第317話 これはただの肉棒であって、他意のある肉棒というわけではない

「ありがとうございます、マナシロさん」


 俺の強い熱意を受けて奢ってもらうことを了承したティモテは、


「それではお言葉に甘えて――」


 今ちょうど目の前の露店で焼きあがったばかりの、ビッグサイズ・フランクフルトを迷うことなくチョイスした。


 チョイスしたんだけれど――、


「すみません、この大きくてテカテカした肉棒を1つください」


 なんてことを、にっこり笑いながら言っちゃったのだ!


「に、肉棒っ!? 大きくてテカテカした!?」


「あれ? 肉の棒に見えたんですが、違ってましたか? 実はそう見えるだけで、ほんとはお芋スティックだったりですか?」


「いや肉の棒であってるよ、あってるんだけどね……!?」


 問題はそこではないというか!?

 なぜ敢えてその単語と形容詞を選んだ的な!?


「ですよね、合ってますよね。実は私、見たことはあったんですけど、食べたことはなくて。ちょうど焼きあがったのが見えて、とても食欲をそそるいい匂いがして。運命的と言いますか、誇らしげにそびえたつつややかな、これは実に美味しそうな肉棒だなと思いまして」


 だからさっきからなんでそんな表現方法を!?


 敬虔なシスターちゃんは、実はいやらしい欲求が不満しちゃってるの!?

 マリア=セレシア教会・夜の部(上級会員限定)とかで大活躍しちゃったりしてるの!?

 

 ティモテの爆弾発言に、露天のおっちゃんもぎょっと――いやすごく自然な営業スマイルを保っていた。


 すごいなおっちゃん、どんな相手だろうと何を言われようと、それが客なら笑顔で対応。

 客商売のかがみだよ。


「いやでもそうだよな。これはただの肉棒であって、他意のある肉棒というわけではないもんな」

「?」


 うん、そうだよ。

 肉の棒だから肉棒、まったくもって間違ってないよね!


 「美味しそうな肉棒」だの「テカテカした肉棒」だの聞いて別の卑猥なものを想像してしまったのは、単に俺の心が穢れてしまっているだけなんだ……!

 ティモテは悪くない!


 静まり返った夜の教会で、肉棒を美味しそうにほおばるエロコスシスターさん。

 ふぅ、やれやれ。

 いけない想像がはかどってしまうよ。


 なんて不遜なことを考えていた時だった。

 本当の事件が起こったのは――。



「はふっ、あふいでふ」


 爆弾発言をしたことに気付いていないのか、ティモテははふはふしながらビッグな肉棒にかぶりついたんだけど、


「ふぅ、ん、あふ……」


 ティモテの小さなお口にはきつきつなビッグサイズなのと、焼き立てで熱いせいで、肉棒初心者のティモテはなかなかうまく食べられなかったのだ。


 そして巨大な肉棒を咥えてもごもごしていたティモテは、とりあえずいったん噛み切ろうとしたんだけれど――、


「ふぁ――っ!」


 意図した場所でなくそのちょっと先で、肉棒がポキッと折れてしまったのだ。

 そしてその折れたところからから――、


 ぴゅっ! ぴゅっ!

 ぴゅる! びゅっ!!


 勢いよく飛び出した肉汁が、無垢な少女の鼻頭や頬をどろりと汚してしまったのだ!


 大事なことだからもっかい言うよ!?


 巨大な肉棒から発射された濃厚な液体が、びゅっ!びゅっ!ってティモテの可愛いお顔をどろりと汚しちゃったんだヨーソロ!


「あ、あふい……それにすごくふほふ濃厚ほーほーへほほの匂いで……」


 中折れした巨大な肉棒を口いっぱいに咥えたまま&飛び散った肉汁で顔を汚したまま、そう呟いたティモテは――、


「ご、ごくり……」


 なんかもう、えっちなあれこれした後にしか見えないのだった。

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