第3話 猫の鳴き声
彼にコンパスを貸して15分くらい経っただろうか。
先生はとっくに円を描き終わり、次の単元へ移っているというのに彼からまだコンパスを返されていない。
不思議に思ってそっと後ろを振り返る。
そこにはいたずらっ子のような笑みでぎゅっと私のコンパスを握りしめる彼がいた。
彼のノートをチラッと見やると円が堂々と胸を張っていた。
え?円描き終わってるじゃん。
じっと彼の瞳を見つめても答えはない。彼が何を考えているかわからない。
仕方ないので小声で声をかける。
"返して?"
彼の方へ手を伸ばす。
そうすると彼は待ってましたとばかりにさらに笑みを浮かべ、言う。
"嫌だ。"
そして彼は窓の方にぷいっと視線を逸らしてしまった。
まるで猫のように気まぐれな彼の態度に私は振り回されている。
でも嫌な気持ちはしない。そんな自分に嫌気がさす。
私には彼氏がいるのに。
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