第19話 正月のやるべきことってコタツだよな
初詣から帰った俺達は個人個人でやりたいことをする。
バーストはやることがあるからと言って帰っていった。
帰るときに「ではの~」といいながら手と尻尾を振っていた姿がとてもかわいかったです。はい。
クトゥグアはいつの間にか消えていた。
いなくなる前に「そろそろ頼んでいたアレが届くころね…」
と言っていたことから家に帰ったんだろう。
アレってなんだろ。
ニャルは帰ってくるなり、いそいそと外出の準備をして出て行ってしまった。電車に遅れるんだそうだ。……お前乗る必要ないよな?
珍しく目的ありきで行動していたのでどこに行くのか聞いてみると、
「今日は超時空アイドル神、クアチルたんの年明けライブ
『年明けもクアチルが歌うっス!』があるからさっさと行かんと他の俺に座る席がとられるんだよ!今回は奮発して最前列取ったんだから渡すわけにはいかんだろ」
と力強く返事をした後にバタバタと家から出ていった。
……なんでこいつ自分と席取り合ってんだろう。
あと神様にもアイドルとかいるんだな。
んでもって最後にツァト。
言うまでもなく寝ていますハイ。
場所はコタツ。まったく動きませんハイ。
最近同一化してきている気がする。しまうときどうするんだろう。
とこんな感じでみんな出かけて(約1名はコタツの中に)行ったので残った俺とアサト、ベル+猫たちで外で遊ぶことにした。
俺は現在、そこそこ大きめのかまくらを作っている。
協力者は猫たち。
なんと俺がかまくらを作っているところに雪玉を転がして持ってきてくれた。おかげであまり時間がかからずに完成。
壊れたりしないように魔術で補強しておこう。
ちなみにかまくらは場所によっては伝統行事としてあり、作ったかまくらの中に祭壇を設け、神様を祀ったりするらしい。
一説では神の御座所「神座(かみくら)」が「かまくら」に変わったんじゃないかとかいわれているそうな。
偶然だが俺は妻用の祭壇を作っちまったようだ。
「……よし!できたな!よーしお前らー入るぞ!」
「「「「「「「にゃ~!」」」」」」」
出来上がったかまくらの中で寛ぐ俺と猫達。
現在手伝ってくれたご褒美で猫を撫でているところだ。
「よしよし」
「にゃ~」
「次~」
「ニャッ!」
「よーしよしよし」
「ニャ~」
「次~」
こんなふうに次々来る猫たちを撫でて交代。撫でて交代。
猫たちは気持ちよさそうである。
が、一つ異変に気が付く。
おかしい…撫でても撫でても数が減らない。
そう思った俺はまわりを確認すると俺を円の中心において猫たちが円陣を組んでいた。
ローテーションでぐるぐる回りつつ俺に撫でられていたようだ。
例えるならリボルバー銃のシリンダーみたいな動きをしている。
そりゃ終わらないわな。
「………最初に俺に撫でられた奴、どいつだ~?」
「「「「「「…………」」」」」」
全員、目を逸らした。こいつら……。
「……正直に言ったらこの後も撫でてやるぞ~」
「「「「「「「にゃっ!」」」」」」」
今度は全員、返事をしてきた。
どうやら全員この後も俺に撫でてほしいらしい。
つぶらな瞳がこちらを見つめてくる。しょうがないにゃぁ……
以後エンドレス。
ちなみに他の一冊と一柱が何をしているかというと……
膝の上の猫の頭を撫でながら、かまくらの外に目を向ける。
そこには……
「……ん…準備できた…」
「準備完了。戦闘開始」
巨大な雪玉を抱えてるアサト。
自分のまわりに沢山の雪玉を浮かべているベル。
二人は向かい合い…そして大惨事雪合戦が始まった。
「広域射撃。掃射!」
ベルのまわりにある雪玉が広域に広がり弾丸のような速度で飛んでいく。
それに対してアサトは避けずに正面から迎え撃つ。
「……これ一発で…足りる…」
抱えている
巨大な雪玉がベルの雪の弾幕に投げ込まれる。
その瞬間、周囲にすさまじい風を放ちながら巨大な雪玉が飛んでいく。
そして雪玉の弾幕を粉砕してベルの正面に来た時、
「障壁展開。…反射!」
ベルの発動した魔術によりいったん空中で止められた雪玉がその倍の威力でアサトの方へと跳ね返っていく。アサトはそれを軽いステップで躱す。
「…これくらいなら…当たらない。……お返し」
「次弾装填。…回避!」
『ズドォォーン』『ヒュンヒュウー』『カンッカカンッ』『ズドドドドド』
『バチチッチズガァーン』『ドゴォッ』『ドンッドンッドォーンッ』
こんな音と振動を発生させながら神と魔導書の雪合戦が繰り広げられていた。なぁにこれぇ……。どう見てもただの殺し合いなんだよなぁ……。
ていうかあれもう雪じゃねぇよ!鉄球とかと何ら変わんねぇよ!
さっき、アサトたちに「……一緒に雪合戦…する?…」と誘われたのを断ってよかった。
俺があれに加わっていたら間違いなく「…返事がない。ただの屍のようだ…」状態になっていたことだろう。
俺はかまくらの中で猫を撫でつつ二人の雪合戦を見守るのだった。
◆◆◆◆◆
―――その後
雪合戦(殺伐)が無事終了し俺達は家に戻ってきていた。
遊んでいた一柱と一冊は遊び疲れたのか猫を抱いてコタツの中で眠っている。幸せそうに寝ている二人の頭を軽く撫でた後、その反対側にまわる。
俺もつかれたしコタツで一休みした後に晩御飯作るか。
そう思い、俺もコタツに入って休もうと思って布団をめくり入ろうとしたその時、何かの違和感を感じる。なんだこれ?
気になって調べてみるとどうやらコタツの横で「認識阻害」の魔術が使われていた。違和感の原因はこれだろう。
「ニャルのいたずらかな?」と思いながら俺はその魔術を解除する。
すると魔術が展開されていた場所に何かが現れた。
そこにいたのは…青…というか水色の長髪に身を包みコタツで眠っているパジャマ姿の少女だった。歳は大体10歳くらい。
………誰やねん。
知らない少女がコタツで寝ていた。てかこの子いつからいたんだろ?
コタツから首を出して眠っているこの子の髪は水色。まあ人間ではないだろうなー。まあツァトの眷属とかそんなんだろ。
そう思いながら幸せそうに眠っている少女の頬をツンツンする。
すると少女が目を覚まし俺と目が合う。
「…………」
「…………」
黙って見つめ合う俺と少女。
「このまま見つめ合うのかな」と思っていた俺の予想を裏切って少女は焦ったようにコタツに潜る。このリアクション…不法侵入っぽい。
潜って少しした後に水色髪の少女はコタツ布団から顔を半分だけ出してこちらを見ている。その顔はすごく眠そうでほぼ目が閉じかけている。その状態でしばらくすると少女が口を開く。
「……追い出さないー?…」
小さな声でそう言う。どうやらコタツから出たくないようだ。
さっきまで幸せそうに寝てたしな。
心配そうな少女の顔を見ていると、なんだか起こしてしまって申し訳なくなってきた。
「……別に追い出さないから…コタツに入ってたいなら入って寝ててもいいぞ」
「……いいのー?」
「おういいぞ。起こして悪かったな。気が済むまで好きなだけここに居ていいぞ」
俺は少女の頭を撫でながらそう告げる。
それを聞いた少女は嬉しそうな顔をした後、
「ありがとー」
といってスーッと消えていった。
おそらくまた認識阻害を使ったんだろう。
まあ気が済めば勝手に出ていくだろ。
コタツの少女がいた場所の横に俺は入ってヌクヌク…ヌクヌク。
ああ~堕落するんじゃあ~。
コタツでヌクヌクしながら気持ちよく眠りにつく。
……この後、熟睡しすぎて晩御飯が遅れたのは内緒だ。
今日も我が家は平和やね~
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