第452話 ふんがー!

 スポーツチャンバラ用のエアーソフト剣に代わる、戦うための武器が欲しい――。

 そんな俺の痛切な願いに応えたのは、


「こなくそぉーっ! うおりゃー! ふんがー!! 無敵バリアー!!」

 突如として大きな声を張り上げたミロノヴィーナスちゃんだった。


 「ふんがー!」なんて言うオシャレなモデル系スーパー美少女にあるまじき掛け声とともに、ずっとうつむいたままだったミロノヴィーナスちゃんが、ケンセーのかけた金縛りを打ち破ったのだ――!


 あと無敵バリアってすごく懐かしいんだけど。

 あれかな、ミロノヴィーナスちゃんは小学生のころ男子に混じって遊んでたタイプなのかな?


 いやチートだからもちろん小学生時代なんてものはないわけで、あくまでイメージ的なものというか、

「みんなのリーダー的な可愛い女の子と仲良く鬼ごっことかケイドロとかして遊びたかったなぁ……」

 と、己の幼少時代を切なく思い出しちゃった俺だった。


 俺がなんとなく子供時代に思いをはせていた時、


「うそ――っ!? 私の命令をリジェクトしたの!?」

 上位チートによる強制力をはねのけられて驚くケンセーを尻目に、ミロノヴィーナスちゃんはふんすと鼻息も荒く俺のところへ駆け寄ってくると、


「セーヤくん、私を使って!」

 言って俺の手をぎゅっと握ってきたのだ。


 するとなんということだろうか!


 その言葉とともにミロノヴィーナスちゃんがピカーっと光りだして、さらに衣服が勝手にビリリーって破れだしたと思ったら光の粒子になって消えて、つまり全裸になってしまったのだ!


 それは例えるなら、魔法少女が変身する時の全裸バンクシーンのようで――、


「ちょ!? えぇっ!? なんだってぇー!!??」


 いきなり唐突に始まったえっちな超展開に、俺は一瞬たりとも目が離せないでいた。


 それもそのはず、


「な、なんてことだ! うまいこと『謎の光』が仕事してるせいで、すぐ目の前にいるのに先っちょとかの大切なところがちっとも見えないなんて!?」

 まさかの全年齢向け小さなおともだち仕様だったからだ!


「いやしかしここはアニメのような二次元ではなく三次元……! 見る角度を変えればもしかしたらワンチャン……!」


 強い性的欲求――もとい高度な学術的好奇心に突き動かされた真実を探求してやまない真理の探究者・麻奈志漏まなしろ誠也くんは、この未知なる現象をより深く検証するべく首を伸ばしておっぱいを上から覗き込んでみたんだけれど、


「くっ、視線に合わせて『謎の光』も位置を変えて見えないようにブロックしてくるだと!?」


「セーヤくんはほんとにブレないね……」

 同じくあっけに取られていたケンセーから、ちょっと生暖かいツッコミが入ったけれど、ふむ、そういえば今はそれどころじゃないんだった。


 真理の探究はとりあえず横に置いておくとして。


「えっと、ミロノヴィーナスちゃんを使うってそれはどういう意味なんだ?」

「私を使って――私のエネルギーを使って、チート剣を創造つくるってことだよ」


「チート剣――?」

「私たちチートは元々エネルギー体でしょ? 本当の身体があるわけじゃない。だからエネルギー体に戻った私を使って、チートエネルギーでできた剣を作るの! そうすれば『剣聖』は本来の力を発揮できるでしょ?」


「――っ!」

 そういうことか――!


「ううん、私だけじゃない、2年S組のみんなの力を使うの。うちのクラスのみんなはケンセーの完全な支配下にはないから、みんなのエネルギーを使ってチート剣を作るの! クラスみんな、S級チートの力を集めてできたチート剣なら、今のケンセーとだって戦えるはずだから――!」

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