第16話 七家の家
翌日、喧しいアラームに叩き起こされ俺は会社に向かう為に起きた。
周りを見渡しても、今日は夢は来なかったな、と思いつつ、だ。
久々に部屋に置いてある時計というモノを使ってみたが、ウルサイ。
いや、俺のスマホのアラームも十分、喧しいのだが。
「.....月曜日か.....何だか身体が重くて行きたくねぇな.....」
その様に呟いた俺に驚愕する俺。
ひと昔前とはえらい違いだ。
あれだけ家に帰りたくなかったのに家が神聖な感じがして。
家に帰りたい、と言うか、会社に行きたく無い。
「.....だけど、働かないと金は稼げねぇしな」
俺は頬をぶっ叩いて起きた。
時刻は7時11分。
体内時計も狂いまくっている俺の一日が始まる。
☆
「お・に・い!!!」
「うわ!?」
廊下で突然、肉の布団が飛んで来た。
いやまぁ、夢だけど。
俺は驚愕しながら、受け止める。
見ると、夢は寂しそうな顔で俺を見てきていた。
「夢.....また一人ぼっちだから.....早く帰って来てね?」
「.....」
そんな可愛い顔で小首を傾げないでほしい。
ある意味、会社を休みたくなる。
さっきの決心がボキッと折れてしまうから。
俺は苦笑して思いながら、夢を抱えた。
「.....なるだけ早く帰って来るさ。そうだ。帰ったら七家の所に遊びに行くか?」
「え!?ななちゃんの所!?行く!.....早く帰って来てね!」
おお、元気になった。
思えば、七家が遊びに来いとしつこく誘ってきていたのだ。
これはいい機会じゃ無かろうか、七家と交流.....出来るかも知れないから。
俺は余り乗る気にならないんだが。
「じゃあ、俺は準備するから。お前も日常生活の準備しろよ?」
「はーい!」
夢は相変わらずのニコニコ笑顔で話した。
俺はその夢を見ながら、手を繋ぎ。
一緒に階段を降りて行く。
☆
「七家。ちょっと良いか」
会社の休憩時間に俺は横のデスクの七家に聞いた。
七家は待ってましたと言わんばかりに俺を見てくる。
それから珈琲を飲んだ、七家。
ちょっと気色悪い。
「どうしたヤシマ?」
「いや、まるでエヴァみたいに言うな。俺はヤ(ジ)マだ。アホ」
「おお、スワンスワン。で、どうした?」
「お前の家に夢を連れて行きたいが、今日は暇か」
これに対して、七家が見開いた。
それからウンウンと頷く。
俺にニカッと歯を見せて笑みを浮かべた。
「暇だな。うむうむ、友人の頼みとあっちゃ断れんな〜」
「.....」
友人か。
俺は考え込む。
すると、背後から肩を叩かれた。
振り向くと、頬に指が。
「あはは、引っ掛かったね」
「.....何してんだ佐藤」
「うん?何か楽しそうだから来たよ」
楽しいのかは知らんが。
俺は思いながら立っていると七家が勝手に喋った。
「コイツに凄まじく可愛い妹が居てよ。んで、今日、俺の家に来るんだわ」
「え!そうだっけ!?詳しく教えて!?」
「お、おい。七家.....」
そんなにベラベラ喋るなよ。
俺は慌てて止めるが、七家は喋ってしまった。
すると、佐藤の目の色が変わって俺に向いてくる。
「決めた。私も七家くん家に行く」
「はい?」
「アッハッハ!賑やかになるな!今日はパーティーってか!」
その様に会話していると、課長が俺達の背後に鬼の形相で立っていた。
あ、休み時間終わってやがる、と。
七家と俺と佐藤は固まった。
☆
「俺の家はこっちの方角だ。夢ちゃん連れたらお前ん家まで車で行くから宜しく」
「私は七家くん家に行ってるね」
今日は退社時間が早かった。
俺は二人の言葉に頷いて、七家と佐藤と別れる。
電車に乗って。
そして、商店街を抜けて歩いて行く。
俺の家に着いた。
「ただいま。.....お、夢。準備は出来てるか?」
玄関を開け放つと。
まだかまだかと待っていた様な、夢が玄関先に座って居た。
夢は俺の顔を見て、リュックを背負ったまま笑顔で突撃して来る。
それを受け止めて夢の頭を撫でた。
「おかえり!お兄!」
「ただいま。.....よし行くか?」
「うん!」
すると、奥から鈴さんがやって来た。
その顔はちょっと不安げだ。
そんな鈴さんに俺は和かに話す。
「大丈夫ですかね.....?」
「大丈夫です。七家の家に遊びに行くだけですから。何も起こらないと思います」
「.....だったら良いんですけど、任せても良いですか?浩介さん」
「.....はい」
俺は鈴さんに頷いた。
すると、夢が手を上げて鈴さんに言葉を発する。
ニコニコ笑顔で、だ。
「お母さん、大丈夫だよ!お兄が居るから!」
「.....だと良いけど.....夢、あまり七家さんや浩介さんにご迷惑をお掛けしちゃ、めっ。よ」
「.....はーい!」
夢の様子を見ながら、俺は頭を下げる。
それから、夢を引き連れてメッセージを飛ばす。
と同時に家の前に車が停まった。
いや、え?
「よお!さっきぶり。あと、夢ちゃん。お久。まぁ乗れや」
「ちょ、お前と言う奴は.....」
「ななちゃん!お久!」
「お久!」
七家の車に即座に夢は乗り込んでからハイタッチする二人。
いや早すぎる、どんだけ浮かれてんだ七家は。
その様に思って俺は盛大にため息を吐いてから。
玄関先の鈴さんに七家と俺で頭を下げつつ、車が発進した。
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