濁りのない瞳
第2話 濁りのない瞳
翌日、腹が立つほどむさ苦しい教室は地獄と化していた。ただでさえ昨日のことでもやもやしている心の中がまたさらにかき乱されるような感覚だ。黒板に先生がダイナミックに円を描く。ただそんな姿も私はいっさい興味がなかった。
彼の言い分を否定したいわけじゃない。予定が入っていることなんて仕方のないことだ。そうはわかっているけれど自分も友達との遊びの断り文句のように使っている言葉をいざ自分が浴びるとやはり信じられない。
嫌われたのかな…。いつからこうなった?
自問自答する度に彼との日々が走馬灯のように思い出される。近所の祭りに新調した浴衣で行ったり、放課後受験に向けて一緒に勉強したり…。じわじわと目から汗が溢れてきそうになる。出てこようとする嗚咽を必死に堪える。
つんつん。と私の背中をつつかれる感覚を覚えた。
なに?こんなときに。
内心不満を感じつつ、後ろを振り返る。
"なあ、コンパス貸してくんね?"
濁りのないまるで宝石のような瞳は私を吸い込むかのように離さない。
いや、離せない。この瞳から視線を外してしまえば闇の中へ放り込まれるような気がした。
"おーい!大丈夫か?"
彼の呼びかけではっと意識を取り戻す。
"あ、ごめん!ぼーっとしてて。"
取り繕ったような笑顔でコンパスを渡す。
あれ、私なんかおかしい。
教卓の方向を見ながら思いを張り巡らせる。
クラスの男子に興味が全くなく、彼が誰なのか分からなかった。でも彼のことを知りたいと思った。
私は、彼に一瞬にして甘い蜜を全部吸われてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます