、光を操る力・・・?」


『でも私は何も見たことないなぁ。何も訓練していないんだったら操れないから、普段から力が漏れてるはずじゃない?』


「うーん・・・。それは確かにそうだよなー。かなり弱い能力なのか、そもそも力が遺伝していないのか」


『可能性はあるね。・・・まあ、あまり期待しないほうがいいんじゃないかな。もし"守人"のことを言ったのにその血筋じゃなかったりしたら、秘密を漏らすことになっちゃうし』


「そうだよなぁ。仕方ない、このことはいったん忘れよう」


 深夜は吹っ切るように言い、通話を切った。


 まさか後になってこの問題をきちんと考えておけばよかったと思うことになるとは、知る由もなかった。


 * * *


 やることは山ほどある。


 出発の準備。一族の親たちへの説明。そして何より、例の能力を上げるという泉について調べること。


 他のことは何とかなるけれど、最後の一つだけはなかなかうまくいかない。深夜がそのことについて聞いたのがいつ、どのような場面で、誰から聞いたのかも覚えていないのだ。しかしその場所がどこなのかがわからなければどこへ行けば良いのか分からないし、今も存在しているのかさえわからない。


 調べると言ってもインターネットで検索できるわけもなく、各家の"守人"一族の資料が保存されている倉庫で資料を探すしかない。資料は膨大な量があるうえに文字は細かく、読みづらい。 終わりの見えない作業に気が滅入りそうになる。


 そんな中でかかってきたのがさっきの電話だった。自分の知らないところにも"守人"の血を引くものがいると知って、少しだけ光が見えた気がしたが、やはりそんなにうまくはいかないものだ。


「光守、っていうと・・・、どんな力なんだろうな」


 資料をめくりながらぼんやりと考えてしまう。


 光を操る、ということは、辺りを暗くしたり、逆に暗いところを明るくしたりできるのだろうか。もし特定の人だけにそれを適用できるとしたら? ・・・かなり役に立ちそうな能力だ。敵に回したら怖いかもしれない。


 考えれば考えるほどその"光守"に会ってみたくなる。猫の手も借りたいこんな時、彼女の事を知ったのも何かの運命なのではないか?


「あー・・・。駄目だ、弱気になってる」


 どうしても頭から抜けないその考えを振り払おうとして、深夜は資料をバタンと閉じた。


 と、その中から一枚の紙がひらひらと舞い出てきた。深夜は思わず、はあ、と大きなため息をついて拾いあげる。面倒臭そうに一瞥し、資料の適当なページにはさみ直す。


「ん・・・?」


 ふと紙の後ろに覗いた文字が目に引っかかった。


「・・・・・・」


 なぜだかわからない緊張を覚えながらゆっくりと紙をどけると。


 そのページには、力の泉パワープラントの文字があった。


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