第18話 これは意味があるのだろうか…
俺達は現在…初詣に来ている。
そう初詣。
テレビで初詣を見たアサトとベルがとても興味津々だったのでうちに来ていたやつら総出で現在稲荷神社に来ている。
メンバーはアサトとベル、バーストとニャルとクトゥグアだ。
例によって留守番はツァトグアである。コタツから出ません。
「おー人が多いなぁ」
「…ん…いっぱい…」
「人混み。人ゴミ」
「むむ…冷えるのじゃ…」
「だぁーくっつくな!」
「嫌よ。ニャルと私のラヴを人間に見せつけるんだもん!」
こんな感じでぞろぞろ神社に来ているわけだ。
……俺は一つの疑問を抱えながらみんなと一緒に進む。
あとベルはなんでムスカ入ってんの?
「……ナユタ…」
「ん?どったアサト」
「…あれなに?」
「ん~?」
アサトが指をさしているのはおみくじのコーナーだった。
くじを引いて運勢を確認した後、枝に結んでおくという定番のやつである。よくあるよね~。
「あれはくじ引きだな。今年の運がいいかどうかくじを引いて占うんだよ。…やるか?」
「…ん…やる…」
「運勢。判定」
やる気満々の一柱と一冊とバーストを連れておみくじに行く。参拝の列にはニャルとクトゥグアがいるから大丈夫だろう。
…知り合いがいるからといって列に割り込むのはマナー違反だからあまりやらないようにしよう!
んでおみくじを引く。
結果は…
・アサト=大吉
・ベル=中吉
・バースト=大吉
・俺=大凶
……なんでや……俺が何したんや…
若干落ち込みつつ俺はおみくじを巻く木に近寄り枝に大凶を巻き付ける。
背が足りないアサトとベルは俺が抱き上げてやる。
そうしているとバーストが俺のおみくじに何かをしている。
見てみると俺のおみくじの上にバーストが自分のおみくじを巻きつけている。
なんでそんなことしてるのか聞いてみると…
「うむ。こうしておけばナユタの大凶と我の大吉で足して割ってお互いに吉くらいにできぬかと思っての」
とのことだった。ええ神様や…。
無言で俺はやさーしくバーストの頭を撫でる。
フードの下にある本物の猫耳を優しくスリスリ。
最近撫で慣れてきたからわかってきたが耳を優しく撫でられるのがバーストは好きらしい。
こうしておみくじが済んで列へと戻っていく。
もうすぐ俺達の番が回ってくる。
ちなみに列に並んでいたニャルとクトゥグアはひたすらじゃれ合っていた。人前なので燃やせないということでクトゥグアはひたすらニャルに抱き着いている。まわりの人間から見ればイチャラブしているように見えることだろう。しかし実際は…
「ああああああ!やめてー!内臓出る!」
「ニャルー!にゃるー!ニャアルゥ!」
「ギバップ!ギーブアアアアップ!」
近くにいるとわかる。なんかニャルの胴体のあたりから「メキャッ」とかいう変な音が聞こえる。相変わらずのニャルキラーELである。
そんなこんなやってる間に俺達の番が来た。
俺の疑問は結局、皆には言い損ねたなぁ…。
賽銭を入れて俺達は一列に並んでそれぞれの願いを神様に伝える。
……そう…神様に…
皆はそれぞれ真剣に自分のお願いを祈っている。
その横で俺は考える。
神様がここでお願い事を言った場合…これは自分でお願いをかなえるのか…それともこの神社にいるであろう神様が必死になって自分より上の神様の願いをかなえるのか…。
そう考えながらふと正面に視線を向けると…賽銭箱の奥のところに涙目でアワアワしている半透明の和服の女性がいた。おそらくこの神社の神だろう。……俺は見なかったことにした。
あのリアクション的にどうやら後者のようだ。
さて参拝も無事済んだことだし帰るとしよう。
そうしている俺の耳に声が聞こえる。
「……ナユタ?…」
この声は…
聞き覚えのある声のほうを向くとそこにはもともとこの世界での知り合いだった…いうなれば俺が神様サイドに行く前にいっしょに行動していた知り合いがいた。人込み越しだからそう近くはない。
……そういえばここ、あいつらの集まっている探偵事務所の近所か。
そりゃ初詣ならここに来るよな。すっかりうっかり。
だが俺には今の生活があるし何より……説明がめんどくさい。
間違いなくあいつらSANチェックだよなぁ…
………
……
…よし!逃げよう!
人込みからまぎれてそのまま空間転移用意!
さっさと家に帰ろう。
そうしているとこちらの状況に気づいたニャルが話しかけてくる。
「ナユタあれ確かお前の知り合いだろ?いいのか?」
「……俺はもうあいつらとは別のところにいるからなー。説明するとややこしくなるし……とりあえず逃げる!行くぞ~アサト、ベル、バースト」
俺はさっさと退散する。
こういう時どういう顔すればいいか…わかんないしな。
◆◆◆◆◆
―――ナユタが帰った後。
俺は門を使って退散するナユタを見送る。
折角生きて再会できんだから会っておけばいいのに相変わらず変なところで変な気を遣うな―。
……はぁ…前のバーストの時の借りもあるしここは一肌脱ぐか。
「クトゥグア。先に帰っておいてくれるか?」
「えー」
「…あとでお前のやりたいことに付き合ってやるから…」
「わかった!」
いい笑顔をしてクトゥグアが帰っていく。
後が怖いなぁ…。
さてと俺の役目を果たすか。
◆◆◆◆◆
―――とある集まり。
「さゆり、どうした?さっきからあっちの方ばっかり見て」
「……ううん…今…向こうにナユタがいたような気がして」
「……さゆり…気持ちはわかるがナユタはもう…」
「……うん…わかってる。もうナユタはいないんだよね…私のせいで…」
神社の中、悲しみで一人の女性が俯く。
そんな彼女を周りにいる仲間たちが彼女を慰める。
「そんなことないよ。あれは…どうしようもなかったよ…」
「そうだな…あの時、俺は動けなかった。ナユタを殺したっていうなら俺も同じだ」
「……それを言うなら俺がみんなを依頼に巻き込まなければあんなことにはならなかった。少なくともさゆりだけが悪いわけじゃない。だからあんまり気にするな」
そんな彼らに一柱の神が音もなく近寄って話しかける。
「慰め合うのはいいけど、それで何もかも忘れるなんてならないようにな~。人間の便利なところだけどある意味欠点だしな~」
「「「「!?」」」」
振り向いた彼らは神の存在に気づく。
「……なんだお前は」
「いや~お前らはそこそこ面白いから挨拶してやろうと思ってな。
初めまして俺はニャルラトホテプっていうんだ、よろしく有馬探偵事務所の皆さん」
「……邪神の一柱が何の用だ…」
「おーさすがは『怪異探偵』なんて異名がついてるだけあるな。俺のこと知ってるなんてな。あーっと…なんで来たかって?ただの暇つぶしだよ」
「……俺達は邪神なんて絶対に許さない。お前たちのせいで俺達の友人は死んだんだ」
それぞれが憎しみのこもった目や恐怖の目を神に向かって向ける。
だが涼しい顔をした神が答える。
「おいおい…言いがかりはよしてくれよ。そもそもお前らが召喚阻止したのはハスターだろ?俺関係ないじゃん。それに…」
神はにやにやしながら先ほどまで俯いていた女性に指をさして言う。
「あいつが別の空間に巻き込まれていなくなったのはそいつが逃げ遅れてあいつに助けられたせいだろ。俺のせいにするなよ」
そう言われた女性は顔を青くして俯き泣き出す。
「私の…私のせいで…ごめんなさい…ごめんなさい」
泣きながら謝り続ける女性を見た男が神に向かって大きな声をあげる。
「……お前!」
「事実だろう?俺は今回は嘘は言ってないぞ?」
「……用が済んだんならさっさと消えろ!」
「言われなくてももう帰りますよっと」
そう言われた神は背を向けて去っていこうとする。
だが何か思い出したような仕草をした後に振り向いて彼らに告げる。
「……そーそー、一つおまけで教えておいてやるよ。ナユタは生きている。さっきお前が見たのは正真正銘、本物だよ」
それを聞いた彼らは驚く。
「……ナユタ君が…生きてる?」
「……それは本当なのか?」
「おう、ほんとだぞー」
「いや嘘だ…だったらなぜナユタは帰ってこないんだ?」
「ああ…今のあいつは魔術師でこっちサイドだからな。そっち側には干渉しないようにしてるんだよ」
「…魔術師だと。…まさかお前が…」
「そうだけど?まあ俺はあいつに生き残る選択肢を与えただけで選んだのはナユタだけどな」
「………」
「まあ生きてるってことだけは伝えたからな~。じゃな~」
そう言った神はそこから煙のように消えていく。
そこに誰もいなかったように。
ただそこにいた彼らの中の一人の女性は俯きながら静かに呟く。
「……ナユタ君が…生きてる…」
その目にはかすかな希望が宿っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます