第4話 名前ははっきりしっかりと
現在俺は1人と2柱と1冊で朝食をとっている。
目玉焼きはだれが作ってもおいしいな。だれがつくっても。
そうしているとニャルが話しかけてきた。
「でナユタさ、この後はどうすんだ?」
「この後?食後に何するかって?」
「いや、そうじゃなくて……もう自分の世界に帰れるじゃん。帰るの?」
「あーそうだなぁ……」
その会話を聞いてアサトがビクッとしてこっちを見ている。何やら心配そうだな。
ジーとこちらを不安げな顔でみて……ああ、そういうことか。
俺はアサトの頭を撫でて言い聞かせるよう言う。
「別にどこに行くとしても置いていかないから心配すんな。もちろんベルもな」
その言葉を聞いてアサトがパッと笑顔になりベルとハイタッチし始めた。尚その光景を見たニャルがクネクネしながら
「もちろん、わ・た・し・も・よね!」
と言ってきた。……かっこいい男の姿で。
「キモイ、死ね、果てろ」
「しどい!」
しばらくニャルがなんか液体状になって嘆いていた後に急にシャキーンと元の男の姿に戻った。一発芸かな?
「んでどうすんの~?」
どうやら先ほどの話の答えを待っていたらしい。
「ここに居るよ。お前からせっかくもらったんだし……もう俺もまともな人間とは言えないしな」
「そかー。じゃあ俺も大体ここに居るわ。まあやることあったらたまに消えるけど」
「まあ好きにしろよ。もらったとはいえ、もともとここはお前んちだしな」
「おーあんがと。まあここは好きにしていいよ。持ち主はもうお前だしな」
「ういー。了解」
朝食を終え俺とアサトとベルはテレビの前でくつろいでいる。
そうしているとアサトが服をくいくいと引っ張る。
「アサト?どうした?」
「あの食べ物……おいしそう」
「んー?ああラーメンか。俺でも作れるから今度食材買ってきて作ってやるからな」
「ん……楽しみ…」
「マスター、私も所望する」
「ほいほい、ベルもな」
「おー」
二人が再びハイタッチををしている。
この二人……いつの間にこんなに仲良くなったんだろ?
そんな感じでのんびりしていると、入り口が開く。ニャルかな?
「おーいナユター客だぞ~」
「……客?」
「おう入り口にいるから行ってみろ。お前に用があるみたいだぞー」
何だかわからないが俺に客らしいので入り口に行く。
そこには汚い大きなテントウムシが4匹いた。なあにこれぇ。
じっくり見ているとテントウムシがしゃべりだす。
「お前か!我らの神を連れ去った人間というのは!」
とはっきり流暢にしゃべりだした。賢いな虫。しかしなんかおこである。
激おこっぽいので返事はしっかりしておく。
「ええとニャルのことか?あんな暇神ならいらないから返すぞ」
「違う!あんな暇神いらん。我らがあんな奴を信仰するわけがないだろう!」
「お前ら……俺がいない間になんで俺の悪口言い合っての?……泣くよ?」
いつのまにか後ろにアサトとベルと半泣きのニャルが来ていた。ちなみにニャルはベルに頭を撫でられている。
「ベルは優しいいい子になったなーお父さんうれしいぞぉ……」
「父、日頃の行いが悪い。もう少し他人に評価される行動をすべき」
「……はい。……すいません」
ニャル(製作者)は娘(製造物)に叱られている。悲しきかな。
そんな光景を見ていると虫が怒りだした。あっ忘れてた。
「おのれ!我らが神をそんなのと同じにした罪。その命で償え!」
そういいながら虫の一匹がこちらに突っ込んでくる。おれは高速で魔術を使用しようとしたその時俺の前にアサトが出てきた。……あれ?なんか怒ってない?
「ナユタに危害を加えるの…許さない…」
そう言いながら小さな手で虫に向かってグーパンチをする。
その瞬間、正面の虫を含めその後ろにある空間諸々を消し飛ばす衝撃が炸裂する。
かわいいから忘れがちだがこの子神様でした。襲い掛かろうとしていた虫は……犠牲になったのだ……。跡形もないからまあ生きてないだろう。
他の虫はその場に立ち尽くしプルプルしている。
そりゃあいきなり仲間が消し飛べばなぁ…。
「アサト。助けてくれてありがとな」
「ん」
若干えっへんしているアサトの頭を撫でる。敵に回さなければかわいいのだ。
その時何かに気が付いた虫がこちらに話しかける。
「もしや……我らが神、アザトース様ですか!」
おや?どうやらアサトの知り合いらしい。
「アサト、知り合いか?」
「む?知らない」
あれ?でもあっちは知ってるっぽいんだが……
そうしていると後ろからニャルがしゃべる。
「あいつらはシャッガイって星の虫でな。シャンっていうんだ。あいつらはアザトースを崇拝、信仰しているんだよ。……まあ当の本人は意識も何もあったもんじゃなかったから知ってるわけないんだけどな」
「なるほど。連れていったってアサトのことか」
とりあえずシャン達にどういう状態か説明すると
「な、なんと…我らが神に自我が!?」
と驚いていた。どうやら意識なき神として崇めていたそうだ。まあ自我があっても同じ神らしく、これからも自分たちの神として信仰していくそうだ。
いろいろ畏まったシャンたちがアサトに質問する。
「それで我らが神よ……その男はいったい?」
質問されたアサトはこちらをチラチラ見てくる。なんかかわいいな。
シャンに向き直ったアサトが言い放つ。
「ん……私の旦那様…」
「なんと!」
「「oh……」」
俺とニャルは予想外の返答におかしな声が漏れる。俺は結婚してたのか…。
非モテ・独身・恋愛経験なしと三種の神器がそろっていた俺はいつの間にか結婚していた事実に驚く。ニャルは隣で「……ありか?……ありだな!うん!」と納得していた。神よ、それでいいのか…。
混乱している俺を見上げアサトは不安げに聞いてくる。
「………ダメ?」
「あー……」
これはあれだ。こんなにかわいい子に目をウルウルされたら断れん。というか断ったら人間失格な気がする。……こうなったらやけくそだな。うん。
アサトを抱き上げて頭を撫でつつ、シャン達に言い放つ。
「アザトースは俺の妻で、俺はアザトースの夫だ」
一世一代の男の見せ場だ。なんかもうやけくそでテンションがおかしいが気にしない気にしない。
シャンは驚いていたがなんか納得すると俺に土下座してきた。
「……知らぬこととはいえ無礼を働き申し訳ありませんでした!」
「うむ。不問にしようではないか!」
気分は水〇黄門である。ひかえよろ~。
「偉大なる我らが神の伴侶様、これからは我らが神とともに信仰させていただきたく。……それで差し支えなければお名前を聞いても?」
「ああ。俺の名は……」
答えようとして少し考える。これ普通に名乗るか、なにか別の名前を考えたらいいのか。そう考えていると後ろからニャルが耳打ちする。
「ここはかっこよく『闇の王ナユタだ』でいいんじゃないか」
もうそれでいいか。そう思った俺は勢いのまま口にする。
「俺は闇の王!ナユタ……あっ無理だ……やっぱ無理…」
名前をいいながら正気に戻る。やっぱりそんなはずい名前は言えないわこれ。
提案者は口元を押さえて笑うのをこらえながらぷるぷるしている。コノヤロウ。
しかし名前だと勘違いしたシャンがいう。
「なるほど。闇の王ナユタ・アムリタ様ですね。外宇宙をすべし神としてこれから信仰させていただきます!それでは失礼します!」
そういってどこかに行ってしまった。……いやいやいやいや。
「まってぇぇぇぇぇぇぇ!それ名前じゃないんだよぉぉぉぉぉ!シャーーーーーーーン!カムバァァァァック!」
呼び止めようとするがもういない。俺はうなだれ膝と両手を地面について絶望する。……ナユタ・アムリタて。もうただの中二病じゃねぇか……
後ろではニャルがひっくり返り爆笑している。くそう……神にはめられた…。
しょぼくれる俺の頭をアサトとベルが撫でる。俺の妻と魔導書は優しいなぁ……
優しい妻たちにを抱きかかえマイホームにかえる。
……仕返しついでにニャルを踏みながら。
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