パン吉

勝利だギューちゃん

第1話

部屋にぬいぐるみが置いてある。

パンダのぬいぐるみ。

もう色褪せている。


幼稚園のプレゼントにもらったもの。

以来10数年、高校生になった今も飾ってある。


よくぬいぐるみに、話しかけている。

「君はどうして、わらってるの?」

当たり前だが答えない。

「何か、悩みはある」

でも、答えない。


女子高生にもなって、ぬいぐるみに声をかけるなんて、

少し、恥ずかしい・・・


でも、なぜだか話をしてくなる。


私は、このパンダのぬいぐるみに、パン吉と名付けた。

まんまの名前だが、幼稚園児ならこんなものだろう・・・


私の名は、笹宮りん


「・・・ちゃん、りんちゃん」

その声に目が覚めた。

「だれ?私を呼ぶのは?」

「僕だよ、りんちゃん」

「どこ?」

「ここだよ、ここ」

出窓を見る。

そこには、パン吉がいた。


「もしかして、パン吉?」

「そうだよ。りんちゃん、いつもありがとう」

「どうして、君が話すの?パン吉」

「当たり前だよ。だって・・・」

「だって?」

「ここは、りんちゃんの夢の中だもの」

確かにそうだ。夢なら何でもありだ。

私は納得した。


「ねえ、りんちゃん」

「何?パン吉」

「初めて会った日の事を、覚えてる?」

「うん、もちろん」

パン吉は、幼稚園の入園祝いに、パパからもらったものだ。

以来、私の一番のお友達だ。


「僕、いつもりんちゃんとお話出来て嬉しいんだ」

「でも、実際には会話できてないけどね」

「でも、心の中では、りんちゃんに言葉を返しているよ」

パン吉は、もう色褪せている。

でも、なぜか捨てられない。


「りんちゃん」

「何?」

「これからも、時々話そうね」

そう言って、私は目が覚めた。


出窓のパン吉は笑っていた。


どうせ夢だ。

今度はふたりで、ピクニックにでも行こうかな・・・

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パン吉 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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