第12話 リベンジホテプMK-Ⅱとナデナデ

 いろいろな騒動も片付き俺たちは落ち着いた日常に戻っていた。

 バーストもちょくちょく遊びに来てくれている。

 いつもどことなく嬉しそうに話しかけてくれているあたり、そこそここの家のことを気に入ってくれたようだ。アサトとも仲良くしてるしな。

 この前もアサトと、


『のう…アサトはどんな風にナユタに出会ったんじゃ?』

『…ん…私が宇宙空間で寂しかったところにナユタが来て…私に心をくれた……それが馴れ初め…』

『……それもよいのう…』

『……バーストは?…』

『我は…』


 という風に会話していた。うちの妻は意外とコミュニケーション能力が高い。無事仲良くなってよかったよかった。

 バーストもニャルのことをグーパンチ50発で許してくれたし。みんな無事で何よりだ。ニャル?ああ、奴さん死んだよ。


 んで今現在、俺は遊びに来てくれているバーストとアサト、そしてベルと一緒にテーブルに座ってお茶をすすっている。


 ズズズズー


 落ち着く味だ。俺達、1人と2柱と1冊はまったりとした表情でホッと息を吐く。お茶は偉大な文化だなー。

 バーストもゆったりとした表情でもうひと口飲み、

 アサトは煎餅をリスのように頬張っている。あらやだかわいい。

 ベルは……こちらに湯呑を出している。


「マスターおかわりを所望」

「ほいほい」


 みんなにお茶を再度そそいで一休み。落ち着くわ~。


 顔を緩ませて寛いでいるとバーストが何か怪しいものを見たような表情でこちらに尋ねてくる。


「……のうナユタ…あれは何をしておるのじゃ?…」

「……あーえっと…多分リベンジマッチ…かな?」


 俺達が呆れた表情で見る視線の先、そこでは…


「うふふふふ…猫神の眷属と言っても所詮は猫。この至高の猫缶には勝てないでしょう!欲しいか、欲しいか。卑しい猫め!」

「にゃ~!」「にゃー」「にゃっ!」「にゃ~」


 猫達の前で猫缶をちらつけせて意地悪をしているニャルの姿だった。

 前回の敗北のことをまだ忘れていなかったのだろう。

 ちなみに今日は和服美人。見た目だけ変わってもなー。


「さぁっ!猫缶が欲しかったら跪け!私に詫びるがいい!はははは!」


 さすが邪神。完全に屑のムーブだ。横に猫の神様がいるのによくやるわ。

 ……おや?猫たちの様子が…


 猫の数匹がニャルの部屋へと入っていく。扉開けられるなんて偉いな。

 …で、戻ってきた。ニャルの部屋にあったプラモデルをもって。


「……そ、それは私の宝物の1000分の1、超小型『〇オング』じゃない!?まさかあなた達それを人質にするつもり!?」


 そしてプラモの上に1匹の猫が足をのせる。なんとなく悪い顔をしている気がする。


「にゃ~」

「……くそう!あなた達それでも猫なの!猫としての誇りを忘れてしまったの!」


 ……さっきお前「卑しい猫め」とか言ってなかったか?


「…………お願いします。猫缶あげるから返してください」

「にゃ~」



 ついに折れたニャルが見事にきれいな土下座をして降参する。

 和服だから見栄えがいいな。……まさかそのために!?


 そんなことを俺が考えているうちに状況は進む。

 猫缶を猫たちが回収。

 猫達もプラモを返す…かに思われたが違った。

 床に立てられた「ジ〇ング」。その「ジオ〇グ」に向けて猫の1匹がダッシュで駆け寄り、


「にゃっ!!!」


 勢いのままに必殺ネコパンチを「ジオン〇」にかます。

 メキャッという音をたててプラモだったものが飛んでいく。


「あんまりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ニャルが吹き飛んで四散していったプラモを追いかけていく。

 悪は滅びた。



 そんな光景を呆れた目でバーストと一緒に眺める。

 そうしていると猫たちが俺のほうに来る。


「「「「「「「「「にゃー」」」」」」」」」


 鳴き声で何となく察する。「褒めて褒めて」というニュアンスを。アサトもこんな感じだしな。いちおうバーストにも聞いてみる。


「なんて言ってる?」

「『偉いでしょ撫でて撫でて』…だそうじゃ」


 当たってた。猫語習得は近いかもしれない。

 なんて考えつつ俺の膝によじ登ってくる猫達を撫でる。

 気持ちよさそうだ。

 そんな様子をジーとバーストが見てくる。


「どした?」

「い、いや。なんでもないのじゃ…」


 なにか言いたげだがバーストが黙る。どうかしたのか?

 するとアサトが何かを察して言う。


「……バースト…猫が気持ちよさそうで羨ましいんでしょ…」

「にゃ、にゃにを言うのじゃ…そんなこと」

「そうなのか?ならバーストも撫でるか」

「にゃ!?いいのじゃ!恥ずかしい!」

「提案。バーストが猫の姿になればいい」


 すこし考え込むバースト。なぜかシャドーボクシングするアサトとベル。


「………むー…それなら…よいかの…」

「んじゃ。こいこい。バースト」

「う、うむ」


 黒色の猫の姿になったバーストが俺の膝の上に来る。

 緊張してるのか若干動きがぎこちない。

 俺は膝の上に座っているバースト(黒猫)を撫でる。

 ……こ、これは…触り心地最高じゃないか!

 さらっさらの猫毛が俺の指の間を通り抜ける。

 さすが猫の神様。撫でるほうも気持ちよくなるとは。

 バーストも俺の膝で気持ちよさそうにしているし問題はなさそうだ。


「……にゃ~…」


 気持ちよさそうにバーストが鳴き声をあげる。かわいいな。

 普段、気を張っているみたいだからこういう時はしっかり甘やかすべきだろう。

 よーしよしよしよし。

 顎ナデナデ、頭なでなで、背中ナデナデ、肉球ぷにぷに


 そんなこんなしているとバーストがいつの間にか眠っている。

 ……あれ?膝の上で寝られたらこれ動けないんじゃ?…

 そう考えているうちにアサトやベルや猫たちはどこかに行ってしまう。

 誰も助けてはくれんのか。世知辛いのう。

 仕方ないのでバーストを撫で続ける。完全にぐっすりだ。

 夢の中で何を見ていることやら。

 そして撫で続けること十数分、問題が発生。

 …うん。足がね、しびれてきたんだ。でも気持ちよさそうに寝ているバーストを起こすのは忍びないし。仕方ないし腕に抱えて撫で続けるか。


 ゆっくりとバーストを起こさないように抱きかかえる。

 ……よし。起こさずに抱きかかえるのに成功した。このまま抱えて撫でていよう。そうしよう。


 気持ちよさそうなバーストの寝顔を見ながら俺は撫で続ける。

 そして撫でているうちにいつの間にか俺も眠くなってきた。

 バーストを落とさないようにしっかりと抱き抱えて俺は眠る。

 …Zzz…



◆◆◆◆◆



 ―――その少し後


 ……我は……そうだ。確かナユタに撫でられていて…気持ちよくて眠ってしまっていたのか。


 状況を思い出した我は体を動かそうとして気づく。

 体が動かない。というか誰かに抱きしめられているということに。

 我は顔をあげる。

 …そこには気持ちよさそうに寝ているナユタの姿があった。

 そして気づく。我はナユタに抱きしめられていることに。


 ………な、なぜだ…なぜこうなった…


 我は体温が高くなる。頭が沸騰して今にもオーバーヒートしそうだ。

 だが動くわけにもいかない。気持ちよさそうなナユタの寝顔を見ているとそう思う。動けずにただただナユタの顔を見ていると前にツァトグアが言いていた言葉を思い出す。


『おぬしが猫だろうと神だろうと…あいつは気にはしない』


 ……確かにそうだな。ナユタは…すべてを等しく扱う。神も魔導書も猫も。…我もアサトのように一緒に居られたらきっと幸せだろうな。



 ナユタが目を覚ますその時まで我は幸せそうな寝顔を見つめる

      寝ているなら正面から見ていても恥ずかしくないからの

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