第264話 S級チート『竜騎士』

「さぁ、行こうか――!」

 俺が意気揚々と《神焉竜しんえんりゅう》の背中へと乗りこむと、


「行くのじゃ! 初めての共同作業なのじゃ!」

 《神焉竜しんえんりゅう》もウッキウキでそれに答えた。


 俺をのせたまま、すぐに《精霊神竜》の待つ空の上へとぐんぐんとスピードを上げて飛び上がっていく。


 それに振り落とされないように、なにより《神焉竜しんえんりゅう》と共に戦うために――、


「S級チート『竜騎士リュウナイト』発動!」

 俺はドラゴンと心を通わせ、ドラゴンと絆を結び、そしてドラゴンとともに戦うための騎乗系S級チートを発動した――!


 発動と同時に、まるでドラゴンに騎乗することが当たり前であるかのように、竜の乗り手としての熟練の感覚が、俺の身体中に広がってゆく――!


「正直、このチートを使うことになるとは思ってもみなかったんだけど――いいな、これ!」


 そもそもこのチートはドラゴンと出会わないと、使う機会すらないわけで。

 そして異世界転生で可愛い女の子たちがいっぱいのモテモテハーレムの主になりたかっただけの俺に、ドラゴンと進んでドンパチするようなモチベーションはなかったわけで。


「それが何の因果か最強のドラゴンと、こうして一緒に空を飛んでいるんだから……」

 人生ほんと分からないもんだな……。

 なんとも感慨深い俺だった。


「では主様ぬしさま、戦闘機動を行うのじゃ。少々荒っぽく飛ぶのじゃが、もちろんこれくらいで振り落とされては困るのじゃぞ――?」


 言って右に左に上に下にと、急激に軌道を変えることで俺の騎乗スキルを確かめはじめた《神焉竜しんえんりゅう》。


 しかし当の俺はというと、


「おいおい、手加減しすぎじゃないか? まだまだもっといけるぜ? ま、こうやって気を使ってくれる優しい女の子は嫌いじゃないけどさ」


 振り落とされるどころか――余裕綽々で《神焉竜しんえんりゅう》に更なる高機動を要求していた――!


 さすが『竜騎士リュウナイト』はS級チート、その性能は伊達じゃない!


「ほんに凄いのじゃ主様ぬしさまは! 圧倒的な強さに加えて、ドラゴンを乗りこなす才覚までも持ち合わせているとは! 主様ぬしさまと出会ってからわらわは驚かされてばかりなのじゃ――!」


「だからさっきいい案があるって言っただろ? 納得したか?」


「いい案すぎるのじゃ! 納得も納得、大納得なのじゃ! 初めての共同作業というだけでなく、主様ぬしさまの凄さを誰よりも間近で見られて……わらわは天にも昇る思いなのじゃ!」


「まさに天に向かって昇ってる最中だけどな」

「全くなのじゃ!」


 俺の騎竜スキルの高さを理解した《神焉竜しんえんりゅう》は――、


「それ! なのじゃ!」


 ジェットコースターのループのように、スピードを落とさずにぐるっと縦に一回転。

 さらに途中で2度、3度の捻りを入れてくるものの、


「たーのしーっ!」

 俺が振り落とされる――なんてことは微粒子レベルですら存在しない。


「「「「わぁーーーーっ!」」」」


 地上でずっと成り行きを見守っていたウヅキ、ハヅキ、トワ、巫女エルフちゃんからも、大きな歓声が上がった。


 それに俺は軽く手を振ることで応える。


 竜に乗って空を飛び、女の子たちから口々に賞賛される――。

 間違いない、今の俺は最っ高に輝いているぞ!


 この圧倒的モテ感……やっぱり、異世界転生は最高だな!



 こうして――。

 ついに《神滅覇王しんめつはおう》が戦場へと――《精霊神竜》の待つ天空の闘技場へと降り立ったのだった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る