蝶を轢く
@mico724
第1話 駆け出す夏
はあ、はあ、はぁ。
愛香は薄汚れた自転車をただ一直線に立ち漕ぎしている。
数分前にいたコンビニでスマートフォンの画面を思わず床に叩きつけそうになった。
''ねぇ、週末会える?"
短い文だがそんな短い文には書ききれないほど複雑な感情を送信した。
会える?ではなくて会いたい。そう送れるものなら送りたい。けれどそんな勇気はなかった。なぜなら私たち二人のメールは1ヶ月沈黙を守っていたのだから。鼓動がどくどくと速くなり、指先が微かに震えるのがわかる。手に汗を握り、彼の答えを待った。
"ごめん。用事ある。また今度な!"
土下座をした顔文字が憎たらしく頭を下げる。心の中のどこかで期待していたのかもしれない。傷ついた。ただひたすらに傷ついた。逃げるようにして私は店内をでて雑に自転車にまたがった。恥ずかしい。消えてしまいたい。どこか行くあてもなくただ自転車を漕いだ。その時だけはこの現実を忘れられる気がした。
眩しい太陽がギラギラと照りつけ、少し離れた道から陽炎が揺れるのが見えた。
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