第8話 お菓子戦争と影分身の術

 俺は今日本のスーパーの中で買い物している。


 ……俺はもしかしてこのまま主夫になるのでは?


 そんなことを考えながら歩いているとふとお菓子コーナーが目に入る。


 そう言えば最近、うちにお菓子買って帰ってないな。


 目に入ったのだし何か買って帰ろう。そう思い俺はお菓子コーナーに行く。何がいいだろう?


 ――15分48秒後


 うーん…結構悩むなこれ。あいつらなにが好きとか知らないしなぁ。

 ……いっそ何か実験でもするか。

 そう思った俺はお菓子コーナーのチョコの場所に行き2つのお菓子を買ってかえる。



◆◆◆◆◆



 で、今は家にいる。そしてニャルとアサトとベル、あと血をもらいに来ていたチャウグナーだ。


「今日はスーパーでお菓子も買ってきたんだ。せっかくだから2つあるお菓子のどちらが好きか聞いてみたいと思う」

「……きのこと…たけのこ?…」

「推測。形を模倣した食べ物」

「血が入ってれば嬉しいですけど……入ってないんでしょうねぇ…」

「……私は知ってるか言うけど戦争起こしたいの?ナユタ」


 ニャルが珍しく呆れた顔でこちらを見ている。ちなみに今日は英国美女って感じだな。


「いやぁ…みんなの好きなもの知らなかったから…どうせなら神とかがどっち派なのか調べようと思ってな」

「よろしい。ならば戦争だ」


 というわけでみんなでチョコを食べる。キノコ型チョコとタケノコ型のチョコ。みんな独特の反応をしている。


「……甘い……美味しい…はむっ…」

「美味。マスターおかわり所望」

「美味しいですね。これのチョコの部分を血に変えれば…閃きました!」

「私、化身ごとに好み違うから参考にならないんだけどなぁー…まあ美味しいし、いいか!」



 さあ…これで全員二つのチョコを食べた。あとはどちらのチョコが好みかを言い合うだけだ。ちなみに俺はタケノコ派だ。


「じゃあみんなで一斉に好きなほうを指さそう。いいか?いくぞー。せーのっ!」



◆◆◆◆◆



 ―――30分後

 ……俺は…今……部屋の隅で体育座りをしている。

 理由は家族のように親しくしていたやつらに裏切られたからだ。


「……なんでナユタ落ち込んでる?…」

「精神ダメージ大。SAN値マイナス突入」

「塊の部分を凝固した血にすれば……新商品完成です!」

「いやぁ……まさかナユタ以外全員キノコ派だとは…」

「……キノコのほうがチョコ多い…」

「キノコ:持つ場所があり食べやすい。タケノコ:持ちずらい、持っているとチョコが溶けて手につく」

「キノコの傘の部分に血を絡めやすそうでしたから」


 ……敵側の会話が聞こえる。奴らはタケノコの暴言を吐いている。

 …たしかに手にチョコが付いたりするが、味のバランスが良くておいしいんだい!決して「あっ確かにその通りだな」なんて思ってない。断じて。


 そんな俺のもとに憐れみを顔に浮かべたニャルが歩いてくる。

 ニャルは俺の肩に手を置き、


「まぁ……気にしないほうがいいわよ…私はキノコ派だけど…私の化身の中にはタケノコ派もいるからさ」

「ニャル…ありがとう。………ちなみに比率は?…」

「7:3でキノコのほうが多いな」

「死ね!くたばれ!血の一滴も残すなぁ!」


 言い終わったニャルがニヨニヨ似た顔でこちらを見ている。

 色々片付いたらぶん殴ろう。そうしよう。


 悲しみに暮れる俺をみんなが観察しているとき部屋の端で寝ていたやつが起きる。実に5日ぶりだな。


「ふぁ…よく寝たな。……なんだこの状況は?……おう!タケノコの〇ではないか!余ってるならもらうぞ!」


 寝起きのツァトがタケノコのチョコを抱えて食べていく。

 ……まさか…まさか……


「……あなたお菓子なんて知ってたのね」

「ん~…ニャルか。お前のせいで寝床を焼かれて信者たちに仕方ないからと街中のホテルに連れていかれたことがあったからな。その時に何か持ってこい、と命令したらお菓子を持ってきた。で、人間の世界のお菓子は美味しいということに気づいたんだ」

「疑問。何故ツァトグアはタケノコ?」

「うん?食べやすいからだが?キノコは凹凸があって口の中で面倒だ」


 ……思わぬところに同志がいた。俺は…一人じゃなかった!

 唯一のタケノコ同志よ!


「……ナユタ?……なぜ泣きながらこちらを見る?……なぜ熱い抱擁を交わす?……なぜ無言でグッジョブサインを送ってくる?…」


 その後、ツァトグアには高級羽毛布団が配布された。

 突然渡されたツァトグアは困惑していたが…布団で寝た後にナユタに、

「あなたが神か!」

 と言っていた。


 今日も我が家は平和である。



◆◆◆◆◆



 ―――とある昼


 俺はアサトとベルと一緒にリビングのソファの上でじゃれている。

 アサトの頭をなでなで。


「……ふみゅ…」

「交代。交代」


 今度はベルの頭をなでなで。


「至福。幸福」

「……むー…」


 また交代。


「……ん~…」

「不公平。長い」


 現在、俺は幼女二人組を交代で撫でている。

 この繰り返しですでに30分経ってるんだが…

 さすがにつらい。せめてどちらか一人にしたいんだが。

 すると誰かが俺の肩を叩く。

 そこには親指で自分を指しながら「俺だよオレオレ」みたいな雰囲気を醸し出しているニャル。嫌な予感がする。1柱と1冊にはソファで待ってもらい、

 俺とニャルは廊下に出てはなす。


「で、なんだ?」

「お困りのようだなナユタよ」

「まあ地味に困っているが……何する気だ?」

「俺を使えばええんやで!俺がナユタになってナデナデしてあげればええんやで!」

「いいのかお前…多分…」

「はっはっは!俺は変装のプロだ!ばれようはずもない!」

「……まあ…お前がいいならやってやるけど…後悔すんなよ?」

「完璧なナユタを演じてやるぜ!」


 こうしてよくわからないニャルの戯れが始まった。

 ……なんとなくどうなるのかはわかってるんだがなぁ。


 俺達はナユタ×2の状態でリビングに戻る。ちなみにニャルはどっちかわからないように自動で俺とハモる魔術を使ったらしい。

 ……いや、そこを自力で頑張れよ!


「…?…ナユタ増えた?…」

「検索。どちらもナユタ。分身?」


「「ああ、魔術で分身したんだよこれで二人とも撫でられるるだろ」」

「「おー」」


 二人がハモって喜んでいる。この後のニャルの運命がやはり確定した気がする。


 俺がベル、ニャユタがアサトを撫でる。


「マスター気持ちいい」

「そっかよかったな」


 なでなで。なでなで。

 すごく気持ちよさそうな顔でベルが目を細めている。

 基本無表情に近いベルのこういう顔はすごくかわいい。

 ゆったりと優しくなでなで。こっちは平和だなー。…こっちは。


 で、化けているニャユタの方を見る。

 撫でられているアサトは……なんか怒っている。

 だよなー。


「……これ偽物………ナユタはこんなに雑に撫でない……さては…ニャルラトホテプ……滅べ…」



 先の展開を読んだ俺はニャユタの後ろに「門の創造」を高速発動。

 ニャルの後ろにどこでもド〇が出る。

 アサトの主神パンチ!相手は彼方へと吹き飛ぶ。

 ニャルは……うん……いい奴(?)だったよ。


「これでぇ…勝ったと……オモウナヨォォォォォ!」


 何と戦ってるんだお前は…

 いちおう出口は南極にしておいた。頭冷やしてこい。


 だがニャルの失敗からあることを思い出す。

 ……そういや俺、分身魔術使えたわ。ニャル、お前の犠牲…無駄じゃなかったぞ。


 その後、分身した俺で二人の頭を撫でる。

 二人ともご満悦である。


 しばらくしてからカチコチでブルブル震えているニャルが帰ってきた。

 仕方ないのでヒーターの前にニャルを設置してスープを作る。


 今日も我が家は平和っすなー。

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