□2日目 出発前夜
見つけた資料には、
「これなら安心して行けそうだ・・・」
深夜は、ほうっと息をついた。
トントン、トントン、と。階下からは暁音が包丁でリズミカルにまな板をたたく音が聞こえる。それは深夜に、非日常に包まれた生活から現実に戻ってきたような感覚をさせた。
昨日はいきなり人類の滅亡を予言された。その翌日となった今日はいろいろなことがあった。
"泉"に行くことに決めて。"光守"の存在を知って。・・・・・・そして、"泉"の情報を得て。
この道は正しいのだろうか。このまま突き進んで行って大丈夫なのだろうか。未熟な自分たちが"泉"に辿り着くことができるのだろうか。これで本当に人類を救えるのだろうか。
考えることはいつまでも尽きない。不安はだんだん膨らむばかりだ。
それでも進まなければならない。それが、"守人"として生まれた者の使命なのだから。
そこまで考えて、ふと笑いがこみ上げてくる。
「なに、大層なこと考えてるんだろうな」
昨日まではあんなに普通の暮らしをしていたくせに。自分が"守人"をしているときにこんな重大事が起こるなんて考えもせず。
「深夜ー、ご飯できたよー」
暁音のいつもと変わらず明るい声がして、深夜は急いで階段を降りた。
* * *
夜はいつも通り、誰にとっても平等に過ぎていった。
凪沙は心の中で文句を呟きながらもきちんと準備して。煌はいつも通り、好きなアーティストの曲を聴いたり、動画投稿サイトで動画を見たりして。咲穂は初めての仕事にドキドキしながら早めに眠って。陸は見つけた資料を読みながら過ごして。
美波はずっと、昼間見つけた"光守家"のことに気をとられていた。自分に知らされていない"守人"の家があるというだけでも驚くべきことだったのに、それが自分の一番の親友かもしれないらしい。あの様子では陽夏は自分の家のことを知っているわけではなさそうだけれど、それでも信じられない。
親だったら何か知っているかもしれない。聞いてみようか。そう考えながらも、いざ口に出そうとすると躊躇する自分がいた。昨日何も力になってくれなかったこともあるかもしれない。しかし、家で学校のことを話題にするときに陽夏は半分以上の確率で話に登場するけれど、親はこれまで何も言ってくれなかったということが大きかった。親はこれまで自分が思っていたよりもずっとシビアみたいだ。あれからずっと他のことをしながらもそのことばかり考えていて、ベッドに入ってからもなかなか寝付けなかった。
長かったような短かったような、そんな一日が終わって。明日からは、敵の見えない「闘い」が始まる。
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