第179話 はっ!? わたくし、今キュピーンと閃きましたわ!
「どうだ上手いだろ? 身内びいきを抜きにしても、ハヅキにはなかなか絵の才能があるんじゃないかと思ってるんだけど」
うんうんとしたり顔でうなずく俺は、我が子を自慢する親ばかを全開で丸出しだった。
「ウヅキは一応下着を付けてますのに、セーヤ様は全裸なのですわね」
ハヅキの絵の中に描かれた俺は、我が息子を自慢するかのように丸出しで全開だった。
「まぁそれは色々あってね……。それよりほら、とてもクレヨンで描いたとは思えない才能を感じる――」
「才能!?」
サーシャが大きな声とともに、くわっと目を見開いて俺の言葉をかき消した。
おう、思わずビクッとしちゃったじゃないか……、やめてよね、もう。
「これは、これはそんなものではありませんわ――!」
「さ、サーシャ?」
「わたくし、幼い頃より数多の芸術作品に触れ、一流のなんたるかを学んでまいりましたの。その感性が告げておりますわ! これは才能なんて陳腐な言葉では形容できない、これはそう、言うなれば神域に踏み込んだ神の御業であると……!」
「またまたそんな大げさな――」
「これが大げさにせずにいられますの!?」
「あ、はい」
怒られてしまった……。
「失礼しましたわ、つい入れ込んでしまいましたの……。で、ですが、これはすぐに持ち帰って専門家に鑑定を依頼しなくては……!」
「だからそんな大げさな。確かに文句なしに上手いけど、子供が描いたもんだぞ――」
「はっ!? わたくし、今キュピーンと閃きましたわ! ビビっとインスピレーションが降りてきたのですわ!」
「なぁ、あの、俺の話を聞いて――」
「『《
サーシャがぽつりとつぶやいた。
「え? なんだって?」
ディスペル系S級チート『え? なんだって?』が暴発し、因果を断絶して結果をなかったことにする。
もちろん特になにが起こるわけでもなく、そのあまりにアレすぎる名前をもう一回聞かされるだけなんだけど――、
「『《
「は――?」
お前はいったいなにを言って――、
「この
「ちょ、ちょっと待って――」
「いえ、待ちませんの! ……いえ、そうですわね。はい、確かにセーヤ様のいうこともいちいちもっともですの」
「珍しく分かってくれたか! そうだ、まずは落ち着いて話を整理して――」
「確かにそうですわ、『《
「ん、んんっ……?」
なにかちょっと方向性がずれているような……?
「『《
「え? なんだ――」
「『《
「高まりすぎだよ! ただでさえ自己顕示欲の塊みたいな商品名なのに、さらに自意識過剰が限界振り切っちゃってる感じに進化してるよ!?」
「ああ! わたくしの中に、素晴らしい構想が次々と降りてきますの……!」
うへへへ、神降臨! みたいな顔を隠そうともしない金髪ちびっ子お嬢さま。
アヘ顏寸前なせいで、せっかくの可愛い顔が残念なほどに台なしだった。
「やばいぞ、こいつ……、完全にイっちゃってる……! そしてもはやまったく俺の言葉を聞く気がねぇ……!」
「はっ!? こうしてはいられませんの! セーヤ様、この絵はしばらくお借りしますわね!」
言うが早いかサーシャは画用紙を丸めると脱兎のごとく走り去っていった。
「おい、だからちょっと待てって、おーい。おーい……」
すぐに馬車が走り出してそのまま遠ざかっていく音が聞こえてくる……。
行っちゃったよ……。
それにしても、だ。
「裸の俺のイラストを使った『《
頭の痛い俺だった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます