第344話 老鬼、再び
俺が知覚系S級チート『龍眼』によって気配を察知した直後。
俺たちから少し離れた場所に、急に影のような、黒い水たまりのようなものができたかと思うと、そこから、
にゅうっ――、
と、
「よっ、また会ったな鬼のじいさん。えっと《剣の魔将》グレンでいいんだよな?」
軽く手をあげて声をかけた俺に、
「その余裕……なるほど。不意を突いたつもりが、まんまとこちらがおびき出されたというわけか、《
グレンはわずかに苦笑いを含ませたような表情を見せながら答えた。
「実際のところ、余裕ってほどでもないんだけどな。一応、戦うための準備はしてたけど」
事実、昨日の戦いでは圧倒されてしまって、あわや負ける寸前だったわけで。
「どうもティモテを狙ってるみたいだったからさ。またすぐ来るみたいなこと言ってたから、人気のないところに出てきてみたんだけど。どうやらビンゴだったみたいだな」
誘ってみたら来るかな? くらいの軽いもので、本来の目的はあくまでティモテの視察のつきそいだったうえに、最後はほとんどデート気分で、子猫ちゃんのファインアシストもあって抱き合ったりしてたんだけど。
そこはもちろん内緒である。
俺はクールでカッコイイ、なんでも見通してる頼れる大人の男・
「あの、マナシロさん――」
「ごめんなティモテ。ちょうどいい機会だったから、ちょっとだけティモテのことを利用させてもらったんだ」
ちょっととはいえティモテを利用してしまったことは事実なわけで。
だというのに、ばつが悪くてごめんなさいした俺の言葉を、
「そんな、マナシロさんが謝る必要はありません! だって悪いのは狙われてる私なんですから――」
ティモテはぶんぶん顔を振ると、自分が悪いと言って否定してしまうのだ。
まったく――、
「ティモテ、狙われてる女の子が悪いわけないだろ? 大丈夫、悪いのは文句なしにあの鬼のじいさんだ。なーに、俺が今から諸悪の根源たるあいつをボコってやるから、そこで安心して待っててくれな」
言いながら俺はティモテの頭を優しくなでてあげる。
女の子をほわっとさせるラブコメ系A級チート『頭ぽんぽん』が発動し、ティモテが嬉しそうに上目づかいになりながら頬を染めた。
うんうん、可愛いね。
可愛い女の子は大正義だよ。
そして男の子は、可愛い女の子のためならムチャもメチャもハチャメチャだってできるものなのだ。
「ってわけで《剣の魔将》グレン! 俺は今から可愛くないあんたをぶっ倒す! 覚悟しやがれ!」
俺は人差し指を一度、天に向けて突き上げると、
ビシィッッ!
トリックを解き明かし、今まさに犯人を白昼のもとに引きずり出さんとする探偵のごとく、力いっぱい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます