第460話 激烈のチート・ブースト10000倍

「なっ、10000倍……だと……!? いきなり桁がぶっとびすぎだろ!?」


 そりゃ全チートで13万5千もあるんだから、10000万倍できても不思議ではないんだけど、さすがに限度ってもんがあるだろう!?


「つまり短期決戦、一気に勝負を決めに来たってことか――!」

 でも10000倍なんていう急激すぎる超ブーストだ。

 自分でも言っていたけれど、それじゃあケンセーの身体は持たないぞ――。


 そんな風に戦況分析をし終えた瞬間だった。

 ケンセーの姿が一瞬にして俺の視界から消え失せたのは――!


 『剣聖』の直感がヤバいと判じた時には既に、俺のふところ深くにケンセーが潜り込んでいて――!


「な――っ!?」

 速い――っっ!!


 超速の踏み込みから間髪入れずにケンセーが放った強烈な膝蹴りを、


「こなくそ、なめんな――っ!」


 俺はぎりぎりで引き戻すことができた《2年S組の剣おたまブレード》で受け止めた――がしかし。

 受け止めた接点からズシンと、ダンプカーにでも突っ込まれたのかと思うような、身体ごと浮き上がりそうになるほどの強烈な衝撃が襲ってくる。


「速い上に、めっぽう重い――っ! くっこの、けど今度はこっちの番――って居ない!?」


 瞬間――真後ろから飛んできたハイキックを、俺は風切り音だけを頼りに、前方に身体を投げ出すように跳び込んで回避した。


 勢いそのまま前回り受け身をして立ち上がると、即座に振り向いて《2年S組の剣おたまブレード》を構える。


「このっ、いつの間に後ろに――」


 だがしかしそうやって構えたにもかかわらず、またしても視線の先にはケンセーの姿が存在しないのだ――!


「バカな、『剣聖』の認識速度を完全に上回っているだと!?」


 『剣聖』がまったく動きを追えていない……!

 完全に見失っている……っ!


 それでもどうにか防御・回避できているのは、さすがは『剣聖』といったところか。


 視界から消えた=死角にいる。

 さらに風切り音の位置と速さで、ケンセーの狙いと攻撃の種類を推測して、全く攻撃が見えていないのに経験則だけで回避してみせたのだ。


 戦闘系最強チート『剣聖』に相応しいまさに神業だった――しかし。


「ねぇねぇ、さっきからどこ見てるのセーヤくん、私はここだよ?」


 すぐ右横からケンセーの声がしたかと思うと、


「――っ!?」

 同時に耳の付け根から首筋を下がるように指でツーっと優しくなぞられたのだ。

 すぐに右に振り向きかけて――、


「ちがうよほら、こっちこっち。もうセーヤくんたら、私のことちゃんと見てよね? ほんとイケズなんだから」

「なっ、左だと――!?」


 しかし即座に俺のすぐ左から――正反対の場所からケンセーの声が聞こえてきて――、


「イケズなセーヤくんには、お仕置きをするね?」

「く――っ!」


 慌てて跳び退すさろうとしたものの、時すでに遅し。


「ぐぅ、がハ――――ッ!」


 俺の鳩尾みぞおちに、ケンセーの放った強烈なミドルキックがさく裂していた。

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