君に出会えたことが、俺にとっての何よりの宝物♪

☆【長】『レクイエム』作者……鴉さま

※ 主人公がカッコよく変わる、生き様が魅力の作品。また登場人物一覧における紹介文も、必要最低限に抑えてあります。


             『登場人物一覧』


朝霧あさぎり 和彦かずひこ……大手自動車メーカーの『光画舎自動車』に正社員として働く男性で、主人公。アニメ・ゲームが好きなオタクという設定で、眼鏡はかけていない。風が吹けば飛んでいくほどの痩せ型でメタルやロック系の音楽を好む。和彦本人も大学生の時にロックバンドのギター演奏をしていた――いう説明がある。喫煙者。

 また正常な男性・女性が嫌悪感を示すようなアニメや同人誌・漫画などを収集している。築二〇年のアパートで一人暮らしをしており、年収は約四〇〇万円で、アパートの二〇五号室に住んでいる。そこそこの新車を購入できると説明があることから、それなりの貯蓄はあるようだ。

 大学生の時に琴音という彼女がおり、その時にくれた誕生日プレゼント(ipod nano)を今でも大切にしている。また物語が進むにつれて、何故かカラスの姿が多くなる。統合失調症が関係しているのか?


ひいらぎ さき……ボーイズラブ系の小説を好む女性。高校卒業後に五年ほどパート社員として、製菓会社に勤務していた(今は倒産)。『光画舎自動車』への入社が決まったことで、和彦が暮らすアパートの二〇四号室に引越してきた。

 音楽が趣味(高校二年生に始めた)で、学生時代にバンドを組んでいた。仕事の傍らライブ活動も行っており、PVも公開予定。咲の声を聴いた和彦いわく、心が落ち着く綺麗な歌声とのこと。

 しかし同僚(特に女性社員)からは評判が悪いものの、後に正社員登用試験を得て正社員となる。


住田すみだ 健一郎けんいちろう……和彦が勤務する会社の人事担当。近眼を思わせるような黒縁眼鏡をかけており、人選能力がないと和彦から言われている。学生時代に国体にでるほどの空手の腕前。


栗林くりばやし 一平いっぺい……和彦と同期入社で二四歳。今から三年前に知り合った、貴子という女性と付き合っている。元紹介予定派遣社員で、正社員登用試験を得て正社員となった。

 同じ会社の総務部に所属している女性社員、猪瀬 貴子と付き合っている。彼らの仲は良好で、後に職場結婚することも検討している?


榊原さかきばら 美智子みちこ……ヒステリックじみた声の持ち主で、極度の潔癖症。人事部長と付き合っているという噂がある。

 前半はお局的な役回りだが、後半に進むにつれて良い人のように思えるような説明がある。


猪瀬いのせ 貴子たかこ……総務部に所属する長髪長身の女性で、一平の彼女。元紹介派遣予定社員で、正社員登用試験を得て正社員となった。


蓮池はすいけ 琴音ことね……モデルのような長身の女性。和彦の元彼女で経済学部卒業。一八歳~二二歳まで和彦と付き合っていたが、周りからは不釣り合いだと言われていたようだ。

 大学卒業後は医学部の先輩と結婚している。だがそれも親からの指示のようで、本人は不満げ。子宮頚ガンを発症しており、余命は一年。和彦に会いに来たという場面があることから、今でも彼に好意を抱いているようだ。


加治屋かじや 正人まさと……株式会社『PENS』のスカウト担当。和彦と咲がSNSにあげたインディーズ演奏動画に注目した正人が、彼らの演奏と歌唱力に注目し声をかける。


            『特徴・印象に残った点』


一 人並み以上に優れた長所や才能を持っていても、それを活かす機会がなければ無駄になってしまう……と思いました。本人の能力が必要なことはちろんですが、それを開花させるタイミングや機会をはじめ、色んな人脈も必要なのだと考えさせられました。和彦と咲の夢をかなえるサクセスストーリーとして、とても見どころのある物語となっています。

 同時に夢を諦めないことはもちろんですが、仕事とは別の趣味を見つけることの重要性についても、改めて考えてしまいました。


二 一度は諦めかけた音楽に対する情熱を取り戻した和彦と、ひたむきに夢に向かって前を歩き続ける咲の気持ちがつながるまでの流れが、とても面白かったです。最初はどこかぱっとしない和彦が、咲の音楽に対する情熱に触発されるかのように、生きがいと夢を取り戻す場面は必見です。


             『気になった点』


一 生前の琴音がどうして〇〇という力を持っているのか、終始分かりませんでした。統合失調症と結び付けるという点は面白かったのですが、それを踏まえても生前の琴音が謎の力を持つ理由が分かりません。

 仮にこの設定を活かしてストーリーを進めるのであれば、最初から琴音はしている――という形で演出すれば、幽霊となったことでその力を身につけた……という内容の方がまだしっくりくるかなと思います。


二 咲の『光画舎自動車』へ入社後の待遇について、ある疑問点が残りました。

 第一〇話のエピソードの中で、上司の評価が高いことからした――という内容があります。しかしこの時点での咲の入社歴はわずか二カ月ちょっと、かつ入ったばかりの派遣さんがも時給が上がるとはちょっと考えにくいです。

 仮にわずか二カ月ほどで咲の時給が上がるという設定であっても、高く見積もっても数十円が妥当だと思います。


三 作品のジャンルが「現代ドラマ」ではなく、「恋愛」に分類されています。この「月影図書館」におけるジャンルは「現代ドラマ」と限定しているので、その点についてはしっかりと認識して欲しかったと思います。


躁鬱病そううつびょう子宮頚しきゅうけいガンなどの医療用語を中心とする、リアリティある作風が作者さまの作品『レクイエム』の特徴です。ですがこれらの専門用語が登場する場合には、どこかしらに説明文を加えておくと良いと思います。

 特に子宮頚ガンは琴音という女性の命にかかわるほど、本作では重要な意味を持っています。そのため箇条書きほどの配慮があれば、より内容の濃い作品に仕上がります。


双極性障害……精神障害(気分障害)の一種。急にハイテンションになる・判断力の欠如・突然暴力的になる、などの症状がある。薬物療法(精神安定剤や向精神薬などの服用)によって、治療が行われるケースが多い。

 昔は躁鬱病そううつびょうと呼ばれていたが、両極端の症状が起こることを踏まえて、今は双極性障害と呼ばれている。


子宮頚ガン……頚部けいぶと呼ばれる子宮の入り口付近に、ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)――通称「HPV」と呼ばれるウィルスが感染することで発症するガンのこと。代表的な症状として、月経(生理)現象以外における出血・腰や下腹部などに痛みや違和感を感じる――などがあげられる。

 HPVの発症原因の多くは性行為によるもので、以前は三〇代~四〇代の女性に多く発症事例があった。しかしここ近年の医療研究結果によると、二〇代の若年層でも発症するケースが急増していると報告されている。


               『総合評価』


 最初はオタクという身分を隠しながら社会に貢献する物語と思っていましたが、実は和彦と咲の夢をかなえるというサクセスストーリです。夢や向上心を持ち続けることの素晴らしさを、私はこの作品で知ることが出来ました。

 お互いの心に眠る意外な才能に惹かれるという作風も、読んでいてとてもリアリティがある内容だと思います。


       『レクイエム』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885613680

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