懐疑心と妖艶の風が吹き荒れる世界で、少年が手にした未来の行方とは!?

☆ 【長】『慧眼の少女』作者……銀鏡 怜尚さま

※ 本作は『深緋の恵投』という小説のスピンオフ作品です。内容もミステリーではなく、学園ものを意識した現代ドラマ。しかし物語が進むにつれて、ミステリー要素も少しずつ顔を出す、読みごたえのある小説です。

 またミステリー要素を含む内容となっておりますゆえ、『登場人物一覧』『特徴・印象に残った点』などの内容については、必要最低限の情報に抑えてあります。そして自主企画の都合上、『慧眼けいがんの少女』の第一章のみの感想、ならびにご紹介となります。ご了承ください。


慧眼けいがん……に長ける、優れた眼力・思考力のこと。


             『登場人物一覧』


風岡かざおか ひさし……愛知県名古屋市にある、県立止社とめやしろ高校普通科一年G組に在籍する男子高校生。中学一年生のころからラグビー部に所属しており、身長一七五㎝のスポーツマン体型。熱田神宮の伝馬町に住んでいる。入学前から、ラグビー部へ入部することを決めていた模様。(学校説明会時に先輩と顔合わせしていた、という描写あり)。熱田区の白鳥中学出身で、勉強は苦手(テストの成績も下から数えた方が早い)。誕生日は一月三日。

 独特の魅力を持つ桃原 千里とは受験番号が一つ前の生徒だったことから、悠も特別印象に残っていたようだ。勉強はあまり得意ではない(社会科は得意と本人の供述あり)。

 千里と仲良くなった後は、親しみを込めて彼女からは「ヒーくん」と呼ばれている。同様の理由から、千里のことを親しみを込めて「チーちゃん」と呼んでいる。

 なお二人の関係はラグビー部でも話題になっており、少し複雑な心境にある。


桃原ももはら 千里ちさと……愛知県名古屋市にある 県立止社とめやしろ高校普通科一年G組に在籍している女子高校生。生まれつきの赤毛という毛質で、つぶらで大きな瞳・顔の輪郭はシャープで無駄がなくポニーテール。入学後は英語研究部、もしくは弁論部に入る予定。誕生日は一月七日で、愛称はチーちゃん。

 勉強熱心な性格だが社会科は苦手で、覚王山という場所に住んでいる。一学期中間テストで総合成績一位を記録。テスト結果発表後、学内では「赤毛の美女」という異名がつく。


影浦かげうら あきら……愛知県名古屋市にある 県立止社とめやしろ高校普通科一年G組に在籍している男子高校生。体格は痩せ型であるが、背中はどこかたくましいという描写があることから、細マッチョであると思われる。中世的で柔らかい印象を与える顔をしており、美少年と言っても差支えない。身長一八〇㎝で家は名古屋。今のところ部活に入る気はないようで、言葉遣いは丁寧。

 しかし悠が所属するラグビー部の同級生の話によると、瑛は昔かなり素行が悪く出席停止処分を受けたことがある――という噂を聞く。また年頃の高校生でありながら、積極的に友達を作ろうとしない・携帯電話を持っていない――など謎が多く、どこかミステリアスな雰囲気を感じさせる少年。


鵜飼うかい 暢英のぶひで……ラグビー部に所属する一年H組の生徒。悠と同じく、中学時代からのラグビー経験者。瑛と同じ中学出身で、悠へ素行の悪さを教えた張本人。熱田区六番町の六番中学出身。


西本にしもと 建哉けんや……ラグビー部に所属する二年生。ポジションは悠と同じバックスのウイング。


大塚おおつか……ラグビー部の主将。


戸田とだ教諭……ラグビー部の顧問。


金子かねこ教諭……悠・瑛・千里が在籍する、一年G組の担任。


足達あだち女医……瑛が通院している精神科の女医。小柄で細身なスタイルで四三歳の既婚者だが、悠が二〇代と間違えるほどの美貌の持ち主。栗色の髪を綺麗に後ろに束ねており、大きく美しい澄んだ瞳が特徴の女性。非常勤として「大城医療総合センター」に勤めているがだが、本来の勤務先は「あだちメンタルクリニック」という精神科(足達女医本人が開業)。住所は熱田区の西隣の中川区。


※ 精神科と心療内科の違いについて

 いずれも心の問題を扱う診療科で、心理療法(カウンセリング)・薬物療法(精神安定剤の処方)などが主流。明確な違いはあるものの、具体的な違いについてしっかりと認識されていないのが現状。

 精神科は精神疾患(脳の損傷・傷害などによって、日常生活における感情・行動などに変化が生じる)を扱っている。うつ病・不登校・ひきこもり――などの症状を扱う。

 一方の心療内科とは、心身症(身体の疾患)の症状を扱っている。不安や孤独などの増加による、ストレス性胃炎・胃潰瘍いかいよう――などの症状を扱う。


           『特徴・印象に残った点』


一 登場人物をはじめとする、物語の舞台設計(愛知県名古屋市)なども細かく設定されています。まさにリアリティある濃厚な作品と言っても過言ではなく、愛知県や名古屋市の地理に詳しい方なら、より鮮明に世界観を思い浮かべることが出来ます。


二 最初は学園ドラマという和やかな日常を描きながらも、少しずつ謎が浮き彫りになっていき、後に真相解明へ取り組む――という絶妙の演出がされている作品。詳細は伏せますが、個人的に興味を惹かれたのは影浦 瑛とヒロインの桃原 千里です。(ある意味主人公の風岡 悠よりも、この両名は存在感があります)


三 主要人物の悠・瑛・千里はもちろんですが、彼ら以外の人物についても個性豊かです。登場人物作りにおいて無駄がなく、最初から最後まで楽しむことが出来る作者さまの力作です。


四 タグに書かれている「多重人格」というキーワードについて、的確に世界観を表現していると思いました。【二】と内容が一部重複しますが、最初は青春学園ドラマ→学園ミステリーという形に、物語の厚みが少しずつ増していく点もポイントです。


             『気になった点』


一 強いてあげるとすれば、作者さまの名作ミステリー『ミックスベリー 殺人事件』のように、お話の途中に簡単な登場人物紹介・用語補足説明を入れてほしかったと思います。ですが予備知識がなくても十分楽しめる小説ですので、スパイスとして添えてあればさらにベスト――と個人的に思った次第でございます。


              『総合評価』


 作品のタグに「ミステリー」は入っておりませんが、内容は壮大な世界観の学園ドラマミステリーです。読めば読むほど読者を惹きこむ作風が最大の魅力で、二人の視点で物語が進むことによって、読者自身が新たな発見が得られる点もポイントです。

 合わせて『慧眼の少女』はスピンオフ作品(前日譚)となっておりますが、本作だけでも問題なく楽しめる内容です。ですが本作を読み終えた時、自然とシリーズ続編の『深緋ふかきあけ恵投けいとう』も読みたくなること、間違いありません!


 作者さまは普段ミステリー小説をメインに書かれておりますが、その長所が随所本作『慧眼の少女』にも活かされています。ならびに作家 東野圭吾氏の著書をご愛読されているご様子で、納得のいく仕上がりとなっております。

 個人的には『プラチナデータ』という東野氏の作品を、SFミステリー→青春学園ドラマミステリーという形に、作者さまがアレンジした作品だと思いました(個人的な解釈です)。


 さらに(一) サミュエル・L・ジャクソン氏主演『交渉人』(物語の途中で主人公が〇〇の立場になってしまう点) (二) ケビン・スペイシー氏主演『ユージュアル・サスペクツ』(まさか〇〇が〇〇だったとは……という驚きの連続) (三) レオナルド・ディカプリオ氏とトム・ハンクス氏共演の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(二人の真意を探る心理戦)――などの映画にも似ている部分があると思います。

(古い映画ばかりですみません)


慧眼けいがん少女しょうじょ』(『深緋の恵投』のスピンオフ作品)

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154963954


深緋ふかきあけ恵投けいとう』(本格医療ミステリー)

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154878005

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