第51話 敵どこ…ここ? 蛇は狩りが好き

 みんなで協力するというのはいいことだ。

 1人でやるよりも達成感とかが得られたりするしな。


 まぁ…模型を合作というのは初めてだが。


 今日はクーラーの効いた部屋の中。

 俺と4妻+ベル+ニャル+チャウグナーというメンバーで現在そこそこ大きな模型を組んでいる。


 部品を見る限りおそらく昔の建物だろう。


 妻たちはニャルと一緒に説明書を見ながらやんややんやと騒ぎながら建物自体を作り中である。


「…ん…これここ…」


「じゃあーこれ反対だねー」


「わっ!待ってお姉ちゃん、それ上の所用だよ!こっちこっち!」


「ふむぅ?この部分についておる余分な奴をそげばよいのじゃな?」


「そうだけどさぁ…爪でカリカリするのはやめてくんない?

 ―ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」



 騒がしいが多分問題ないだろ?多分。


 …そして俺はというと、


「……っと、ここは丁寧にっと。

 ん~?これくらいか?」


「成形。成形。成形」


「…ちう…ちう…」


 騒ぎながらやってるあちらとは違い静かに地味な作業の『木』の製作をベルと一緒にやってた。腕にヒルのような神をつけたまま。


 小さい木の部品に緑色のスポンジを成形してつけると立派な木に見えないこともない。ただ綺麗にスポンジを整えないと不格好だ。


「…ふうっ出来たな。うんうん、なかなか木っぽい」


 自分で作る木の出来栄えを確認していたそのとき、

 俺のシャツをくいくいとベルが引っ張る。


「おっ?できたか」


「自信作」


 両手でしっかりと持って自信ありげに自身の作った木を見せてくる。

 ああ、とても綺麗だな。


 しっかりとした綺麗に丸い…ブロッコリーだこれぇ!


「…ベル、これは木ではありません。ブロッコリーです」


「……駄目?」


「古い庭にあるのは変かなぁ」


「了解」


 いつも通りの無表情だが心なしかしょんぼりしているベルは手に持っているブロッコリーをジーッと見つめている。ほんとに自信作だったんだな。


「ベル」


「?」


「この建物にはだめかもしれないけどいい出来だしリビングに飾ってもいいか?」


「!(コクコク)」



 少し嬉しそうなベルの頭を撫でてブロッコリーを本棚に飾る。

 うん、立派なブロッコリーだ。



 ◆◆◆◆◆



 それから少々時間は経ち、無事に模型を完成させることが出来た。


 どっかで見たような建物だな。

 なんか教科書とかで見た気がするあたり歴史上のなにかなんだろう。


 作業をやりきり満足気なみんなを少し遠巻きに見ながらそんなことを考えていた俺はニャルにこれが何の建物なのかを聞いてみる。


「おいニャル、これなんの建物?」


「これ?本能寺だけど。―ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」


「あー本能寺か。通りで若干の見覚えが」


「社会か国語の教科書あたりで見たのかもな。

 塗装で手が汚れているからちょっと洗ってくるわ

 ―ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」


 喋るごとにモーツァルトが出てくるのがうぜぇ。

 イホウンデーさんもさっさとあれを解除してほしいものだ。


 手を洗いにニャルが洗面所にいったその少し後、

 リビングに新たな来客が来る。


「お邪魔するわよ~ニャルいる~?」


「よっすクトゥグア。ニャルなら今洗面所だぞ」


「そっか……あら大きくて立派じゃない」


「ああ、ついさっきみんなで完成させたんだ……クトゥグア?

 なんかそわそわしてないか?」


 なんというか顔を赤らめて吐息も荒い彼女が模型を見ている。

 少し描写が危ない気がする。


「…なんかこう…あれなのよ。…これを見ていると…こう…」


「クトゥグアさん~?お~い?」


「あー!もう駄目!我慢できないっ!」


 突如暴走したクトゥグアが模型に火を放つ。

 炎上する本能寺。燃える宿命だったのだろう。


 向かい側にいる妻たちが頑張って作った模型が燃えて悲しんでないかを確認はしたが…。


「これが本能寺の歴史じゃ。こうやって本能寺もろともに、

 第六天魔王『織田信長』が明智光秀に打ち取られるのじゃ」


「…ん…勉強になる…」


「あー懐かしいですねぇ。

 あそこに信長さんの血を吸いに行ったら燃えてて焦りましたよ~」


「…そこにいたの!?」


「人間50年ー下天の内をくらぶればー夢幻の如くなりー」


「炎上。宿命」


 みんな個々の反応はあるが誰も悲しんでいる様子でないのは良かった。


いやまぁ…これから盛大に悲しみそうな奴がそろそろこっちに帰ってくるんだが。


「戻ったよ~…って!?なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!

 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトォォォォォォォ」


 あっ帰ってきた。


「ごめんニャル。燃やしちゃった☆」


「うああああああああ」


 あわあわしながら急ぎ洗面所へと水をとりに行くニャル。


「てっ…敵は本能寺にありー!

 ―ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」


 明智光秀はモーツァルトだった?




 それから急いで帰ってきたニャルによって無事鎮火。


 全焼は免れたがそこに残ったのは炎上後のボロボロの本能寺と落ち込んでいるニャルだけだった。



 今日も我が家は平和です。




 ◆◆◆◆◆



 現在8月。


 早めに夏が来たのか気温はまさかの30℃。


 クーラーをきかせなきゃやってらんないね。


 ただしこれには代償がある。

 そう…暑い日に涼しいところにいると…眠くなるのだ。


 そんなこんなでソファの上で横になって寝ている俺。

 腕に抱きしめているのは猫フォームのクロネ。

 その俺のお腹のあたりに抱き着いて寝ているのがネムト。

 そしてソファ周りで寝ている猫軍団とシャンタク。


 ここは昼寝の国なのだ。


 みんな気持ちよさそうに寝ているし俺も寝ていた。

 では今なぜ起きているかというと…横でゲームをしているアサトたちの声に反応しただけです。少ししたら寝ますよ。



「罠設置」


「…ん…誘導する…」


「じゃあ僕は麻酔を用意しておくよ」


「怯ませるよ~」


 今回ゲームをしているメンバーは少し異色で、

 アサト、ベル、ヨルト、それとイグ音さんだ。


 やっているのはニャルのパチモンゲーム…ではなく市販の狩りをするゲームである。モンスター〇〇ターとかそんな名前の奴。



 で珍しくイグさんがゲームのメンバーに加わっている理由はというと…。



『いやぁ~最近蛇の中ではこの狩りのゲームが流行っているんだ。

 眷属たちや蛇人間たちがみんなやってるから私も装備を作っておきたくてね』


 それでいいのか蛇族。


 まぁ…普段は忙しく働いているイグさんがゆったりとゲームをする余裕があるのはいいことだし、何故か無駄にゲームがうまくなってしまったアサトやベルと一緒にやってればお得も多いことだろう。


 ちなみにニャルはというと。


『くっ…待ってろよ!今に社長職のニャルにそのゲームのパチモンつくらせてやるからなぁ!タイトルは「ニャルラトハンター」!』


『…それ狩られるのお前じゃね?』


 というやりとりの後、家から出ていった。


「…むぅ…宝玉でない…」


「いやぁ~私は2個出たよ!運がいいね!」


「収穫。0」


「お姉ちゃんごめん…わ、私5個出ちゃった…」


 楽しそうにゲームをいているみんなを眺めていたが瞼が重い。


 どうやら俺は…ここまでの…よう…だ…。





 今日も…我が家は…へい…zzzZZZ





 〇〇〇〇〇



 ―――蛇人間の研究所。


 ここ蛇人間の研究所を偶然発見した有馬探偵事務所の面々。

 現在追っている依頼の内容にかかわりがあるかもしれないここを調べることにしていた。


 そして今、蛇人間たちがいる部屋に有馬探偵事務所が突入する。


 扉を激しいく開けて入る有馬たち。


「蛇人間!おとなしくしろ!」


 そう言って入ってきた有馬たちに驚きつつも応対しようと試みるがどうあがいても無理な蛇人間の一人が声を出す。


「人間!待ってくれ!もうすぐ捕獲できるから!

 もうちょっとだからもう少しだけ待ってくれ!」


「「「「……………」」」」


 緊迫していた空気はモンスターが捕獲されるまでもたなかった。



 ―――その少し後。


「——つまり我々蛇人間は主から人間になるべく敵対しないようにと命令されていてな。その事件には我々は関与していないという事を伝えておこう。

 ……この素材ってどのモンスターだ?」


「…なるほど分かりました。ご協力感謝します。

 …えっとこのモンスターのレア素材です」


「またレア素材か…これの為だけにあと何十頭倒せばいいんだ…。

 …そうそうこの被害者の特徴ならおそらく関与しているのは…」


 事件の関係者という誤解も解け、特に有馬たちが害をなさないことを知った蛇人間たちは彼らに情報提供をしながらも狩りゲームを続けるのだった。


 それでいいのか…蛇人間。

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