第345話 鬼門遁行
「いやはや、なかなかどうして。剣の腕だけではなく、知恵のほうも回るようだ。部下に欲しいくらいだ」
「秒で遠慮させてもらうよ。俺はあんたみたいなじいさんの下で働くよりも、可愛い女の子と一緒にいるほうが好きだからな」
「ふむ……ダークエルフは美人ぞろいだぞ? 来るか?」
「えっ!? ダークエルフ!? 美人ぞろい!? マジで!?」
なにその突然の魅惑の提案!?
ダークエルフっていうのは、エルフだけど巫女エルフちゃんとは全然違う感じなのかな!?
遠縁の親戚みたいな?
ちょ、ちょっと見てみたいかも……。
「あの、マナシロさん……」
グレンの意表を突いた甘言に思わず動きを止めてしまった俺の脇腹を、ティモテがちょんちょんと可愛らしくつついてきた。
「――はっ!? な、な、なーんてね?? ふん! 馬鹿め! そんなものでこの俺をどうこうできるとでも思ったか!!」
くっ、女の子を使って俺を
「なに、冗談には冗談で返したまでよ」
くっ、冗談だと!?
この野郎!
えっちなお姉さん(に違いない)ダークエルフを餌に、純情可憐な童貞の心をもてあそぶとは……本気で許さん!
――いやいや落ち着け、落ち着くんだ
こいつは不意打ちできずにつかめなかったペースを、取り戻そうとしているんだ。
そうだ。
今はうまく誘い出したこっちのほうが精神的に有利なんだ。
だからダークエルフの件はボコった後に必ず聞き出すとして、まずはペースを乱されないことを意識しながら話を進めよう。
「ところでなんだよさっきの。いきなり黒い水たまりができたと思ったら、そこからいきなり出てきて。あれはちょっとビビったぞ?」
あんな技があったんなら、そりゃSS級のシロガネの警戒網だって簡単に突破されるよな。
「あれは『
「瞬間移動みたいなもんか。鬼ってすげーんだな。っていうかそんなあっさりネタバラししちゃっていいのかよ?」
「なに、構わんさ。それにどうせその右目は、これくらいは見抜いておるのだろう?」
「ま、否定はしないかな」
グレンの言う通り、俺の右目は今、知覚系S級チート『龍眼』によって、金色に怪しく
その『龍眼』が教えてくれる。
「細かい場所の指定はできなそうだな。もしできたんなら、それでティモテを直接狙えば簡単に終わるもんな。ああそうか。ってことは、本来は離れた場所に一気に逃げるための技、ってとこか? 相手の後ろに瞬時に回り込む、みたいな便利な使い方もできないっぽいな」
「おおむね正解だ。魔眼――いや龍の眼か。どちらにせよ、よく視える目を持っているようだ」
「『龍眼』以外にも他にもいろいろ持ってるかもよ?」
言って俺は不敵に笑って見せる。
「なら見せてみるがよい。人族の若き剣士よ――!」
言葉とともに、瞬時に抜刀したグレンは一気に加速して踏み込むと、
「フン――っ!」
風切り音とともに強烈な横なぎを放ってきた――!
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