□2日目 陽夏と美波
人類が滅亡する、なんて。そんなことをいきなり聞いても信じられるわけがない。
授業中、
クラスの座席には空白が目立つ。まあそれは当たり前だろう、あと1週間しか自分に時間が残されていないとわかって学校に行くなんて馬鹿らしいと思う人もいるに決まっているのだから。
でも、この子は来てくれるかと思っていたのにな、と隣の席を見つめる。
机の上には数学の小テストが返されていて、裏返っていてもマルしかついていないのがわかる。名前の欄には、綺麗な字で"水守美波"と書いてある。
美波とは一番の親友だ。出会ったのは高校生になってからだけれど、名簿が隣だったから入学式のときに隣の席だった。初めて見たときから何かピンとくるものがあって、話しかけてみたらすごく気が合ったのだ。
でも、彼女にはいつもどこか踏み込みきれない壁がある。自分から家族のことを話したりしないし、話題に出してもさっとごまかしてしまう。何か隠していることがあるように思える。
ある時美波の幼馴染だという少年に偶然出会ったことがある。その少年と話している美波は陽夏が知っている彼女とは違って、明るい笑顔を見せていた。あれが美波の本当の笑顔なんだ、私にあの顔は見せてくれないんだ、と思ってひそかにショックを受けたのを覚えている。
キーン コーン カーン コーン
考え事にふけっているうちにチャイムが鳴って、いつもと変わらず授業が終わる。
「そうだ・・・!」
ラインしてみよう! と思い立って、急いでスマホを取り出した。
『美波、今日何してるの? 美波がいないと暇だよー』
さみしそうな絵文字とともに送信。
数十秒後、すぐに返信が返ってきた。期待していなかったから、ちょっとだけ心が弾む。
『ごめんごめん。ちょっと用事ができちゃってさ。 悪いけど、数日間学校行けないかも』
「えっ・・・!」
思わず漏らした声が思ったより大きかったようで、周りの生徒たちがちらりとこちらを振り向いた。
しかしそんなことは気にならない。数日間休むって・・・。あと一週間で人類が滅亡するのに?!
もしかしたらもう美波に会えないのかな、と思うと同時に、私なんかその程度だったんだ、とちくりと胸に針が刺さった。
これまでも美波が学校をいきなり休んだことはなかったわけではない。しかし今回はもう会えなくなるかもしれないのに数日間も休むと言っている。
『本当にごめんね。でも絶対にまた会えるから、信じて』
『本当に? ・・・もう仕方ないなあ、絶対にまた会おうね。最後の日には学校サボってどこか遊びに行こうよ』
美波はこうと決めたことは決して覆さない人だ。今から来るように言ってもきっと来ない。それなら次の約束をしておこう。そう思って言ったのだけど、
『・・・あぁ、そうだね。楽しみ〜』
少しぎこちない返事が返ってきて、陽夏はまた淋しくなった。
* * *
『本当に?・・・もう仕方ないなあ、絶対にまた会おうね。最後の日には学校サボってどこかに遊びに行こうよ』
美波はこの返信を見てドキッとした。
-最後の日。本当にそんな日が来てしまうのだろうか。
「ううん、そんなことない。私たちがそれを防ぐんだから」
ぎゅっと拳を握り、ふう、と少し息をついて、返信しておく。
『・・・あぁ、そうだね。楽しみ〜』
そしてすぐにスマホを置いて、パソコンの画面に向かった。そこにはさっきまで見ていた気になる情報が写し出されてている。
それは、"守人"一族の家系図。
「
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