第13話 かつての同級生との邂逅

夢と寝てそして1日経過した。

朝になってから、起きてそして俺と夢は欠伸をしながら歯を磨き、それから、準備を始めた。

何を準備しているのか、それは、簡単に言えば夢と二人でデートだ。

まぁ、それはジョークだが遊園地に遊びに行く。

残念ながら、鈴さんは家事でちょっと忙しいとパスになった。

また、親父は別行動で後で一緒に行動する事になり。

俺は大喜びの夢を見ながら、準備をしていた。


「お兄といっしょに遊園地!楽しみだなぁ!」


「はしゃぎ過ぎるなよ。夢。またはぐれたりしたら大変だからな」


大喜びの夢を見ながら、笑む、俺。

しかし、俺がこんな感じで子供を見る様になった事が有り得ないよな。

昔の俺が聞いたら仰天ものだ。

何故、夢にはこれだけ魅力が有るんだろうか。


「.....じゃあ、準備出来たし、行こうか」


「うん!!!」


「行ってらっしゃい。御免なさいね。浩介さん。宜しく御願いします」


玄関から思いっきり飛び出して行く、夢。

俺はそれを何とか止めながら苦笑して歩いて行く。

背後では鈴さんが手を振っていたので、手を振り返した。

そして、駅まで歩いて行く。

遊園地は数駅先だ。



「がたーんごとーん!」


電車の中で、はしゃぐ夢。

止めるので精一杯だったが、俺も楽しんでいた。

周りでクスクスと笑い声が聞こえる。

ちょっと恥ずかしい。


「ね!お兄!あれ何!?」


「ん?ああ、あれは煙突だ。温泉が有るんだろうなあの辺りには」


「そうなんだ!」


夢はその様にニコニコ顔で話しながら。

俺の手を握りつつ、椅子の上に膝を曲げてはしゃぐ。

その光景を笑みながら、横を見ると。


「.....!」


青ざめた。

まさかだと思うが、高校の頃の同級生が居た。

男、男、男、女性、女性、女性と、そんな感じであったが、間違い無い。

3人、見たことが有る。

恐らく、俺の同級生。

友人同士でどっかに旅行に行く気な感じの様だ。

街からそれなりに高校は確かに離れて無いが.....まさかこんな場所で遭遇するとは。

相手は覚えて無いと思うが、って言うか。

覚えて無い事を祈ろう。

そう、思っていると。


「.....あれ?あ、ちょっとごめん.....貴方、矢島くん?」


面倒臭い事になった。

横に居る俺を見つけて、覚えている様な感じで寄ってきたのだ。

少しフワッとした茶色の感じのボブに。

サングラスを掛けている、胸も身長も成長して居て誰か分からない。

俺は取り敢えず、吐き捨てる様に聞いた。


「何だ。お前」


「.....あ、えっと.....私、覚えて無い?」


「.....知らないな」


俺はすっとぼける様にして横を見た。

夢を見る様に、だ。

そんな夢は窓の外を見ながら、はしゃいで居る。

すると、その女は前の席に座りやがった。


「.....私ね、田中千(たなかせん)だよ。覚えて無い?高校時代に.....教科書をよく借りてた.....」


「.....全く分からない。夢。行こうか」


これ以上、関わると面倒だ。

俺はそもそも、同級生とか覚える様な頭をしてないんでね。

悪態を吐きながら夢を引き連れて、歩き出す。


「あ、待って!御願い!」


「.....何だよ」


これがラストチャンスだぞ、とその様に思いながら、振り返ると。

メモ書きを鞄からその女は出す。

それから、頭を下げて、渡してきた。

俺は眉を顰めながら見つめる。


「.....これ、連絡先!久々に話がしたいから!受け取って!」


「.....?」


その渡し方に何か覚えがあった。

右手で渡すやり方。

当時の姿が二つ重なる。

だが、気の所為だろうと、俺は直ぐに首を振った。

取り敢えず紙だけ奪い取る様に受け取ってから、戸惑っている夢を引き連れて。

俺達は人混みに消えた。



「.....お兄.....大丈夫?」


「何がだ」


「.....いや、不機嫌そう.....」


駅から遊園地まで歩いて行く、街中で泣きそうな感じの夢に俺はハッとして。

直ぐに笑みを浮かべた。

そして膝を曲げて、夢を見つめる。


「.....ごめんな。俺が.....昔、嫌がらせを受けた人達に再会してしまったから.....嫌な思いを持ったんだ。お前は悪く無いよ」


「.....あ、そうなんだね.....お兄も.....イジメ.....」


「.....そうだな。お前にいつか話すよ。俺の過去を、な」


その様に和かに話して、さ、行こう、と、不安そうな夢の手を取ってからゆっくり立ち上がった。

今日が遊園地で丁度良かった。

洗いざらい嫌な事を全て忘れる事が出来る。

俺を虐めたクソ同級生の事も、だ。


「.....夢。今日は精一杯、楽しもうな」


「そうだね!」


遊園地なんだから楽しまないと絶対に駄目だ。

余計な事は忘れよう。

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