通り魔

勝利だギューちゃん

第1話

テレビを見ていた、

通り魔事件が起きたらしい。

この付近だ。


被害者は若い女性。

先日は、中年の男性が犠牲となった。

他多数・・・

なりふり構わないらしい。


「あんたも、気をつけなさいよ」

「ああ」

俺は、そう答えた。


口先だけなのはわかってた。

俺は、両親からも世間からもうとまれているので、

「あいつが死ねばよかった」

そう思っているだろう。

俺は思った。

「心配しなくても、その願いは叶うよ。」と・・・


そして、次の日。

俺は通り魔の出た付近を歩いていた。

まだ捕まっていないので、遭遇するだろう。


そして、出くわした。

通り魔は、意外にも女性だった。

しかも、若い。


若い女性なら、みんな油断するだろう。

そこをついたのだな。


相手は刃物を持って襲ってきた。

でも、俺は逃げない。

その場で立ちつくした。


俺の平然な態度が意外に見えたのか?

通り魔は、言葉を掛けてきた。

「あんた、逃げないの?」

「ああ」

「どうして?」

「それが、世間の願いだからだ」

「願い?」

「周りは俺の死を望んでいるからな」

「どうしてそう思うの?」

「あんたと同じだよ。通り魔さん」

通り魔は、刃物を下げた。


「怖くない?」

「怖くないと言えば、ウソになるな・・・だが・・・」

「だが?」

「一番怖いのは、あんたより世間だな」

「世間?」

「自分さえ無事なら、所詮は他人事だ。」

そうだ。幽霊よりも生きた人間の方が怖い。


「じゃあ、私は今からあなたを殺す。」

「ああ、そうしてくれ」

「不思議ね。」

「えっ?」

「でも、その前に・・・」

通り魔は、スマホを取りだしてどこかに連絡した。


「すいません。警察ですか?今例の通り魔を、先日の付近で、

見かけたので、すぐ来て下さい。」

そう言って、スマホを切った。

(いたずらと思い、来るはずなかろうに・・・)

「じぁあ、遠慮なく・・・殺るわよ」

そういって、通り魔は刃物を突き刺してきた。


その時、警察がやってきて、その若い通り魔は連行された。

警官は、俺に近寄ってきて、

「怪我はありませんか?」

声を掛けてきた。


本当に来たのか?物好きだなと思った。


俺は依然、警察に、「自分の身は自分で守れ!」と、

怒鳴り散らされた事がある。

なので、警察が嫌いになった。


数日後、その通り魔から面会に来てほしいとの連絡があり、

俺は警察に行った。

全てを自供したようだ。

ただ、自分から連絡したことは言わなかったようだ。


俺は、彼女は自分で連絡したことを話したが、彼女は否定した。


「あなたは不思議ね」

「何が?」

「自分から殺されてもいいというなんて」

「あの時、話した通りだよ」

「でも、嘘をつかないでくれる?

「なぜ、嘘とわかる?」

しばらくして、彼女は答えた。


「あなたはまだ、生気を失っていない。そういう目をしてる。

もちろん今も・・・」

「えっ?」

「だから、生きて・・・お願い」


その通り魔は、長い刑務所暮らしなるようだ。

それまでの間、俺は彼女の面会に行くことにした。


俺と話している時の彼女は、もう別人となっていた。

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通り魔 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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