第318話 あらこんなところに精霊さんが
「あーもう! アンタは何をぐずぐずしてんのよ! 女の子の顔はプライスレス! ゴールドやダイヤモンドよりも大切なんだからね!」
濃厚な肉汁で
「――ってわけでアタシ参上!」
いつの間にか、どこかに飛んでいったはずの精霊さんが戻ってきていた。
戻ってきていたっていうか――、
「この狙いすましたかのようなタイミング……さては精霊さん、こっそり隠れて俺たちのことを覗き見していたな?」
「年頃の男女の自然なコミュニケーションを見てみたかったのよね!」
俺の指摘に対して、それはもうあっさりと白状する精霊さん。
「くっ、この精霊ときたら覗き見していたことを謝るどころか、開き直りすらしないで、さらっと悪びれる様子もなく素で認めやがった……」
「アタシは裏表のない精霊だからね! いつも言ってるでしょ?」
「やったのは
「それにほら、男と女がいれば子供が生まれるかもしれないし」
「そんなすぐに子供は生まれねーよ、
「なにって、女の子をいっぱいはべらせてハーレム作ってる女好きでしょ? 巫女エルフたちと楽しそうにお触りして遊んでるの見たし?」
「…………」
くぅっ!
パワー回復プログラムのアレ、精霊さんも見てたのか……!
この話題は圧倒的に俺に不利!
であれば、
「……うんまぁそれはいいや。話を戻そう、ね? ねね?」
俺は超強引に話を戻した……戻すしかなかった。
だってこのままではティモテにあらぬチャラ男疑惑を持たれてしまう……俺はまだ生粋の童貞なのに……!
「……それで、『アタシの出番』ってからにはうまく汚れを落とせるんだよな?」
「ふふん、まぁちょっとそこで見てなさい! とりゃっ、水系精霊術! 『
精霊さんの掛け声とともに、ティモテの顔の汚れた部分を水の泡がぶわーって次々と包みこむと、少ししてから
「どーんなもんよ!」
「すっかり綺麗になりました……!」
ティモテが頬をぺたぺた触りながらびっくりした顔をした。
「つまりね、アルカリ化したバブルが汚れを浮き上がらせて、そのまま泡で包み込んで分解しながら隔離して、綺麗にしたってわけ!」
精霊さんがどや顔でそういった。
「ぶっちゃけ理論はわかんないんだけどさ。地味に便利だよな精霊術……っていうか何でもありだな精霊術……」
「技術は改良することで、その寿命を大きく伸ばしてあげられるのよ!」
意識が高い&マルチな精霊さんに俺が珍しく感心していると――、
「やっ、セーヤ。久しぶり――ってほどでもないかな?」
横合いから不意に声をかけられた。
その声というのは――、
「ナイア! こっちに戻ってたのか! それにクリスさんも!」
そこにいたのは帝都で別れた《
「セーヤ、元気そうでなによりだ」
「ナイアは……ちょっと疲れてる感じがするかな?」
「なにせたった今、帝都から戻ったばかりだからね。多少はね」
「それはお疲れさまだな……」
そんな感じでナイアとは普通の会話をしたんだけれど――、
「いやはや、
「えっと、あ、はい……」
クリスさんは再開して早々、強烈すぎるジャブを放ってきたのだった。
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