第96話 世界一可愛い彩芽ちゃんぷりちー!
―――とある愛知県の教会地下。
私達は後ろから転がってくる岩を避けるために全力疾走で細い道を進んでたんだけど……そのとき!私の何かにピーンと感じるモノがあった!
「…前回までのアヤメちゃん!!!」
「うわっ!?唐突に何?頭おかしくなったの!?」
唐突な私の覚醒に新入りのツンデレ子が失礼なこと言う。
が、その横でうちの雇い主がこっちに話しかけてきた。
「彩芽?もしかして逃げてる先に敵とかいるのか?」
「んにゃ、そういうわけじゃないよ。
ただなんかスポットライトを当てられた気がしたから前回までのあらすじをしようと思って…」
「いやぁ元気っすねー…おじさん全力疾走しながらその体力はないっすよ~。
…ねっ!常盤さん!」
「ふっ!…ふっ!…いいから…黙って…走れ!」
沖縄県警タッグが…というか歳が少し召されている常盤さんが疲れてきているみたいだからざっくりあらすじを終わらせよう。
「栄えある我ら有馬探偵事務所は友人である男から渡された連絡先に連絡し沖縄県警の二人と知り合いに!
そして今回の依頼を解決するべく共同作戦を決行するのでした!」
足元に無造作に転がっている石をジャンプで避け空中でアヤメちゃんポーズをとった後、華麗に着地しあらすじを再開。
「しかしなんとそこで私たち同様に怪しい宗教を調べていた少女二人と出会うのでした。…んで、なんやかんやあって今現在は一緒に行動中!
でもって現在罠に見事に引っかかって逃走中!…以上あらすじ終わり!」
軽く説明口調を終えた私の首にかかっているネックレスが反応する。
「この先に50個くらい魔術の罠あるってさ」
「50!?やばいんじゃないのそれ!」
「よし!突っ込むか!」
「ま、誠さん駄目ですよ!」
「ダメか!わかった!」
脳金が突っ込もうとしていたが今は抱き上げているツンデレ子の連れが止めてくれて一安心だわ。
まぁそもそもこのナユタ謹製ネックレスは自動解除効果があるので…。
「…はーい、目の前にあった罠全部解除できたよ~」
「はぁ!?どうやって?」
「さぁ~?こう…魔力を『ピ!ピ!ピ!』的な?」
「適当!?」
うちの新しいツッコミ要因としての片鱗を見せるツンデレ子を横目でみてるとふと先に開けた場所があることに気が付く。
「みんな~あそこなら広いから後ろの大岩避けられると思うから頑張って~」
みんなに激励を一言。
ちなみにみんなって言ってもうちの探偵時事務所の面々は含んでなかったりする。
だって私らナユタから貰った魔術アイテムのおかげで身体能力強化されてるから全然疲れてないし。
その点で言うと普通に生身で走り続けている沖縄県警タッグと、
自称『陰陽師』のツンデレ子は結構すごい気がするわ。
そうこうしているうちに広い部屋に到着すかさず私たちは岩の転がる直線上から横に退避する。
そして私たちの隣を大きな音とともに転がり行く大岩。
危機は去ったのだ。
それと同時に緊張の糸が切れたのか常盤さんと相楽さん、
プラスでツンデレ子が膝をつく。
そんなツンデレ子を心配した連れが誠の腕の中から飛び降りて彼女に近寄る。
「雫ちゃん大丈夫?ごめんね私だけ運んでもらって…」
「…ふぅ…別に陽菜が謝ることじゃないって。
危ない状況だったし…私はこれくらいなんともないから」
笑い合う少女たち。
百合百合しくてとても好物です。
細かい紹介をしておくと…
ボーイッシュかつツンデレ属性の子が「
本人曰く現代の陰陽師だってさ。
まぁなんかお札から炎とか出してこっち襲ってきたし多分ホントでしょ。
…なお家で飼っているゴリラは「かゆっ!」とか言って普通に焼かれてたけど。
で、もう一人彼女の連れで一緒に仲良さそうにしてるのが「
同じ学校の同級生で仲良しだから一緒についてきたらしい。
…ここ死地なんですけどね!
なるほど、なにも知らない探索者はこうやって地獄に連れてこられるのか。
あたしらも最初首つっこんだ時が懐かしいわぁ。
なんだかいちゃいちゃしてるの見てたらムラムラしてきた!
ふっふっふ…仲良しこよしで気が緩んでいるようだのう…。
気配を殺して。
残像が残りそうな横スライド移動。
そして背後からぁ…。
「ぐへへへへ!スケベしようやぁ!」
「ひきゃぁぁぁっ!」
現役高校生陰陽師の情けない奇声をつまみに彼女の胸を揉みしだく。
けしからん!高校生でこの胸はけしからん!ぐっへっへ!
「なに…するのよ!この変態!」
「ぐっぺ!」
顔を真っ赤にしたツンデレ子が肩まで伸ばした黒髪を揺らしながら鋭いボディーブローを放ち私の中心を捕らえる。
これは世界を狙える拳じゃ…。
激痛に床に転がる私を心配した陽菜ちゃんがこっちを心配そうに見てくる。
「だ、大丈夫ですか彩芽さん!」
「大丈夫!大丈夫!ちょっと陽菜ちゃんの顔が二重見えるだけだから!」
「全然大丈夫じゃないです!?
雫ちゃん!こんなに強く殴っちゃだめだよ」
「そうだそうだ~」
陽菜ちゃんの背に隠れてツンデレ子を追撃。
…ばかめ!仲良しの子には攻撃できまい!
「ぐぬぬぬ!この…」
悔しそうな顔でこちらを見ておるわ。
とかやってると向こうから瞬が申し訳なさそうにツンデレ子に近寄った。
「ごめん雫ちゃん。最近彼女と仲の良かった友達が結婚していなくなってね。
他の女の子とのコミュニケーションに飢えてるみたいだから…許してあげてくれ」
そう言って頭を下げる瞬を見たツンデレ子が焦って両手をぶんぶんしながら頭を下げるのを制止する。
「しゅ、瞬さんのせいじゃないですから!頭なんて下げないでください!」
「いやぁ…でも一応、
「悪いのはあのレズビアンであって瞬さんは全然悪くないです!」
「そう言ってもらえると助かるよありがとう雫ちゃん」
「…い、いえそんな…」
いちゃいちゃする二人。
私が彼女をツンデレ子と呼称する原因はこれだったりする。
人がサユリニウムを摂取できなくて餓えているときに隣でラブコメしやがって…。
メチャ許せんよなぁ…。
そう思い若干の腹立ちまぎれに横に視界をずらすと…。
「誠さん運んでくださってありがとうございました」
「おう!これくらいならお安い御用だ!」
「お、重くなかったですか?私あんまり痩せてるって程じゃないので」
「んにゃ!全然重くなかったから大丈夫だろ!
隣で指示してくれて助かったぜ!俺ばかだから!」
「いえ、一緒にいてくれてとても心強かったです」
こっちでもイチャイチャしてた。
でもまぁこっちはうちのさゆりの時みたいで微笑ましいのだがね。
相手が脳金のゴリラなのはもの凄く心配だけれども。
2つのグループに分かれてイチャイチャしている光景を遠巻きに見ていたそのときあたしはあることに気が付く。
……あれひょっとしてまだ春が来ていないのってあたしだけなんじゃ…。
何やら気がついてはいけないことに気が付いてしまったあたしは死んだ目で他の奴を見る。
…いい男がいないだけだから!まだあたしの性格に合う男がいないだけだから。
具体的に言うと女の子みたい可愛くてお金持ちで年下の男の娘がいないだけだから!
……この際、もう女の子でもいいかもしれない。
『ポンポン!』
飢餓で思考がマヒしてきていた私の方が突然肩を叩かれ後ろを振り向くとなんか優しい笑顔の相楽さんがこっちを見ていた。
「大丈夫っすよ!
彩芽ちゃん顔は可愛いから体目当ての男とすぐに結婚出来るっすよ!」
何故かこっちの心を読んだチャラ男相楽がとてもうざい笑顔で「元気だして!」と親指を立ててグッジョブしている。
「死ねオラァ!」
「ごぱぁ!?」
さっきのツンデレ子リスペクトのボディーブローを相楽さんにお見舞い。
出る杭は打たれるのだよ相楽くぅん?
すると隣から呆れ顔の常盤さんが水筒のお茶を飲みながら口を開いた。
「今のはどう見てもお前が悪い」
無言でこっちを見て頭を下げる常盤さん。
女心をわかっていらっしゃる。
実際なかなかの気遣いのできる大人って感じで嫌いではない。
……もしや?
「常盤さん魔術で可愛いショタになって結婚しない?」
「そんな魔術はないし!俺は妻帯者だ!」
「えっ?奥さんいるのに家帰らずに仕事で年越したの?奥さんいるのに?」
「ぐはっ!?」
どうやら図星だったらしく常盤さんが膝をつく。
こんな感じの不毛な殴り合いはもう少しだけ、
イチャイチャしている輩たちが正気に戻るまで続くのだとさ。
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