大切な人の声にもう一度……耳を傾けてみませんか?

☆ 【短】『青い最期』作者……ねるさま

              『登場人物一覧』


美由紀……今作の主人公で、高校入学を控えた女子学生。だが中学校の同級生 春妃kからいじめを受けており、彼女と同じ高校へ通わなければならない現状に心を痛めている。


美由紀の母……主人公 美由紀の母。母親に関する具体的な描写がないことから、ごく普通の主婦もしくはOLと思われる。娘の美由紀が春妃からいじめを受けている事実を知らない。さらに春妃が美由紀の二人が、中学時代からの親友であると思っている。そのため美由紀がいじめを受けている事実を、母親は知らない。


小野寺 春妃……中学時代からの美由紀の親友。美由紀の母をはじめとする大人の前では、良い女の子を演じている。だがそれは仮の姿で、学校では美由紀をいじめている。しかもその理由が、自分より美由紀の方が勉強が出来るという、理不尽極まりないもの。


           『特徴・印象に残った点』


一 近年社会問題になりつつある「いじめ」の実態について、被害者の視点を中心に表現した作品です。短編ながらもその生々しさが書かれており、問題の本筋もしっかりと書かれていました。


二 作者さまは『青い最期』を短編小説として発表しておりますが、この世界観をテーマにした中編・長編小説も書くと、さらに内容の濃い作品になると思いました。面白い作品というよりも作風なので、もっと多くの方に知られて欲しい小説ですね。


三 『青い最期』というタイトルが持つ意味を、作者さまはしっかりと意識されているなと思いました。このという言葉が持つ意味として、「死を感じる間際」「命が尽きる瞬間」などがあります。

 それがお話の終盤で見た世界――美由紀の視界一面に広がる青い空模様です。お話の中で最も重要なシーンであると同時に、一瞬の時間でもあります。

 数秒前後に過ぎない一瞬とも呼べる時間を、『青い最期』という言葉に例えた作者さまのセンスは素晴らしいです。


              『気になった点』


一 春妃がどうして美由紀と同じ高校に通うのか、その辺りの情景描写をもう少し加えてほしかったと思います。私がそう疑問に感じた点は、下記へまとめました。


(a) 美由紀が進学する予定の高校を、春妃はどのような形で知ったのでしょうか? 仲の良い同級生は違う高校へ行くことから、中高一貫校ではないと思います。そして湿を感じさせる描写があったので、わざわざ美由紀が春妃へ進学する予定の高校を話す必要はないと思うですが……


(b) (a)と一部重複する内容ですが、美由紀の学力や偏差値なら春妃の手が届かない高校へ進学することも可能だったのではないでしょうか? 作中では春妃よりもと説明しているので、偏差値の高い高校進学に進むことも美由紀なら可能だと思います。

 物語の中で春妃の権力を匂わせる描写が書かれていたので、(a)(b)における問題もすべてお金などで解決したのでしょうか?


二 作品のキャッチコピーを書かれていない点は、非常にもったいないと思いました。キャッチコピーは読者の興味を集める「表紙」のような役割があるので、その点はご検討されてはいかがでしょうか?


              『総合評価』


 『気になる点』で触れた個人的な疑問点は残りますが、それを踏まえても「いじめ」問題における被害者の心理が、しっかりと伝わってくる作品です。テレビで「いじめ」問題についての話題が出た時に、被害者は今作のような気持ちだったのかな……と客観的ではありますが、感じ取ることが出来ました。

 そして周りに相談したくでも出来ない苦悩についても、心を打たれるものがありました。短編小説を中心に書かれているようで、そのスキルや特徴が存分に活かされている作品です。


              『青い最期』

     https://kakuyomu.jp/works/1177354054887076898

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