第43話 喧嘩するほど仲がいい
はい。どうも、おはこんばんちわ。
では、今日のナユタさん家を眺めていきましょうか。
いつも通りリビングで妻たちと幸せそうに過ごしているナユタさん。
しかし今日は少しだけ様子が違いますね。
「…私の方がナユタのこと…好き…」
「いくらお姉ちゃんでもこれだけは譲らないよ!
過ごした時間はお姉ちゃんより少ないかもしれないけど…
私の方がナユタのこと好きなんだもん!」
そう言い合う2柱の妻たちに綱引き状態にされるナユタさん。
あらあら、まぁまぁ…仲睦まじいことですね。
…まぁその間にいるナユタさんは真顔なんですけどね。
理由ですか?だって…
(高速詠唱…肉体保護!…高速詠唱…肉体保護!
…ベルもうちょい補助!補助ぉ!!!)
ただひたすら魔術の詠唱を全力で行ってますから。
何故かと言うとですね…体が物凄い力で引っ張られていて魔術で守らないと…コンビニの三角おにぎりのようになってしまうからです。
見た目だけなら右腕を引っ張っているアサトさんと左腕を引っ張っているヨルトさんとのイチャイチャに見えないこともないですが…。
下手をするとナユタさんが2つに割れてしまいますからね。
おや?そうしているうちに事態が進展しましたね。
「…むむむ…表出る…拳で決着をつける…」
「わかった。私負けないよ」
喧嘩はヒートアップし2柱の神は適当な場所に移動して殴り合いを始めることにしたようですね。
ですが夫は解放されたのでさすがに見逃さないでしょう。
「待ったアサト、ヨルト…喧嘩は…」
「「 ナユタは黙ってて!!! 」」
「…はい」
駄目でした。
むしろ愛妻たちに「黙れ」と言われたショックでナユタさんが体育座りで固まってしまいました。
日頃は撃たれ強いですが奥さん関係になると脆くなるんですね彼。
そうしている間に喧嘩をしている2柱は別次元へ転移。
ナユタさんは体育座り。
他の神達は「やれやれ…」といった様子ですね。
では場面を移しましょう。
◆◆◆◆◆
場所はナユタさん達が初詣に行った時の神社。
そこでは2柱の神がファイティングポーズをとって見合っています。
一触即発な雰囲気の2柱。
ざわつく空気。張り詰める緊張。
賽銭箱の後ろで「あわわ…」としている神社の和服の女神。
これで被害にあうのは2度目ですもんね。
そしてついに2柱が殴り合いを始めようと走り出したそのとき、
1人の人間が喧嘩を止めようと間に割って入ります。
勇敢ですね。
「…待って!あなたたち喧嘩はd…あひゅう…」
子供たちが喧嘩しようとしているのを見て割って入ったんでしょうが…
そこにいるの神なんです。しかも最高位の…。
その二人の拳の拳圧の間に入ろうものなら意識も飛ぶというものです。
ですがその甲斐あってか2柱は喧嘩をやめて倒れた女性に向かいます。
そしてその後ろでは「…ほっ」としているこの神社の神がスゥーっと消えていくのでした。お疲れ様です。
ひとまずこれで喧嘩は収まったのではないでしょうか?
◆◆◆◆◆
―――一方その頃。
自宅では体育座りのまま魂の抜けた状態のナユタさんがいます。
ここまでくるとさすがに痛々しいですね。
その様子を見ているもう2柱の妻たち。
クロネさんとネムトさんですね。
「…はぁ…なにしとるんだかまったく…
ネムトはナユタの傍にいてくれ。我が迎えに行ってくるのじゃ」
「んーりょーかいー」
そうして家から出ていくクロネさん。
ネムトさんは体育座りのナユタさんの頭を優しく撫でるのでした。
大人の女神組は落ち着いてますね。
そしてその横では…悪い顔をしているニャルラトホテプ。
…はぁ…また悪さを考えてますねあの駄神は…。
◆◆◆◆◆
――一方その頃。
場面は戻って神社。
気絶していた彼女はしばらくして意識を取り戻します。
起きてすぐに2柱が喧嘩をしていないことを確認するあたり、
優しい女性ですね。
今は「喧嘩はダメだよ?」と注意されてしょんぼりするアサトさんとヨルトさんと話をしているようです。
「……いい?二人が喧嘩するのはその人のことが大好きなんだからだろうけど…二人が喧嘩しているのをその人が見ると悲しむよ?
だから喧嘩なんてしちゃだめ。わかった?」
「…ん…ごめんなさい…」
「ごめんなさい…」
しょんぼりしながら謝る2柱を見て微笑む女性。
「ううん。謝るんだったらその人にね。私はただのお節介焼きだから。
…お礼やごめんは早く言っておいた方がいいの。
いつ会えなくなるかなんて誰にも分らないからね」
「…わかった…」
「今後、気を付けるわ」
「うんうん、いい子たちだね」
無事に問題解決し、2柱の頭を撫でる女性。
これで無事に初めての姉妹喧嘩は収まりましたね。
良かった良かった。
あの2柱が本気で喧嘩したら宇宙が危ないですからね。
私も他神事ではないですから。
そうしてゆったりしている空間に後ろから近づく影。
「見つけたのじゃ。ほら帰るぞ」
「…クロネ」「あっクロネ!」
そこにいたのは2柱を迎えに来た人間の格好のクロネさんでした。
恰好は以前ナユタさんにかわいいと言われた縞々ニーソックスに猫耳パーカー。実は彼女のお気に入りなんです。
「む?その女性は?」
「喧嘩をしていたので止めに入っただけの通行人ですので気にしないでください」
「それは苦労を掛けて申し訳ないのじゃ」
「いえいえ。いい子たちですからすぐに仲直りしてくれましたし」
「ならよかったのじゃ。…それじゃあ帰るぞ。アサト、ヨルト」
「…ん…バイバイさゆり…」
「さゆりありがとー!」
「気を付けて帰ってねアサトちゃんヨルトちゃん」
こうして3柱は無事に帰還しました。
世界の平和は守られたのです。
―――でその後のことですが…。
神社で3柱を見送った喧嘩を仲裁した女性。
「東風谷 さゆり」
ナユタさんの幼馴染でナユタさんに命を救われた彼女はその場でいなくなった幼女たちに告げた言葉を頭の中で振り返る。
【お礼やごめんは早く言っておいた方がいいの。
いつ会えなくなるかなんて誰にも分らないからね】
それは果たして誰に向けた言葉だったのか。
それは本人しか知りません。
そんな彼女に階段を昇りながら話しかけてくる人間が一人。
「…あーっ見つけたさゆり!こんなとこで何してんの?もーっ!」
「あっ!ごめん彩芽!ちょっと子供の喧嘩を止めてて…」
「…いやほんと何してんのさ?瞬たちはもう事務所に戻ってるよ?」
「あははは…いこっか」
こうして彼女もこの神社から去っていったのでした。
◆◆◆◆◆
―――ナユタ家
帰ってきた3柱。
そんな彼女たちが家に帰ってきてリビングの扉を開けて中に見たもの。
それは…首を吊っているナユタさんっぽい形をしたものが天井からぶらぶらとしている様子でした。
そしてその横で…物凄く眠そうなツァトグアが、
「アアーナントイウコトダー。アサトタチガ、ケンカシタカラ、
ショックデ、ナユタガシンデシマッター」
と駄々洩れの片言でセリフを言います。
…気持ちよく寝ていた所を起こされて不服なのは分かりますが…もう少し頑張りましょう?
「「「 ナユタ!? 」」」
急いでナユタ(?)さんの体を降ろす3柱。
…気づいてください…それはただのフェイクです…。
降ろされたナユタ(笑)がゆっくりと目を開きます。
そして…。
「びっくりした?驚いた?ニャルさんだよー!
いやー今回のはなかなか分かり辛かったんじゃないかな?
でもこれで緊張はほぐれただろ?じゃあさっさとナユタに…」
大笑いしているニャルラトホテプ。
その横で目を真っ赤に光らせ般若のように怒る3柱。
…こうなるのは知っていました。私も…そこの駄神も。
〇………しばらくお待ちください。now loading……
『ゴスッ』『バキィッ』『ザシュッ』『ポコンッ』
「…ぎゃあああああああ!…」
『ゴンッ』『パシィッ』『ドゴォッ』『グシャッ』
〇………しばらくお待ちください。now loading……
そこにあったのは…殴られたり、蹴られたり、斬られたり、潰されたりを繰り返して出来上がった肉塊でした。ざまぁ。
その様子を見てすっきりしたツァトグアが3柱に告げます。
「ナユタならこの空間の端でネムトと一緒にいる。
さっさといってこい」
それを聞いて3柱はダッシュでそちらに向かいましたね。
そしてその場に残ったツァトグアと肉塊ホテプ。
「…相変わらずめんどくさい方法をとるなお前は。
辛気臭い顔で合わせないようにするために肉塊になるなぞ」
「俺は悪役には慣れてるからな。
むしろこれ以外の方法はやり辛くて仕方がない。
でもしょうがないだろ?お互いにここでの暮らしは気に入ってんだし」
「…まあな…さて…2度寝でもするか」
そう言って布団の中に消えるツァトグア。
…まったく…相変わらず不器用ですね。
そんなだからナユタさん以外にまともな友神ができないんですよ。
と私が考えていると人型に戻ったニャルラトホテプと目が合いかけ、
思わず視点を移す私。
危ない危ないばれる所でした。
…いや、ばれても問題はないんですけどね。
―――この空間の端。
陸の果てでナユタさんがネムトを正面に抱きしめながら虚空を眺めています。哀愁漂いますね。
ちなみに抱きしめられているネムトさんは気持ちよさげに寝ています。
旦那様に抱きしめられるのが一番好きってこの間言ってましたものね。
そんな様子のナユタさんの後ろにダッシュで3柱が辿り着きます。
それに気が付いたナユタさんが後ろに振り向くと、
そこには頭を下げて謝っている姉妹神がいました。
「…喧嘩して…ごめんなさい…」
「ごめん。ナユタ」
その様子を見て小さく笑うナユタさん。
そしてネムトを降ろした後に、ナユタさんが2柱を優しく抱きしめてこの喧嘩騒動は無事、幕を引きました。
めでたしめでたし、ですね!
…えっ?私ですか?今回は暇だったのと一部始終を見たのでナレーションをしていただけです。
口調でチャウグナーだと思った方、名誉棄損で訴えますよ?
あんな駄神と一緒にしないでくださいね。
私の名前は内緒です。ヒントをあげるとするなら一度くらいならナユタさん達の会話で私の名前が挙がったのではないでしょうか?
まぁ少ししたら私もナユタさん家に行こうと思いますので答え合わせはそのときに。
では幕引きと行きましょう。いつものナユタさんの言葉を借りて。
今日もナユタさん家は平和ですね。
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