第180話 日本の教育理念 is good for 異世界転生
嵐のようにまくしたて、風のように去っていったサーシャをなすすべなく見送り、一人取り残された俺は、
「そういや今日は天気がいいから、布団を日干ししてたよな……」
ということを思いだしたので、
「まずは軽く掃き掃除して、と……」
部屋を簡単にほうきで掃いてから、
「布団とりこんどくなー」
「セーヤさん、ありがとうございます~」
料理をしているウヅキに一声かけて、布団を取り込んでいく。
「料理中の女の子に声をかけて布団を取り込む。お互い進んで家事を分担する初々しい新婚カップル感があって、うん、実にいいな……!」
幸せでお腹いっぱいご馳走さま! なラブコメ系A級チート『お布団入れとくなー』も発動し、俺はとてもいい気分になることができたのだった。
そして掃除と言えば、
「掃除機を使わないのにも意外とすぐに慣れたよな……」
これは思うに、子供のころに学校教育の一環として毎日のように掃除の時間があったからじゃないだろうか。
海外では生徒による掃除という概念そのものがなく、専門業者が掃除をするのが一般的らしい。
「それもこれも俺が日本で育ったおかげってわけだ。言ってみれば日本の教育理念は異世界転生のためだった、ってことだよな。ありがとう日本! ありがとう文科省! 今、異世界でその素晴らしい教育方針が見事に花開いているところだからな!」
俺はもう二度と帰ることはないであろう――しかし確かに俺を育ててくれた祖国に感謝の想いと言葉を捧げたのだった。
そうして、掃除と布団の取り入れが終わった頃。
「うにゅ、ただいま」
「帰ったのじゃー」
玄関口から帰宅を告げる二人の声がして、
「まなしー、ただいま」
まずはハヅキが入ってきた。
とてとてと可愛らしい足取りでやってくると、そのまま俺にギュッと抱き着いてくる。
まったく、なんでもないところでもすぐにこうやって甘えてくるんだから。
ほんともうハヅキは甘えんぼさんで可愛いなぁ……!
ハヅキのあたまをなでなでしながら、完全に腑抜けていた俺は――、
「まなしー、ひと、ひろった」
「んー? なにを拾ったって?」
だから最初、ハヅキが告げた言葉の意味をよく理解することができなかったのだった。
「もりで、ひと、ひろった」
「んー? ヒトって、なんだ……?」
ハヅキは言葉を繰り返すものの、イマイチ要領を得ることができない俺。
ひと、ヒト、火と、ヒート、ヒット、人……、
「あ、そっかー。森で人を拾ったのかー」
「うにゅ、そう」
そうかそうか、森で人を拾ったかぁ。
って、
「…………ん?」
なにかおかしくないか?
「森で? 人を? 拾った?」
「うにゅ、そう」
「森で、人を、拾った……」
「うにゅ」
「森で、人を……『拾った』!?」
「うにゅにゅ?」
いや、え?
人を拾ったって、え……!?
「あの、ハヅキ、それはどういう意味……」
ハヅキに真意を確かめようとしたところで、
「
今度は《
そして――、
「
言って、《
「うにゅ、このひと、ひろった」
意識を失ってピクリともしない、一人の幼い少女だったのだ――!
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