第39話 女性の年齢は心の年齢だ
……親しき中にも礼儀あり。
仲が良いからと言って礼儀やマナーを忘れてはいかんのです。
これはみんな親からよく言われる言葉だろう。
俺は聞けなかったが。
これを前提で今に至る。
今現在、俺は寝室にいる。
毎度おなじみ三駄神とともに。
俺の前で正座しているニャル、チャウグナー、ツァト。
何故この状態になったかと言うとだな…。
・ニャル=暇だったからという理由で家が変形してロボになるように改造依頼をガグに頼んで「無理!」というクレームが届いた。…俺に。
・チャウグナー=早朝の寝ているときに血が欲しいと思いうちに来た。
起きたときに血走った目でヨダレをたらしながら俺の上に乗っていた時は本気で驚いたんだ。…クロネとヨルトが。
・ツァト=お風呂で熟睡してそのまま14時間占領した。
…といった具合である。
規律の乱れは心の乱れ。何事も限度はわきまえるべきだろう。
まぁ…こいつらに言ってもほぼ無駄な気がするが。
一応、反省を促すように通販で買った「棘マット拷問セット」を使用して棘マットの上に正座で固定し、膝の上に重りを乗っけている。
…人間にやっちゃだめだぞ!ナユタさんとの約束な!
「…よしニャル、お前の言い訳を聞こう」
「いやさ…ロボだよ?浪漫じゃん!かっこいいやん!緊急時に変形と化したらかっこいいじゃん!誰かのピンチに巨大ロボで救援とかかっこいいじゃん!つまり俺は悪くねぇ!QED。証明終了!」
「お前のロボ好きしか証明されてねえよ!」
仕方なくため息をつきながら次の容疑者に視線を向ける。
「次はお前なチャウグナー」
「はい!もちろんちゃんと言い訳は考えてきています!
これで万事解決です!」
そうかー言い訳を考えてきちゃったか―。
少なくともそれを口にした時点でもう解決はないだろうなぁ。
「いいですかナユタさん!ここは私にとってのオアシスなんです!
そしてナユタさんはそこにある命の水なんですよ!
飢餓で倒れそうな砂漠の民がオアシスに入ったら!
やることは一つでしょう!
つまり私は悪くねぇ!QED!証明終了です!」
「別に飲まなくても死にはしないだろ?我慢しなさい」
「…だが断る!」
こいつ駄目だ。早く何とかしないと…。
そして最後のお方。
実はこいつだけは棘マット拷問セットには座っていない。
ツァトは大体寝ているが、起きているときに他のやつを気にかけたりと実は結構な具合で面倒見がいいことを俺は把握している。
なので他2柱よりは評価が高いのである。
「お前は罰とかないからいいけど…もう少し睡眠時間削るとかしてもらおうかな」
「それが一番辛い罰なんだが!?申し開きを聞け!」
「…どうせ申し開くだけだとは思うが一応聞いてやろう」
自信ありげな表情の彼女は語りだす。
「いいか?睡眠とは人間でいうところの一日をリセットしつつ体を回復するための行為だろう。これは神でも同じことだ。そして神と人の感覚は違う。つまり人間の一日の睡眠が神にとっての1年の睡眠なんだ。
LED。照明終了『ピッ!』」
「さらっと明かりを消すんじゃねぇ!
そしてさらっと2度寝始めてんじゃねぇ!」
まったく反省の意思を感じないこいつらを「一発殴ってやろうかな?」などと考えていたそのとき隣の部屋から声が聞こえる。
「…きゃー…ナユタたすけてー…」
「…き、キャー…タスケテー…」
若干カタコトだがそれは助けを呼ぶ妻たち、
アサトとヨルトの声だった。
俺は3柱を放置して急いで隣の部屋に行く。
後ろから「…えっこれ解いてくれないの?」とか「あー待って!血を!
せめて血を…」とか「…すかー…すかー…」とか聞こえたりしていたが放置で。
隣の部屋へと駆け込む俺。
そこには…いつかみた首のない中年おっさんみたいな姿のロリコン神…の無残な瀕死体があった。
尚、現在進行形でネムトが槍を突きさしている模様。
起きてなくても武芸は可能なようです。
いつも通り落ち着いた雰囲気のアサトとなぜかすこし照れているヨルトを発見した俺は傍に近寄り話しかける。
「…また来たのかあいつ」
「……ん…脱獄したみたい…」
「…お姉ちゃんたちと一緒に撃退したの…」
「そか。まあ無事でよかったよ」
2柱の頭をやさーしく撫でる。
そして気持ちよさそうにしている姉妹を見ていてふと疑問が浮かぶ。
「…ならなんでさっき『助けて』って言ってたんだ?」
「…妹が…
『助けてーってナユタを読んだらきっとすぐに来てくれる』って…」
「お、お姉ちゃんそれは言わないでよ!」
どうやら妻にはめられたようだ。
慌てているヨルトを「じー」っとジト目で見つめ続けると彼女は自供を始めた。
「…その…助けてって言ったら心配してきてくれるかな…って思って…」
もじもじしながらそう教えてくれました。
はい。要するに俺に心配してほしかったようだ。
俺は2柱をぎゅっと抱きしめながら言う。
「…そんなのあたりまえだろ?
俺にとって一番大事な奥さんたちなんだからさ」
「「…えへへ」」
そう言われた姉妹妻たちは少し顔を赤くした後に嬉しそうに俺に抱き着き返してくる。姉妹そろって安心しきって緩んだ幸せそうな笑顔だ。
とやっているところに後ろから少しよわよわしい声でクロネがこちらに呼びかける。
「…グスッ…ナユタァ…」
泣きながらこちらに来るクロネその両手は深紅に染まっている。
きっとさっきまであのロリコンをタコ殴りにしていたんだろうな。
「よしよし。どうしたんだ泣いたりして」
「我は…確かに我は老婆のような喋り方かもしれぬのじゃ…。
でも若作りなどもしておらんし決して老神というわけではないのじゃ…
だから…だからぁ…うう…グスッ…」
よくわからないが自分の喋り方とかが老人のようだと気にしているようだ。だったらこちらは思った事をいうしかないな。
「…よしよし。大丈夫だって世界中のやつがそんなこと言ったとしても俺はクロネのその可愛い喋り方、好きだよ。だから泣かない泣かない」
少し固まった後に感極まったクロネが俺に向かって飛びついてくる。
…ぐっは!?ラグビーのタックルより強い…。
「ゴロゴロ…」
人型のまま猫のようにのどを鳴らすクロネ。
すっごい可愛い。頭とのどをよしよししちゃうくらい可愛い。
抱き着いて離れなくなったクロネをそのままにしてアサトたちに尋ねる。
「…で?なんでクロネは泣いてたんだ?」
「…ロリコンが『BBAは引っ込んでろでござる!』って言ったから…」
「……ほーう」
俺は抱き着いていたクロネをアサトたちの傍に置いて槍でツンツクされているロリコンに近寄る。
「…おう。また来たのかこのロリコン」
「あー!ナユタ氏!ずるいでござるよ!また一柱ロリが増えてるではござらんかぁ!お1つ拙者によこすでござる!」
その発言で俺の中で「ブチッ」とか聞こえるが気にしない気にしない。
俺の顔を見たネムトが「退避~」とか言ってアサトたちのところに言ったけど気にしない気にしない。
「一応、聞いておくが…なんでクロネ…バーストにあんなこと言った?」
「あれはロリではないでござる!身体年齢が10才より上はみんなBBAでござる!」
「あっそ」
心の中でベルに伝える。
「鎌になれ」と。
『了解。サイスモード』
ベルが手元に銀色の大鎌になって表れる。
それをしっかりと両手で握る俺。
刃をロリコンに向けながら問いかける。
「…ところでこいつを見てくれ…こいつをどう思う?」
「すごく…体を斬り裂きそうな形をしてるでござる…」
「…遺言はそれでいいな。いいよな?
俺の妻たちに襲い掛かった挙句、妻にBBAなんて言って生きて帰れると思うなよ? ……よっしゃ!死にさらせや!」
こうして俺はロリコンを撲滅する作業に入るのだった。
しばらくの間リビングで「ぎゃああああああ」という声が…そして寝室からは「誰かぁー助けてくださぁーい!」という声が響き渡るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます