第2話
「よく、お聞き。これから本当のことをすべて話してあげるから」
旅人は、語り始めました。少年は黙って頷き、その話に耳をかたむけたのです。
「もう20年も前のことだ。俺はまだ子どもだった。俺たちの住む村に、一人の変わり者のばあさんがやってきたんだ・・」
それは本当に石のカラスが長い間待っていたおばあさんだったのでしょうか・・。
「長い間、ある薬草を探しているんだと言っていた。なんでも、100年に一度しか花を咲かせない植物だとかで、それを使って魔法薬を作るのだと言っていたんだ」
「その魔法薬というのが、変身薬なんだと言うんだ。人間を動物に変えたり、動物を人間にしたり、その薬を使って、彼女は様々なものをいろいろなものに変えてきた」
「そうして、自分の都合にあわせて、必要があれば命令し、使役して自分の手足代わりに使ってきた」
「だけど、ある日、そんな彼らは彼女を裏切ることを覚えた。自由になりたい。命令されるまま、生きるなんて嫌だと、出ていってしまったんだ。あとに残ったのが、たった一羽のカラスだけで、それがお前だったんだ」
「その時、やっと初めて彼女は後悔して、残ったお前だけでももとの姿に戻してやりたいと思うようになった。だけど、その魔法薬を作る植物をよりによってそのお前が枯らしてしまったんだ」
「彼女がお前を石に変えたのは、その植物が花を咲かせる次の百年まで、カラスの姿のままではお前が生きることができないと知っていたからさ。カラスの姿のままで一生を終えるよりはいいと、だから石に変えて、ずっと眠らせていたんだ」
「700年の齢を持つ彼女ももう寿命だった。彼女は最後の願いをこめて魔法薬をかけたこの太鼓を作った。そして、子どもだった俺に頼んだよ。石のカラスをもとの姿に戻してくれと。そうして、今やっと、お前は目覚めることができたんだ」
「じゃあ、おばあさんは?」
「言ったろう? それはもう俺が子供のころの話なんだよ。俺は半信半疑でずっとその太鼓を持っていた。彼女との約束を果たすことは、俺の旅の最後の目標だったんだ」
・・じゃあ、彼女はもういないんだね。やっぱり帰っては来ないんだね。少年は、言葉を飲み込みました。旅人は言いました。
「一緒に来るか? 俺の村へ。ばあさんの墓参りだ」
差し出された手を少年は受け止め、長い間、自分が置き去りにされていた廃屋から外に出ました。
「光がまぶしいや」
長い間、少年を待っていた光、彼はその中へ一歩を踏み出したのでした。
(END)
石のカラス ある☆ふぁるど @ryuetto23
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます