第2話 神様ってこんなだっけ?
俺は赤い扉を選びその中に入る。その中には……何もなかった。
ついでに空気もなかったので魔術で呼吸できるようにする。
……あっれー?あのニャルが何もしてないなんてことはないだろうと気合を入れてきたのにその実なにもないとは……もしかしてあたりの部屋だったとか?
そう考えてた俺は部屋というか、なんか立つことのできる空間の中をよく見る。よく見て気づく。
……なんか銀色の粒子みたいなものが空間を埋め尽くしてる。
俺がその粒子っぽいもの眺めているとその粒子の中心に何か丸いものが出てくる。
これは……目玉か?俺がそれを目玉と認識し眺めいているとパチッと目が開く。
そしてこちらをジーっとみてくる。なんだろうこれちょっとわからんな。この空間にいる生き物か何かかな?
そう俺が考えて近づく。特に危険な感じはしない。よくわからないが
ここにはこの目玉しかないようだ。……とりあえずつついてみるか。
そう思った俺は目玉の正面に立ち目玉をツンツンする。
特に何も起きなかった。目玉もこちらをじっと見ている。
……なんだかかわいく見えてきた。
そう思い目玉を撫でてみる。……さすさす……さすさす。
すると目玉が気持ちよさそうに目を細める。
光景的にはシュールだが……この目玉かわいいな…
そう思いひたすら目玉を撫でる…撫でる…撫でる
だいぶ撫でたあたりで後ろから唐突に笑い声が響く。
「…ぷっ!くく…あは、あはははははははは!も、もうだめ!我慢できない!あっはははははははははは………」
爆笑しながら黒髪の女性が出てくる。……この感じもしかして。
「ニャルか?姿変えたんだな」
「あっははは!ひーっ…ひーっ……そうだよ…あたしあたし」
「お前何爆笑してんだ?……まさか発狂したのか!?」
「してないわっ!あんたの行動が面白すぎて笑ってたんだよっ!」
「俺の行動?この目玉撫でてただけだが?」
「そうそれ!今までそんな馬鹿いなかったから面白すぎんよ~!……思い出したらまた笑いそうだ…ぷぷっ」
美女の顔で下品にニャルが笑う。顔変えたほうがいんでない?
そう思いながら疑問を聞いてみる。
「どうした?この目玉がどうかしたのか?」
「その目玉はな。この空間の主。盲目白痴の神『アザトース』の生み出した目玉、つまり今お前は白痴の神を撫でてんのよ。前代未聞よそんな馬鹿」
「白痴の神?これが外の神の主神か。へーこんな感じなんだな」
白痴の神アザトース。邪神の王にしてニャルの生みの親。すべての邪神の原点か。
知識はあるがどんなかは知らなかったな。
「……過去これを聞いてそんなリアクション薄いのはお前ぐらいだよ……あーちなみにこれが姿ってわけじゃなくて本来は概念みたいな存在だから姿なんてもの自体ないんだよ。目玉を空間に生み出したのは……さてなんでかな。この神、思考とか知識とかないからわかんね。まあ何か近づいてきたから確認しようとしたとかそんなだろ多分」
「ふーん」
ニャルの言葉を聞きながら目玉を撫でる。相変わらず気持ちよさそうにしている。
……ニャルよりこっちのほうがましな神かもな。
「……お前また失礼なこと考えてんでしょ」
「マッサカー」
「はあ…まあいいよ。扉通って無事だったし、だいぶ笑わせてもらったしね。約束通り別荘に案内してあげる。ついてきて~」
そういったニャルの前の空間が歪む。俺もついていこうとして振り返りそして……体の首から下が動かなくなった。あっれぇー?
「おいニャル。体動かないんだが?お前か?」
「はっ?いや知らないよ?……もしかしてアザトース?」
「まじか。あれこれ俺捕まってるんじゃ……」
「う~ん困ったな。なんの気まぐれか知らないけどアザトースがお前のこと捕まえてるみたい」
「……確か意識とかはこの神にはないんだよな?」
「……うん」
「……俺どうやってここから出るの?」
「……ガンバ」
こいつ……諦めやがった。
とりあえず目玉のほうに向きなおろうとする。そうしたら体は自由になった。ダッシュでここから出ようと歪んだ空間に体を動かすが途中で動きが止まる。どうやらここから出ようとすると止まるみたいだ。これは困った。ちなみにニャルはにやにやしながらこっちを見ている。うぜぇ……。
「なあこの目玉を介してアザトースに俺の中にある知識とかを魔術で渡すとかできない?会話が成り立てば何とかなるんじゃないかなぁ……」
「昔、暇つぶしで私もやってみたけど魔術をレジストされたよ。まあ攻撃魔術かなんかだと思ってはじくんじゃないかな」
「………まあできることもないし、試してみるか……」
俺は目玉を撫でながら魔術を発動する。撫でながら。
何となくだがニャルがやったから失敗したんじゃないかと思う。
ニャルの意識とかなんか体に悪そうだしな。
そう考えながらやっていると魔術が収まる。
特に状況は変わってなかった。
「駄目か…」
「諦めんなよ!どうして諦めるんだそこで!」
「うるさい。あと暑苦しい。炎の精霊になるな…」
そうやってニャルと話していると目玉が急に消えた。空間が突如激しい光に包まれる。やがて光が収束していき収まっていく。
そしてそこには……金髪の幼女がいた。年齢は大体5~6歳くらいだろうか。可愛いワンピースを着ていて若干眠そうな、気怠そうな顔をしている。さっきまで目玉があった場所でジーとこちらをみている。
それに驚く俺とニャル。
「「……ええ…?」」
固まった俺とニャルのほうにとてとてと幼女が歩いてくる。そして幼女は俺に抱き着き口を開いた。
「…好き」
さらによくわかんない状態の俺たちは再び、
「「……えええ…?」」
という。さすがにこれは俺も久しぶりに動揺した。
……とりあえず状況を確かめよう。
「ええと君はもしかして……さっきの目玉の子?」
幼女は無言のまま、コクコク とうなづく。
なるほど。状況は分かった。この子アザトースだこれぇー。
混乱しながら質問を続ける。
「……魔術を受けて俺の知識をもらって姿を変えたのはわかった。でもなんで小さな子供の姿なんだ?」
幼女トースが答える。
「………このほうが頭撫でやすそう…」
「…ああ。なるほどな」
納得した。要するに頭を撫でられたいのだろう。
さっきまでずっと撫でてたしな。なんとなくわかった俺は幼女トースの頭を撫でる。幼女トースは気持ちよさそうにしている。
そんなやりとりをしているとニャルが珍しく真顔で話しかけてきた。
「…まさか本当にアザトースに知識を与えるなんて……しかもそれによってアザトースに自我が目覚めている。これは……想像以上に……面白い!」
……最終的に着地地点はそこか。
もはや気にしないようにして幼女に話しかける。
「もしかして撫でてほしくて捕まえてたのか?」
コクコク
「……じゃあ一緒に来るか?」
コクコク
「……まじか」
幼女トースは抱き着いていて離れない。どうやら懐かれたようだ。でもまあいいか。攻撃されるわけでもなくただ撫でてほしいだけみたいだし。どこぞのクソホテプよりはだいぶ良心的だ。
「よろしくな。アザトース」
「?」
「ん?どうした?」
「……アザトースって何?」
幼女トースと俺は顔を見合せ頭に?を浮かべる。
するとニャルがいう。
「ああ。アザトースって別に本人が名乗ったんじゃなくて周りが勝手につけた名前だからアザトース自体しらないんだよ。ていうか知ってたとしても意識なんてもってなかったしね」
「ああ。そういうことか。てことは名無しか。どうする?」
そう幼女トースに聞くと
「…名前…つけて…」
と言ってきた。俺を見ながら。
名前かー。うーん……そうだなぁ…
「……じゃあアザとトースからとって
「ん…わかった。よろしく……ナユタ」
「ああ。よろしくな」
そういいながらアサトの頭を撫でる。アサトは気持ちよさそうに目を細めながら抱き着いてくる。
「じゃあニャル、別荘よろ」
「……これはさすがに予想外だけどまあいいか。面白そうだしな」
そういったニャルが空間を歪ませる。目指すは別荘。新しい家だ。
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