第13話 かつての同級生との邂逅
夢と寝てそして1日経過した。
朝になってから、起きてそして俺と夢は欠伸をしながら歯を磨き、それから、準備を始めた。
何を準備しているのか、それは、簡単に言えば夢と二人でデートだ。
まぁ、それはジョークだが遊園地に遊びに行く。
残念ながら、鈴さんは家事でちょっと忙しいとパスになった。
また、親父は別行動で後で一緒に行動する事になり。
俺は大喜びの夢を見ながら、準備をしていた。
「お兄といっしょに遊園地!楽しみだなぁ!」
「はしゃぎ過ぎるなよ。夢。またはぐれたりしたら大変だからな」
大喜びの夢を見ながら、笑む、俺。
しかし、俺がこんな感じで子供を見る様になった事が有り得ないよな。
昔の俺が聞いたら仰天ものだ。
何故、夢にはこれだけ魅力が有るんだろうか。
「.....じゃあ、準備出来たし、行こうか」
「うん!!!」
「行ってらっしゃい。御免なさいね。浩介さん。宜しく御願いします」
玄関から思いっきり飛び出して行く、夢。
俺はそれを何とか止めながら苦笑して歩いて行く。
背後では鈴さんが手を振っていたので、手を振り返した。
そして、駅まで歩いて行く。
遊園地は数駅先だ。
☆
「がたーんごとーん!」
電車の中で、はしゃぐ夢。
止めるので精一杯だったが、俺も楽しんでいた。
周りでクスクスと笑い声が聞こえる。
ちょっと恥ずかしい。
「ね!お兄!あれ何!?」
「ん?ああ、あれは煙突だ。温泉が有るんだろうなあの辺りには」
「そうなんだ!」
夢はその様にニコニコ顔で話しながら。
俺の手を握りつつ、椅子の上に膝を曲げてはしゃぐ。
その光景を笑みながら、横を見ると。
「.....!」
青ざめた。
まさかだと思うが、高校の頃の同級生が居た。
男、男、男、女性、女性、女性と、そんな感じであったが、間違い無い。
3人、見たことが有る。
恐らく、俺の同級生。
友人同士でどっかに旅行に行く気な感じの様だ。
街からそれなりに高校は確かに離れて無いが.....まさかこんな場所で遭遇するとは。
相手は覚えて無いと思うが、って言うか。
覚えて無い事を祈ろう。
そう、思っていると。
「.....あれ?あ、ちょっとごめん.....貴方、矢島くん?」
面倒臭い事になった。
横に居る俺を見つけて、覚えている様な感じで寄ってきたのだ。
少しフワッとした茶色の感じのボブに。
サングラスを掛けている、胸も身長も成長して居て誰か分からない。
俺は取り敢えず、吐き捨てる様に聞いた。
「何だ。お前」
「.....あ、えっと.....私、覚えて無い?」
「.....知らないな」
俺はすっとぼける様にして横を見た。
夢を見る様に、だ。
そんな夢は窓の外を見ながら、はしゃいで居る。
すると、その女は前の席に座りやがった。
「.....私ね、田中千(たなかせん)だよ。覚えて無い?高校時代に.....教科書をよく借りてた.....」
「.....全く分からない。夢。行こうか」
これ以上、関わると面倒だ。
俺はそもそも、同級生とか覚える様な頭をしてないんでね。
悪態を吐きながら夢を引き連れて、歩き出す。
「あ、待って!御願い!」
「.....何だよ」
これがラストチャンスだぞ、とその様に思いながら、振り返ると。
メモ書きを鞄からその女は出す。
それから、頭を下げて、渡してきた。
俺は眉を顰めながら見つめる。
「.....これ、連絡先!久々に話がしたいから!受け取って!」
「.....?」
その渡し方に何か覚えがあった。
右手で渡すやり方。
当時の姿が二つ重なる。
だが、気の所為だろうと、俺は直ぐに首を振った。
取り敢えず紙だけ奪い取る様に受け取ってから、戸惑っている夢を引き連れて。
俺達は人混みに消えた。
☆
「.....お兄.....大丈夫?」
「何がだ」
「.....いや、不機嫌そう.....」
駅から遊園地まで歩いて行く、街中で泣きそうな感じの夢に俺はハッとして。
直ぐに笑みを浮かべた。
そして膝を曲げて、夢を見つめる。
「.....ごめんな。俺が.....昔、嫌がらせを受けた人達に再会してしまったから.....嫌な思いを持ったんだ。お前は悪く無いよ」
「.....あ、そうなんだね.....お兄も.....イジメ.....」
「.....そうだな。お前にいつか話すよ。俺の過去を、な」
その様に和かに話して、さ、行こう、と、不安そうな夢の手を取ってからゆっくり立ち上がった。
今日が遊園地で丁度良かった。
洗いざらい嫌な事を全て忘れる事が出来る。
俺を虐めたクソ同級生の事も、だ。
「.....夢。今日は精一杯、楽しもうな」
「そうだね!」
遊園地なんだから楽しまないと絶対に駄目だ。
余計な事は忘れよう。
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