第85話 プロジェクトSS―《神滅覇王》顕現計画
「『プロジェクト
渡されたのはわずか数枚のA4ペーパー。
けれどその左上には、私たちペーペーの下っ端はまず見ることがない威圧感たっぷりの「機密」の
「そうだ。簡潔に言えば最強S級チート『剣聖』をベースに、一部上書きする形で《アガニロム》最強と言われるSS級チート《
「SS級チート《
「S級を超える存在だから、SS級。暫定的な呼称ではあるが、わかりやすいだろう? そして《アガニロム》という異世界に関して、分かっている数少ない情報の一つが最強と言われるSS級チート《
「そんなものが――」
にわかには信じられない話だった。
だけど本部長がわたしのような下っ端を直々に呼び出して、わざわざそんな嘘をつく必要はちゃぶ台をひっくり返しても存在しないわけで――。
「そしてだ。『剣聖』をベースとして《
「そんなことが可能なのですか……?」
「理論的には可能だ。例えばA級チート『剣豪』がS級チート『剣聖』へと進化するように、同系統のチートは完全別個というわけではなく縦に繋がっているのは知っているな?」
「もちろんです。当初『剣豪』を付与された転生者が、異世界で研鑽を積んだことにより『剣聖』にたどり着いた――なんて話は有名ですし」
『昇華』と呼ばれるチートの進化システムだ。
下位のチートは様々な条件を満たすことで、同系の上位チートへ進化することができるのだ。
「そしてそれと同じようにして、本来『最強』のS級チートである『剣聖』を、さらなる
「――――!」
「SS級は完全なオーバーテクノロジーであり、同等の力を再現するのは今の技術では不可能だ。だがしかし既にあるもの、『剣聖』から繋げるだけならば、必ずしも不可能とさじを投げるほどのものではない」
「確かに! たしかに、二つの間にパスを繋ぐだけだったら……難易度は格段に落ちます!」
それは暗闇に射し込んだ、希望という名の一筋の光明!
「もちろん、だからと言って実際にSS級チートを顕現させるには、それこそ命を
「成功する可能性は限りなく低い……けれど……!」
これならば
「『剣聖』を昇華させるために必要なシステムは、既に組んである。万が一、《アガニロム》への転生者が現れた場合に、その機会を逃さないようにと極秘裏に開発されていたものだ。あとは最終調整でパラメータを設定するだけ。そしてアリッサ・コーエン、その最終調整を君に任せたい」
「……私に、ですか?」
「
その後、この部屋からしか入ることができない隣の小部屋へと通された私は、『剣聖』の昇華システムの最終調整を始めることになった。
《アガニロム》の危険性を考えれば、1分1秒でも早く完成させなければならない。
修練、気合、根性、ガッツ、名声、自己犠牲、運、雰囲気、場の空気etc...解放に必要な各種パラメータを精査していく。
「根性とガッツは同じでは……? それに雰囲気、場の空気……?」
この項目の存在する意味が、まったくもってわかりません……。
でもでも。
時に意味不明な異世界転生局の『仕様』に、今更突っ込んでもしょうがありません。
今やるべきは、あの人のために、あの人のための最終調整を行うことのみ!
それ以外はすべて、後回しですから――!
各項目を見ていく中で、私の中に一つの答えが生まれていた。
ううん、この答えは既に最初から決まっていたんだ――!
「全てのパラメータを最低値に……でも代わりに一つだけ、『想い』だけを最高値に――!」
強い強い、誰よりも、何よりも強い『想い』。
ただそれだけをトリガーとし、最強チート『剣聖』を雛型とすることで、《
「これだけの極振りをしてしまえば、完全な顕現は無理かもしれません。それでも顕現さえできれば、最強SS級チート《
だからこの一点突破に、私は賭けます――!
あとは、あの人次第。
……だけど私は、成功の可能性を微塵も疑ってはいなかった。
だってそうでしょう?
「異世界への並々ならぬ希望と愛を抱いていた、四万十川の清流よりも美しく、マリアナ海溝よりも深い、そんな異世界への最強の想いを持った
ある種の確信を胸に抱きながら、私は完成の報告を告げに行った――。
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