雨花
令和二年二月は、新型コロナウィルスのCOVID19による疫病が、世界規模で広がりつつあった。
コビットちゃんかわいいよ、コビットちゃん。さみしがり屋なのに、自分からは話しかけられなくて、黙って人にくっつくんだよ(ステルス感染)。それでしばらくは気配も感じさせずにしがみついてるんだよ(ステルス感染)。でもたまにはしゃいじゃって、それに付き合わされた人は高熱を出すんだよ、コビットちゃんご高齢者や持病持ちはコビットちゃんのはしゃぎについていけなくて倒れちゃうからお止めなさい。それからコロナウィルスは巨大ウィルスなんだけど、コビットちゃん大きい幼児とか、かわいすぎない!? 幼児なのにインフルエンザお姉ちゃんよりも体大きいんだよ!? そして、感染力出せるくらいに人体で増えても病状発現できないとか、コビットちゃん弱っちすぎてかわいいよ、コビットちゃん。
そんなCOVID19によって、おそらく国民の大半が保菌者となっており、治療法もなく、重症者や死者の増加が懸念されるのを、わたしも憂えてはいました。憂えてはいたのよ。人の命が心配なのと、コビットちゃんがかわいいのは両立するから。これがコビットちゃんを「ヒロインの魔王」とかにしたらみんなも大好きなシチュエーションでしょ? わたしも好きだ。
そんな二月を越えて、政府が二週間が「コビットちゃんが毎年流行するか」「コビットちゃんを撲滅するか」の瀬戸際だと言うような内容を宣言して、まぁ、本気出していろいろ手を打った後の三月二日に。
東京は雨が降っていた。
寝起きのわたしは、朝は晴れ間という少し古い天気を信じて昨晩に洗濯物をベランダに干していて、もう慌てて取り込んで部屋干しのために暖房を入れたのです。
雨だと、どうしても眠気が増す体質なので、眠いなと思いながら、仕事で出かける支度をしていたところ。
雨花の気配がしたのです。
ふっと振り向けば、確かに雨花の未言巫女が微笑んでいたのです。
「みんながんばってるから、わたしも少しだけがんばるね」
「ん?」
雨花の言うみんなとは、人類のことで、がんばってるからとは、コビットちゃん対策で身を削る政策を打ち出したことだった。経済に負担をかけてるのだから、まぁ、命を削ってるのは確かだ。
「あー」
そして、わたしが元々立てていた予測。他のコロナウィルスやインフルエンザウィルスの挙動、季節反転の南半球ではコビットちゃんの感染拡大が緩慢なことから、コビットちゃんは『高い気温と湿度に弱い』可能性が推測される。だからわたしは、春の長雨によってコビットちゃんが終息する可能性もあると考えていた。
合わせて、雨花の特性は「発現」と「消失」。
「そう。なら、わたしの力はみんな持って行きなさいな」
「うん。やれるだけやってみる」
わたしは新聞の天気予報を確認する。三月四日は全国的に雨らしい。
そういうことかと、納得した。
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