第8話 夢の過去

俺は何なのだろうか。

そう、問い掛けたりする日もある。

だけど、答えは何時も通りだ。

つまり。


俺自身は要らない人間かも知れない。


その様な、弱々しい意見しか出て来ない。

自分はこの世に必要無い。

としか自分から出て来ない。

本当に俺は要らない人間なのか?と自問自答を繰り返したりする。

人に迷惑を掛けているのでは?と心配する。

だけど、そんな俺に一筋の光が見えた。

お陰で変わろうとしている。


「夢!?」


「くひぅ」


川の字に寝ていたハズ。

俺の胸辺りにいつの間にか夢が居た。

また抜け出して来たのか?

全く、仕方が無い。


「夢、風邪引くぞ。こっちで寝ろ」


全く、布団も被らんとは。

俺はふにぅ。

と言って可愛い夢を横にずらしてから、布団を掛けた。

ああ、因みに言い忘れた。

時計掛けてないのは、昨日は金曜日で。

今日は土曜日だ、だから休みである。

今日の予定としては、夢を病院に連れて行き、予定は無い。

どうすっかね。

家族になって初土曜日だしな。

水族館、映画館、デパート、行く場所は。

記念に、だ。


「.....」


「スースー」


なんで神ってのはクソしか居ないんだろう。

こんなに一生懸命に生きている奴を。

障害を持たせなくても良いじゃないか。

俺はその様に思いながら静かに涙を浮かべる。

俺だけで良いんだよ、被るのは。

何もかもは。

俺は静かに夢の額を撫でた。


「お疲れ様。夢」


すると、ノックが聞こえた。

声が聞こえてくる。


コンコン


「はい」


「浩介さん、夢居ますか?」


「はい、居ます」


鈴さんが入って来る。

そして、夢を見てため息を吐いた。

全く、と言って。


「ゴメンなさいね。浩介さん。本当に」


「いいえ。全く問題無いですよ」


「.....この子、一応、昔はこんな感じじゃ無かったの。でもパパ子でね、それはそれは仲良かったわ」


そうだな。

多分、そんな感じじゃ無いかって思った。

パパが死んで。

悲しくて、悲しくて、しかも俺みたいに母さんが生きている訳じゃない。

どれだけの悲しみが有ったのだろう。

想像を絶する。

こんな幼い子が、だ。


「.....夢は成績も優秀で、何でも好きな事をして良いって言ってピアノしていたのだけど、全部.....別に良いんだけど、今のこの子が悲しくて。見てられない感じで.....あ、ゴメンなさい。また私.....」


「.....優しいんですね、鈴さんは本当に」


涙を流す、鈴さん。

俺はティッシュを取った。

嗚咽が漏れてくる。


「可哀想なんて言ったらいけないのに.....!私も悲しくて、悲しくて」


「.....」


言葉が出ない、見つからない。

俺は鈴さんをただひたすらに見つめるしか。

出来なかった。


「夢は治らないのかって絶望したりして.....ご、ゴメンなさい。お医者さんでも無いのに、話して.....本当に.....」


「治ります」


「!」


「確かな事は言えませんが、頑張ってるんです。夢は。だから絶対に.....夢は治ります。私も側に居ますから。大丈夫です」


俺は精一杯の言葉を掛けた。

もう俺は駄目だろう。

だけど、別だきっと治る。

俺はそう思える。

神は信じられないけど、誰かがきっと治してくれる。

俺はそう、信じている。


「有難う、有難う。浩介さん.....あ、病院の予約時間になるから起こさないと.....」


「夢。起きろ。病院行くぞ」


「お兄.....?」


眠気まなこを擦りながら夢はボーッとしつつ、起きる。

俺は夢を撫でた。

そして、連れて行く。



病院には俺、夢、鈴さんが着いて来る事になった。

理由としては親父は親父が仕事だから、だ。

俺は既に居ない、親父の場所を見て。

セコ〇を掛けた。

そして、夢の手を引いて表に出る。

Tシャツ、スカート。

そして、小さいプイキュアのリュックを背負った夢。

本当に可愛らしい。


「じゃあ、行きますか」


「はーい!お兄!」


「ふふっ。可愛わね、夢」


鈴さんがその様に話す。

俺は笑ながら、手を引いた。

病院は俺が調べた、らここから二駅先の予約制の大学病院だ。

今度こそマトモに診てくれる医者で有る様に願う感じだ。


「お兄とお出掛け嬉しいな!」


「はしゃぎすぎるなよ。夢」


「はい!了解しました!」


ビシッと額に手を添える、夢隊員。

俺も笑って敬礼した。

そんな俺達をみながら、鈴さんは笑う。


「こんなに笑える日が来るなんて思いませんでした」


「俺もです」


「なんのお話?」


俺は何でも無いよ!っと、夢を肩車した。

心配する鈴さん。

大丈夫大丈夫、軽い軽い。


「きゃー!」


「行くぜ!」


この日々が暫くでもいい。

続きます様にと祈りながら。

俺達は歩く。

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