第104話 いいかい?親しい人ほど油断ならないんだ
「…んー…ふぁ~」
…はい、皆さんおはようございます。
バレンタインデーの次の日のナユタです。
いやぁ…昨日は大変だった。
案の定、妻たちから大量のチョコ貰うし、ヒュプノスからもチョコ貰っちゃうし、
皆が練習でつくったチョコも貰うし。
おかげで今現在、リビングには山積みのチョコレートタワーが出来ている。
数から考えて常人が食えば糖尿病必至であろう。
俺は昨日凄く「俺の身体は魔術染めでよかった」と思った。
布団をゆっくりとどかして俺が起きるが隣で寝ているアサトやネムトはまだ眠っているらしい。
時計を見てもいつもよりやや早い時間に起きている。
そりゃ起きてないわな。
「…ふぁぁ~………風呂でも入るか」
眠っているみんなを起こさないように寝室を出た俺はまだ肌寒い空気に身震いしながら我が家の大浴室へと向かうのであった。
◆◆◆◆◆
「あ゛あ゛~ 生き返るんじゃあぁぁぁ……」
語尾が若干クロネみたいになるのを感じながら湯船に肩までつかる俺。
今更ながら立派な浴室である。
広さとかは完全に大衆浴場ののそれだけどな。
まぁ一つ欠点があるとしたら広すぎて入浴剤とかが使えないことだな。
やるとしたら箱に入っている物を一回ですべて入れないといけない。
さすがにそんな勿体ないことはできない。
使っている金は我が家の
……生活費だけで一月10万くらい使っている気がするけど気のせい!気のせい!
考えてはいけない領域を感じ取り脳裏からそれを忘れようと頭を横に振っていたが、
突然開かれた浴室の扉の後ろに我が家の女神様たちがタオルを纏い湯気越しにこちらを見ていた。
「おはよう二人とも」
「あっ…おはようナユタ君」
「ぬ…姿がないと思ったらこんなところに居ったのじゃな」
「いつもより早く起きちゃったからな」
夫婦になってそこそこの時間も経ち、
以前なら赤面して悲鳴ものだった状況も当たり前になった。
…さゆりはまだ若干頬が赤いけど。
て、照れられるとこっちも恥ずかしいんだが?
久しぶりの一緒の入浴。
思わず俺の目が二人を吟味してしまう。
さゆりはあまり日に当たってないおかげで綺麗な白い肌に、
とてもご立派なマシュマロの様な双丘がたゆんたゆん揺れている……いやプリンか?
そしてその隣にいるクロネは健康的な褐色の肌が艶やかに煌めき、
さゆりほど大きくはないが美しい形の胸がタオルの下から自己主張している。
………神か…。
俺がR18特有の思考停止をしているといつの間にか二人が俺の隣を陣取っていた。
…いかん、いかん雑念を払わねば…。
別に襲い掛かってもいいんじゃないかって?
いやいや皆さん考えてもみてくださいよ。
確かに妻たちは何とも思わないかもしれないがここは合鍵渡しまくりの我が家。
いつどのタイミングで誰が侵入してくるか皆目見当もつかんのです。
つまり誰も乗り込んでくることの無い夜のベッド以外ではそのような行動は許されんのです。
…あとアサトとかヨルトとかに夜の営みを頻繁に要求され始めたら断れず俺が困る。
というわけでナユタハウスでは健全を目指すのです。
そんなことを考えていると何やら隣のあたりにいるさゆりが何やら俯きぶつぶつ言っている。
「さゆり?」
「…積極的に…積極的に…う~ん…ねぇナユタ君」
「なんだ?」
「積極的に行動するのって大事だと思う?」
「ん?んー…まぁ何事もやらないときっかけはできないし、
やらないでする後悔よりはやってする後悔の方が個人的にはいいと思うけど?」
「…そっか、そだね…」
何やらさゆりが両手で握り拳を作り、意を決したように「よし」と呟くと、
突如こちらに寄ってきて…、
「…えいっ!」
俺の右腕に抱き着いてきた。
その瞬間、さゆりの双丘に俺の腕が沈み込む。
て、天国!…じゃなくて!?
「さ、さゆりさんや?」
「…積極…せ、積極…」
何やら赤面した表情から湯気を放ちつつも、
必死に俺に抱き着いているさゆりの姿が俺の目に映る。
やだ…なにこの可愛い生き物。
所かまわず俺がさゆりにほっこりしていたそのとき、
その隙をつかれて逆サイドから伏兵が攻めてきた。
「く、クロネさーん!?」
俺の左腕に猫耳をピクピクさせながらクロネが抱き着いてきていた。
当然のように俺の腕を胸に当てながら。
「仲間外れは良くないのでの、便乗じゃ」
包み込むようなさゆりのモノとは違い滑らかで張りのある胸が風呂の水を潤滑剤にして俺の左腕に擦り付けられる。
き、気持ちいい…。
あと経験者としての余裕を見せようとしているのか顔はポーカーフェイスなのだが、
尻尾がその後ろで「←!」「!→」と跳ねてはブンブンとしているあたり内心は戦々恐々なのでしょう。
ナニコノカワイイイキモノ。
そしてクロネに意識が向いているうちに今度の右のさゆりが俺の耳を甘噛みする。
顔が近くて見えないが頭から噴き出している湯気の量が増大したのでもはや顔は真っ赤なゆでダコであろうことは予想が付く。
で、右に一瞬、注意を逸らしていると今度はまたも便乗したクロネが同じように反対側の耳に甘噛みを浴びせる。
カオスか!
攻撃力の高すぎる連撃にさすがに俺も耐え切れず、
俺の股間の息子が「殿!討ち入りですか!!!」と開戦を告げるほら貝を吹こうとしていたそのとき。
「うおー!俺も混ぜろー!」
突如開け放たれた風呂の入り口から裸で俺の顔目掛けて飛び込んできたフェンリルによって状況が中断される。
飛び込んでくるフェンリルを避けるため思わず離れるさゆりとクロネ。
そして動けず顔面に飛びつかれて後ろに倒れるワイ。
「ごぼぼぼー」
お湯の中で密かに息を吐く。
危なかった…あのままだったらお風呂でR18になってしまうところだった…
…男としては味わってみたいにはみたいシチュエーションだが。
落ち着きを取り戻した俺は倒れていた体を起き上がらせる。
ちなみにフェンリルは楽しそうに顔面に抱き着いているままで未だに視界はない。
…あと顔に小さな膨らみとかいろいろ当たっている気がするがノーコメントで。
ふと塞がれていない耳にさゆりとクロネの会話が聞こえてきた。
「も、もう一押しだったかな?」
「うむ、もうちょいじゃったのじゃ」
……聞かなかったことにしよう。
俺は顔からフェンリルを引っぺがし降ろす。
「よくやったフェンリル、えらいぞ~」
「わふ?俺何かやったか?」
「おう。特等だ、一等賞だ、大金星だ」
「おー!やったぜ!」
何で褒められているかいまいちピンときていない様子のフェンリルだったが俺に撫でられて嬉しそうに耳を揺らすのであった。
◆◆◆◆◆
――リビング
各々朝風呂から上がり湯気の上がる体を整える。
大人女性2名は今日の朝御飯の支度をしてくれるらしくキッチンへと消えていった。
なんかぼそっと「次回の対策会議じゃ」とか聞こえた気がするがキノセイキノセイ。
……あんまり夜の相手をしていないから欲求不満なのかな?
そんなのことをひそかに考えつつ俺は膝の上に乗せたフェンリルの髪にドライヤーを当てる。
風を当てられているフェンリルも気持ちよさそうな様子だ。
「わふぅー♪」
耳と尻尾を振りご機嫌なフェンリルだが今はまだ早朝6時半。
こんな早い時間にうちに来て大丈夫なのだろうか。
「そう言えばこんな時間からうち来てて大丈夫か?」
「がう?何で?」
「いやさ親御さんとか心配するんじゃないか?」
「お母さんとクソ親父か?」
母親はしっかり母親と呼ばれているのに対してお父さんの評価が酷過ぎる。
「お母さんは別に心配してないぞ。最近ナユタと仲良くしてるって言ったらなんか…『あらあらまぁまぁ~^^』ってなんか嬉しそうにしてた」
「そか。なら親父さんは?」
「あの野郎はいつもその辺ぶらぶらしてるから知らない」
「ふーん」
「そいつの父親…ロキだろ?
アイツならそりゃそんな感じだろうなぁ」
会話の途中突然聞こえた声、聞き覚えがないけど喋り方や雰囲気で何となく誰かわかった俺は名前を呼びながら振り向き…そして絶句する。
「ああ、ニャルおは………何してる?」
そこにいたのはニャルの神の姿を精巧に真似された等身大チョコレートがスライド移動していた。
「……うちの妻たちが俺にチョコレートを渡すために俺をチョコレートにした」
「…矛盾してないか?」
「言っとくけどこれ俺の変身じゃなくて全部チョコレートで囲われてるからな」
「…チョコレートメイデン?」
「ちなみに自動修復とか神力封印とかの呪詛が盛り込まれているけど一応ただのチョコだ」
「それをただのチョコとは言わない」
「ところでだ」
ずい!とチョコ像が近寄ってくる。
軽いホラーですよこれ。
「なんだ?」
「この狼の父親の話だろ?
こいつの父親ロキはなかなかのクズ野郎だ」
嬉々とした様子…いや顔は見えないがそんな感じで話すニャル。
「お前なぁ娘の前で父親の悪口は…」
「おうそうだな、うちの父親はサイテーのくず野郎だぞ!」
残念ながら娘さんも共通認識みたい。
「ロキの野郎は俺もあまり好きにはなれないな。
自分勝手で傲慢で人間のことを玩具程度にしか思ってない。
世界全体で暇つぶしと称して悪事を働くようなとんでもない奴だ」
と、怒りの様子…は見えないがそんな雰囲気で語るニャル。
だが聞いている俺は首を傾げる。
…その輩は誰かさんとそっくりなのでは?
「なんか身近にそんな奴いなかったっけか?」と俺が唸っていると目の前のチョコ像をみて「ああ!」と手の平を叩く。
「なるほど!同族嫌悪か!」
「んだとぅ!」
こうして朝食までの時間、俺とフェンリルVSチョコラトホテプの死闘が始まった。
※ニャルは力をチョコで封印されています。
朝食までのいい運動になりましたとさ。
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