18日目 免許合宿終了

 無事、帰宅しました。


 今朝行われた卒業検定。朝寮から荷物をまとめて自動車学校に向かうと、嫌な雰囲気に包まれた検定室(プレハブ小屋)で待たされて順番発表。僕の順番は二番目で、前の人の運転を見てから自分の番という感じだったのですが、まぁ、前の人があまりツッコミどころのないように走りまして。いざ自分の番になるとど緊張。手汗がすごくドバッと出るわけですよね。

 そんな中走ってる最中に「この辺りで止まれるところで一回止まってね」と教官が言うので、すぐに止まったわけです。以前、別の教官から「教官がそう指示したときは大体止まれる場所だからすぐ止まれば問題ない」と言われたので直ちに停車措置を取ったわけです。


 しかし次の瞬間、助手席から減点を意味するペンの音がシュッと。もしかして俺、止まっちゃ行けないところで止まったのか。これは教官が俺をハメに来た罠だったのか。落ちた! と瞬時に肩の力が抜けるわけですよ。

 あと二泊も追加か、やだなぁ。そんなことを思いながら残りの道を辿り、縦列駐車も終わらせるわけです。でも心の中はもう「落ちたわ」と言う落胆の気持ちしかなくて。

 仮免試験に落ちたときは「どうだろうなぁ」というボーダーラインだったので、「落ちたか、うん」という感じだったんですが、流石に寮から荷物をまとめていたのでもう戻りたくありませんから、絶望に打ち拉がれていました。


 そして結果発表の瞬間。自分の受験番号が呼ばれて、「マジか」と思うと同時にようやく解放される! という気持ちが強く芽生えました。ようやくこの地獄が終わるのか、お酒が飲める、ゲームができる! そしてiMacの慣れた画面でゲラチェックができる。

 そこからは特筆して語るところはありませんが、自動車免許合宿は闇であるということだけ伝えておきたいと思います。


 この免許合宿レポは大半が失恋だったりイマジナリー後輩という要素で修飾されておりましたが、私のメンタルがいかに崩れていったのかということを記した日記出会ったとも思っております。友人と一緒に行く免許合宿ではなく、ぼっちで足を運んだ免許合宿はこんなに辛いんだぞということがまだ免許を取っていない方々に伝わればこのレポは意義があったのではないかなと。

 単に「羽海野が変なことをやってる」と思って応援してくださっていた方々はありがとうございます、と感謝しかありません。失恋芸人のおしゃべりクソメガネ(本業:大学生兼フリーライター)としては面白がって読んでいただければいいのかなと思いつつも書いておりましたから、ご笑覧いただければそれが一番この文章が浮かばれるんじゃないのかなとも思っております。

 悠寐ナギ先生の免許合宿レポから転じて、一気にメンタルの浮き沈みが激しい地獄のようなレポとなりましたが皆様いかがだったでしょうか。これから免許を取るよという方は是非、友人と一緒に合宿に行くか通学で取ることをお勧めいたします。


 しかし長かった免許合宿。もう二度と行きたくない……!!!!!!


 それでは以下、後輩パートです! お楽しみください!


     ※ ※ ※ ※ ※


 センパイは、高校時代の知り合いだという女と二人でパスタの美味しいお店にランチを食べにいった。

 あたしはその様子を向かいのカフェから覗いている。あのセンパイはいつものように「えちかもどこかに食べに行くといい」とか言って別行動となったからだ。何故センパイの真向かいに座っている女があたしじゃなくてあの女なのか納得がいかないが、そういうところもセンパイという感じがするからまぁいい。


「だからって言っても、本当におしゃべりクソメガネすぎませんかねあの人」


 ポツリと言葉に出てしまうほど、いつものあたしに対しているときと同じようにセンパイはおしゃべりクソメガネっぷりを披露していた。あの女とセンパイは高校時代の知り合いでただ二人だけクリエイティブな職に進むとかなんとかで話こそ弾んでいるが、如何せんセンパイの喋る量が多すぎる。いつもあたしに対するときもあんな感じで喋るものだからたまったものじゃない。


「もう90分経ってるんですけど、センパイ」


 手元の時計を見ると3時過ぎを指していて、そろそろ新幹線に乗りたいところなのだがまだ話が終わる様子には見えないでいた。というよりあのモードに入ったセンパイは長い。ツイキャスでの愚行と同じように、話に夢中になるとあの人は長いのだ。

 しかし、その傾向は恋している相手だと逆となる。あのセンパイは恋をしている相手に対しては挙動不審になるきらいがあって、もう「おしゃべりクソメガネ」ではないただのクソメガネと化す。


 では今、センパイはあの女と普通に喋っているということはあの女には恋しておらず、普通に友人ということでいいのだろう。聞き耳を立てていると「また飲みに行こう」だとか普通に次回以降の予定が立っているけれど、あたしは許しませんからねセンパイ。


「まぁ、あたしに対しても普通に喋れてるってことは、センパイはあたしに恋してないってことなんですよね。気づいてましたよ、それくらい」


 まぁ、いい。これから長い間かけて振り向かせればそれでいい。

 恋なんてそんなものなのだ。


「さーて、帰って、センパイと仕事の続きしましょうかね」


 自分に好意が向いてなかろうとも、恋というものは思いが持続する限り終わらない。いくら両思いでないと分かっても、まだ望みがあると愚かなことを思ってしまうのが恋なのだ。だからまだ隣にいれるだけでもあたしはいい。いつか振り向かせられれば、それが実るときがあるかもしれないのだから。


『そろそろ帰ろう』


 センパイからLINEが届く。見れば、パスタ屋から二人が出てくるところだった。

 すかさずあたしはこう返信する。


『帰ったら合宿に付き合った分の恩、返してもらいますからね』


『え、なに』


『そうですね……ハロウィンは昨日で終わりましたけど、いたずらさせてください』


『やだよ』


『なんですかそのそっけない対応。そんなんだからモテないんですよ〜』


『うるさい』


『帰ったら無条件でいたずらさせてもらいますから』


 恋する乙女はくじけない。

 想いが続く限り、恋は広がっていくのだから。

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