第11話 君は猫のGODなんだねっ!
俺は遺跡での救助の後、無事に家に帰りいつもの生活に戻っている。
変わったことと言えば猫が数匹増えたのと猫の神様が家で眠っているということだ。
彼女…猫の神で「バースト」というらしい。
格ゲーの単語にありそうな名前だ。
彼女は相当弱っていたらしく、ここにきてもう2日たっているがまだ目は覚めていない。眷属のために相当無茶を重ねていたようだ。
ここまでの評価だけでもすでにその辺で寝ているうちの神や、増えた猫たちにまたしてもリンチされている神などよりも評価は高い。
目覚めたら仲良くできるといいんだがな。
そう考えていると「ピンポーン」という音が聞こえる。
誰か来たらしい。玄関まで行き扉を開けるとそこには、
「ナユタさん……血をくだしゃい」
何か干からびそうな顔で血をねだってくる残念お嬢様風の神がいた。
駄目な神3号が現れてしまったようだ。
「ほいほい。奥でやるから暴れんなよ?」
「ヒャッホイ!」
「元気じゃん…」
リビングにチャウグナーを連れて入る。するとその横で寝ている猫神を見てチャウグナーが驚いた表情をする。
「おや?珍しい方がいますね」
「知り合いなのか?」
「ええ。以前猫から血をもらおうとしてボコられました」
「……見境ねえな…」
「あの時は…お腹がすいてしょうがなかったんですよ」
そう言いながら彼女はコップに入った俺の血をぐびぐび飲んでいく。
ビールじゃねえんだよ。
「…くぅぅぅ!この一杯のために生きてるんですよぉ!私は!」
だからビールじゃねえんだよ。
口の周りに血が付いたままチャウグナーが話の続きをする。
「彼女…人間のことあまり好きじゃないから…目が覚めたら襲われるかもしれませんね」
「……まじか。………まあ仕方ないか。襲われても文句言えないし」
今回の件。元をたどればうちの駄神1号のせいみたいだしな。
そんな話をしていると眠っていた猫神が動き出す。
どうやら目が覚めたようだ。
「おっ気が付いたか?」
俺は彼女に近寄って声をかける。
……あっ…攻撃されるかもって話忘れてた。
彼女は少し周りを確認した後に俺に尋ねる。
「……そうか。ぬしに助けられたのじゃな。礼を言うぞ人間」
「どういたしまして…だな。体調は?」
「……まだ少し悪いが支障はなかろう」
彼女はここにきてすぐの時は熱があった。
俺はちゃんと治っているかどうか確認するべく猫神のおでこに俺のおでこを当てる。……おっ下がってるな。
確認を終え、引っ付いていたおでこを離すとそこには顔を真っ赤にした猫神の姿があった。突然だったから驚かせたか。
猫神が真っ赤になり尻尾をブンブンふりながらこちらに言う。
「にゃ、にゃにをするのじゃ!」
「悪い悪い。熱があったからもう下がったか確認したんだよ。元気になったみたいでよかったよ」
なぜか俺が笑いかけると猫神がさらに真っ赤になる。
…俺なんかまずいことしたのかな。
しばらく真っ赤になっていた猫神だが何かを思い出したように急に真剣な表情になってこちらに聞いてくる。
「……そうじゃ!おぬし!我の眷属たちは?」
「あそこで玩具で遊んでるよ」
そう言って俺は彼女の眷属たちのほうを指さす。そこには…。
うつぶせで倒れているニャルラトホテプ。その背中に整列して乗っている猫達の姿があった。
「「「「「「「「「「にゃ~!」」」」」」」」」」
猫たちが勝利の雄たけびを上げる。どうやら寝ている自分たちの神に変わってニャルをしばいていたようだ。
そしてうつぶせの状態で下を向いたままのニャルが喋りだす。
「……私が…倒れても…また第2…第3のニャルラトホテプがよみがえる……ハハハハハ…グハァ…」
そう言い切ったニャルが力なく崩れる。…あいつ第2第3どころか千も万も化身がいるけどな。
その様子を見た猫神は安心したように胸をなでおろす。
そしてこちらを真剣な表情をして見つめてくる。
「……礼を言うのじゃ。我だけでは助けられなかった。ありがとう」
「困ったときはお互い様ってな。気にしなくてもいいよ」
「そうか…そうじゃ忘れておった。我は猫の神バーストだ。よろしく頼むのじゃ」
「俺はナユタ。この家の主でニャルたちの友人だな」
「ふむ。ナユタじゃな。よろしくの」
どうやらいきなり戦いが始まる…ということは無いようだ。
そうしてお互いに自己紹介をしていると隣からチャウグナーが出てくる。
「久しぶりですね猫神バースト。争い以外でこうして顔をあわせるのは初めてかもしれませんね」
「お前は…ふむ、チャウグナーか。久しいな。我の眷属たちにちょっかいだしておらんじゃろな?」
「同じ失敗は繰り返しません!それにここにはナユタさんもいます。だからもう猫から血をもらったりはしません」
「お前…ここに最初に来た時、発狂して襲い掛かってきたよな?」
「うぐ!」
「猫に襲い掛かったら殴るぞ」
チャウグナーがぐぬぬっと言いう顔をして去っていく。
どうやら血が好きなやべーやつという認識は人も神も共通のようだ。
そして1つ気になったことを聞いてみる。
「ちなみに…バーストは体をころころ変えて他人で遊んだり、1日30時間が平均睡眠時間だったり、血を飲むのが大好きだったりしないよな?」
「いやいや…そんな奴、神でもそんなにおらんじゃろ?」
俺は無言でソファーの方を指さす。そこには『てへっ!』!というポーズをとった人型のニャル、ツァト、チャウグナーがいた。
それを見たバーストが申し訳なさそうな顔をしてこっちに向きなおる。
「……神を代表して謝るのじゃ。すまん」
「いや…バーストはまともそうでよかったよ」
俺達が悲しそうにこっちで話している間向こうの神達は、
「なんでや!神は遊んでなんぼやろ!」
「睡眠時間は大事だぞ!」
「血祭りにあげてやるぅ…」
などと言っている神達がいた。無視しよう。
「いや、よかったよ。バーストがうちの妻同様まともで…」
といったときバーストが急に前に身を乗り出す。
「つ、妻っ!?」
「お、おう。会うか?おーい!アサトー!」
俺の声に反応したアサトがテレビの前からこちらに来る。
「……ん…なに?…」
「新しく知り合いになったバーストだ。バースト、彼女が俺の妻のアサト、アザトースだ」
「……よろしく…」
「…うむ…よろしくの…」
おや?なぜか二人はお互いに見つめあっている。どうかしたのだろうか?
しばらく見つめあったあとにアサトがバーストに近づいて耳元で何かを言っている。そしてその言葉を聞いたバーストが真っ赤になり頭から湯気が出る。なんだこれ?
「……ん…やっぱり…図星…」
「にゃ、にゃ、にゃ、にゃにを言うのじゃ!別に我はナユタのことを…」
「俺がどうかしたか?」
「……あう…」
俺が声をかけるとさらにバーストが赤くなる。いったい何ごとだろう。
真っ赤のままバーストが立ち上がる。
「きょ、今日はやることがあるからもうお暇するのじゃ!じゃあのナユタ!」
物凄いスピードで真っ赤のままのバーストが去っていく。
そして玄関に向かう扉の前でピタッとバーストが止まったかと思うと真っ赤な顔のままこっちを見て言う。
「……またきてもよいかのう?」
「おう。いつでもどーぞ。バーストなら大歓迎だ」
「……うむ。またのナユタ」
そう言いながら玄関に向かう。帰ったのだろう。
……あれ?そういえばなんで初めて来たうちの玄関の位置知ってんだろ?
俺は些細な疑問を胸にしまい込んでアサトを抱っこしたままソファーにむかう。
今日も我が家は平和だわ。
◆◆◆◆◆
―――玄関に向かう廊下
バーストが早足で帰ろうとしているとき廊下にはいつの間にか先回りしていたツァトグアがいた。
「……何の用じゃツァトグア。別にナユタに手を出しはしておらぬぞ?」
「……いやぁ…お前が他人に眷属を預ける理由を考えていたが…さすがに予想外だった。まさか人嫌いのお前が人に惚れるとはなー」
「にゃ、にゃんのことじゃ!」
「……動揺して猫っぽくなってるぞ?」
「もともと猫じゃ!」
真っ赤になったバーストがツァトグアに「フシャーッ」と威嚇する。
その様子を見たツァトグアが笑う。
「まあ敵にならないなら私は気にしない。……ところで、さっきアサトに何を言われた?」
「……『うちは一夫多妻制。いつでもウェルカム』と言っておったわ…」
それを聞いたツァトグアが爆笑する。
「自分と同じようにナユタを好きだと感付いて気を使わないように言ったんだろうが……ハハハハ!アサトも成長しているな」
「……我は…」
すこし俯いたバーストがそう呟く。その様子を見たツァトグアがリビングのほうに戻りながら言う。
「おぬしが猫だろうと神だろうと…あいつは気にはしない。私やニャルの時もそうだったしな。あとはお前次第だ」
そう言ったツァトグアがリビングに戻っていく。
そしてバーストは少し考えこんだ後に廊下から玄関に向かい出ていく。
そして廊下には誰もいなくなった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます