第20話 年明けって店とかぜんぜん開いてないよな
まだ肌寒い今日この頃。
俺はいつも通り皿洗いだ。
最近はピカピカの皿を指でキュッキュッとするのが癖ついてきた。
今なら主夫の気持ちもわかる気がする。…まあうちの妻は幼女なので任せるのは不安があるし。
ちなみにそんな妻はというと…
いつも通りニャルたちとゲームをしていた。
「ニャル…覚悟」
「やらせはせん!やらせはせんぞ~!」
「父、戦闘回避推奨」
「むむ?床を塗らねば…」
ニャルとベル、アサトとバーストで組んでゲームをしている。
ゲームの名前は「ニャルラトゥーン」
いろいろな武器から深淵を出して相手を倒したり床を深淵で塗りつぶしたりするゲームだ。
…そこ、イカのゲームに似てるなんて言わない。そもそも持ってっ来たのはニャルなのでお察しである。
……ていうか黒と黒で塗り合うってどうなの?
「ふはははー、後ろ取ったり!」
「……ん…」
「なんで俺が先に攻撃したのに負けてんの!?」
「……操作に慣れた…」
「同時に始めたやん…」
「…!…ベル潜伏…卑怯」
「正面対決。不利」
「ならばその隙を我が付くのじゃ!」
「…リスポーンまで4秒。父、索敵」
「任せ…ぎゃあああ」
「……ん…一足遅い」
「なんでもうここまで来てんだよ!」
「バースト…今のうちに塗って…」
「任せるのじゃ」
「父、やられたら『やられた』を押す。敵位置不明」
「…バースト…あんまり端まで塗らなくて…いい…」
「む~…
こんな感じではしゃいでいる4人。今日も今日とていい1日だ。
…ツァトがもうコタツの一部になってるんだが…どうしよう…。
そんな4人を眺めていると足を「テシテシ」と何かがつつく。
まあだいたい察しはついているんだけどな。
「んー?どした?」
「にゃっ!にゃにゃ…ニャッ!」
子猫が力強く何かを俺に伝えようとする。
今こそ鍛え上げた猫語の出番だな。
……何か…欲しい?…かな?
「えっと…なにが欲しいんだ?」
「ニャッ!」
理解された喜びで元気な鳴き声を子猫があげると後ろにいた子猫たちがチラシを持ってくる。そこには…
『濃厚な味わいの贅沢な一品!猫に人気な食べ物を配合した高級缶詰!
新発売!「レインボーニャンコデリー」』
とのことだ。要するに…
「この猫缶が欲しいと?」
「「「「「「ニャー!」」」」」」
あたりだな。まあちょうど皿洗いも終わったし買い物に…
そう考えていた俺の思考を邪魔するように廊下からバタバタと走ってくる足音が聞こえる。
「ナユタさーん!血~くださーい」
……騒がしいのが来た。最初におしとやかなお嬢様風できたのはいったい何だったのか。
「…はぁ…年明けなんだから先に言うことあんだろ?」
「…あっ…すいません…。えっと…あけま血ておめでとうございます!こと血もよろ血くお願い血増す」
「……血が欲しいのはわかったから年明けの挨拶に願望を混ぜるな」
とりあえず血を…と思ったところで猫が足を「テシテシ」×数匹。
早く高級猫缶が食べたいとのことだ。
「これから買い物行くからついてくるか?」
「血をくれるならいいですよ」
「んじゃ…行くか。荷物持ちヨロ」
「了解です。血液ヨロ」
「ニャー」
こうして俺とチャウグナーで買い物に行き…そして年明けでも休まずに営業している大型スーパーに行く。
人がたくさん、たくさん。みろぉ!人がごみのようだぁ!
ム〇カしていても人混みをバルスできないので仕方なく奥に進む。
「美味しいれす~(ちうちう)」
「…それはようござんした」
人混みを進む俺の横にはシェイクを飲みながら俺の腕に抱きついているチャウグナーがいる。
その辺の人から見たら可愛い彼女とデートしているとかそんなんに見えるんだろうな。
その実、横のこれは俺の横で俺の血液を「美味しい」といいながら吸っている駄目な神様なんだが。
「そういえばチャウグナー」
「ふぁい?」
「前から疑問に思ってたんだが…なんで家に来るんだ?」
「はい?血が欲しいからですけど?」
「大体はそうだけど…たまに血とか関係なく来るだろ?お前は血以外には興味ないような感じだし」
するとチャウグナーが頬を膨らませ拗ねた表情でこっちに反論してくる。
「むー!いくら私でも怒りますよ?私は確かに血が好きですがナユタさんのところに行ってるのは単純に友人の家に遊びに行っているだけですよ」
「ほんとにござるかぁ?」
「ほんとですよぅ!ナユタさん自身、気づいてないかもしれませんが…あそこは私たちにとってはそれだけ居心地がいいんです。
普通、神達が顔を合わせても殺し合いくらいしか起きないですよ」
「……へー、みんな仲いいのかと思ってたわ」
「それはナユタさんの家がそういう場所だからです。ナユタさん家はいうなれば『主神の夫の住処』という中立の場所なんです。アサトさんとナユタさんの前で争うのは、はっきり言って馬鹿のすることですから」
「……一度俺にタックルかまそうとしてアサトに吹き飛ばされた奴の言うことは説得力が違うなー」
「うぐっ!まあそうですけど……。…それともう一つ、単純にナユタさんという共通の友人がいるからです」
「俺?」
俺を「ビシッ!」と指さしてチャウグナーが言う。
「普通に神が友好を深められているのは、その間に私達と親しくしているナユタさんがいるからなんです。
神にとって普通の友人なんて貴重ですからね。
ナユタさん世界征服とか…邪神を従えるとか…興味ないでしょう?」
「ん~…まあないな、一切。俺は、俺といたいって言ってくれたアサトと一緒に楽しく暮らしているだけだし」
「でしょ?だから信用できるんですよ。前にナユタさんの心の中をのぞいても夕飯のメニューしかなかったですもん!」
さらっとなんか聞いてはいけない内容があった気がするが……まあ信用してくれているのは嬉しいのでスルーしてやろう。
「……はぁ…褒めても何も出ないぞ~…まあ後で血をもう少しやるよ」
「やった!ありがとうございます!」
「ズズーッ」っと手持ちの血を飲み干したチャウグナーが腕から離れて先行してこっちに嬉しそうな表情で振り返る。
「ほ~ら~!早く行きましょ~!」
「…はいはい……ああ、そうだ。チャウグナ~」
「なんです~?」
「これからもよろしくな~」
すこしキョトンッとした後、天使のように微笑みながら返事をする。
「……ふふっ、はい!こちらこそ!よろしくお願いしますね~」
振り返って待ってたチャウグナーと合流して雑談をしながら猫缶を探す。
「……そういえば私、春くらいにイベントを起こそうかと」
「…いやな予感しかしねぇなそれ」
「むむむ…しっかり計画してるんですよ?血につい……」
その後、無事に猫缶を買い占めた俺とチャウグナーは門を家に開いて帰り、現在廊下にいる。そしてリビングの扉を開けると…
「ぐはー」
「…我らが勝者…」
「父。弱い」
「猫の姿でも我はたいして能力は変わらんのじゃ!」
「「「「「「「ニャー!」」」」」」」
床に倒れているニャル。
その上に猫に姿を変えたアサト、ベル、バースト。
そして猫たちがその横に一緒に並んでいる。
……これがほんとのキャットファイト?
そんな光景を見て、俺とチャウグナーは顔を見合わせる。
そしてお互いにくだらなくも楽しいこの日常に笑いながらリビングに入っていく。
今日も我が家は平和です。
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