人の気持ちを考えることができる人間です(一部除く
渋谷のスクランブル交差点で一人声を張り上げる少年。
「人探しをしてまーす!ご協力お願いしまーす!!」
交差点や駅のロータリーなど、主に人通りの多いところでよく見かけるチラシ配り。
なんていうか、あれだよね。
無視とか、できない。
何も無いかのように無視して通りすぎる人とかよくいるけどさ、まじで無理だわそーゆー人達。
時に暑い日、時に寒い日。ずっと立ち続けて、笑顔を作りながら受け取ってくれる人を待ってる。例えば相手の気持ちを考えてみよう。
☆☆☆☆
疲れた。もう何時間もここに立ってる。休みとかないの?死にそう。
誰も受け取ってくれないし、酷いやつなんか完っ全に無視するしその上、給料少ないし……。
正直無視するやつムカつく。仕事じゃなかったらぶん殴ってやるのに。
元気な声を出しながら、通りすがった若者にティッシュを差し出す──が、無視される。次は中年サラリーマン──無視される。若いトーキングナウのカップル──無視さオイ女今舌打ちしたよな?あ?
眉間にしわがよっていき、
「てめぇゴr─」
待て待て落ち着け俺。ここであいつら殴ったら、即首だぞ。我慢しろ。
さっきのカップルの顔を頭から排除し、もう一度満面スマイルを浮かべて声をあげr──おいあいつ睨んできたぞ氏n──
★★★★
あー、駄目じゃこりゃ。想像しただけで頭痛いよ。無視とか無理無理。
「人探しをしてまーす!お願いしまーーす!!」
てな感じで軽い笑顔を作りつつ丁寧に、少年からチラシを受けとる。
「ありがとうございます!」
そうそうこれこれ。こういうこと言われるとなんか嬉しくなってきて「頑張ってください」とか言いたくなる。でも、
歩いている→すれ違い様に貰う→背中に向けて「ありがとうございます」と言われる→チラシ配りの人は別の人に声をかける
の一連の流れの中には「頑張ってください」なんて言うスペースがない。残念。
ほらもう後ろでは、
「人探しをしてます!ご協力お願いしまーす!!」
人探し……?あ、そう言えば人探しって言ってたな。
チラシを貰うという行為そのものに気を取られていて、チラシの内容のことなど綺麗さっぱり忘れてしまっていた。
「何々……?」
おっさんが新聞読むときみたいな独り言を無意識に発してしまって、若干落ち込みながらもチラシに目を通す。
えーと、ん?
《私達は人探しをしています。》
私達と一緒に遊びましょう!私達と一緒に遊べる人探してまーす。
人生飽きたと言う人は是非!
……。
人探しって、そう言うこと?迷子行方不明とかじゃなくて、ただの団体勧誘?しかもなんか中二ぽいって言うか、如何にも中学生がやりそうなことだなって思った。人生飽きた、とかさ。
善意で受け取ったこのチラシ。
よく見ると、下に小さな字で「ごめんネ☆」
ごめんねネ☆じゃねえよ。特に、ね、がカタカナってのがうぜえ。ん?更によく見てみると、その下にもっと小さな字で「w超ウケるwww」
──人探しと聞き善意で受け取った皆さんの中で、この紙を破り捨てた人素直に手を挙げてください。はい、ありがとうございます。過半数以上の方が挙手されました。じゃあ僕も便乗して笑
イラつきのあまり既にシワだらけになったチラシが、二つに、四つに、八つに破れていく。うん、さようなら。
ビリビリに破けたチラシを丸めて歩道の隅にあるゴミ箱に捨て──いや、待てよ?!
電撃が走り、体が動かなくなる──。
☆☆☆☆
「はぁ……」
数時間にも及ぶ作業に区切りをつけ、大きく伸びをする。
下に小さく入れておいたジョークも含めて、我ながら良い出来だと思うな。後はこれをコピーして配るだけだ。
このチラシを見た人の反応を想像して、ついニヤけてしまった。あー駄目だ駄目。姉さんに、ニヤニヤすると気持ち悪いからやめろって言われたんだった。
「姉さん姉さん!」
出来上がったチラシを見せるべく、俺は階段を駆け上がり姉さんの部屋へ。
「姉さん!」
ベッドに横たわる姉さんに声をかけ、チラシを見せびらかす。
すると姉さんは起き上がってクスリと笑い、俺の頭に手を置いた。
──頑張ってね
太陽の光のような何かで姉さんの顔は見えないが、優しく微笑んでいることだけはわかる。
「うん!」
──
数時間前、頑張って作ったチラシ。
それが、ビリビリに引き裂かれて散らばっていた。
姉さん……
★★★★
ギャァァァァァ!
捨てるなんてとんでもない!姉さんの想いを乱暴に扱うやつは僕が許さないから!
そこで掌に握っていた、ビリビリに引き裂かれたチラシの存在に気付く。
「ぁ……」
ヤバイヤバイ涙が、。
僕は何てことをしてしまったんd──
「ひどいなぁ全くゥ?」
──ん?
「せっかく作ったチラシをそんな風に破くなんて!」
……。
振り返る。
「おいすっ」
「おいす……」
チラシ配りの少年が、ニコニコしながらバラバラになったチラシを見ていた……。
「ねぇねぇお兄さん、うち来ない?」
……。
「はい?」
「うちに、来ない?」
「は?」
「うち来い!」
「は!?」
「うちこ──」
「はぁ?!」
少年は謎の発言をしながらビリビリのチラシを広い集める。お姉さんじゃなくてこの人が病気なのかなぁ……。頭の。
「俺たちと一緒に遊ぼうぜ~」
貼り付けたような笑顔をこちらに向け、なぜか遊びの誘いをされる僕氏。なんで同級生ノリやねん。
えっと…
「何人いるの?」
なんで同級生ノリやねん。
頭が混乱してるせいか、自分の発言の意味さえ訳が分からなくなってきた…………いきなり声かけられて謎の誘いされたらまぁ仕方ない……の?
「君入れて五人」
お~。結構いるじゃないか。
で、
「どこで遊ぶの?」
ちゃうねん。そうじゃない。
と茶番はここまでにして、走り出す。
──変人だ、あいつ。
うち来ない?って何?え?え??ジョーク??WAHAHA!!笑えねぇぞ。あと?が多い。読みにくい。
全速力で走る。捕まったらなんかされそう、いやん。
「なんで逃げるのさぁぁぁ!」
付いてくんなオイ!後ろにいるのかと確認す──横にいる?!しかもこっちは全力で走ってるっつーのにこいつ余裕ぶっこいてやがる。
「お母さんに、知らない人には付いてくなって言われたんだよ!」
「知らない人って酷いなぁ!チラシ越しに触れ合った仲じゃないかぁ」
いきなり大きくステップして(運動神経鬼畜)前に飛び出した不審者が謎発言。
言い方……てかどんな仲だよ。
「止まれぇぇ」
「やだ!」
「ほい」
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