第4話 家族愛
思えば、俺の人生は半ば最悪なものだった、筈だった。
だが、小学生の義妹になった夢と。
その母親の鈴さんという方と出会い、少し気力が出てきて。
俺は笑みを取り戻しつつあった。
「スースー」
「.....」
午後8時。
飯食って、鈴さんと共に風呂に入り。
パジャマになった遊び疲れたのか夢は鈴さんの膝枕でぐっすり眠っている。
あくまでその寝顔は子供の様に見える。
いや、って言うか、表現がかなり難しいんだわ。
「御免なさい。疲れたんじゃ無いですか?浩介さん」
「.....別に全く問題は無いですよ。お二人が来て.....全く疲れが出ません」
「浩介変わったな。.....そんな事を言うとは」
その様に夢を撫でながら親父が和かに言う。
俺は目だけ動かし、頬を掻く。
確かにな。
俺は突然現れた他人に対して信頼を寄せない、と言うかそんな性格だった。
先生にも、転校生にも、医者にも、看護師にも、皮肉にも自分にも、信頼知らずだったのだ。
「.....」
何故かは簡単だ、俺がイジメに遭ってから。
しかもその後に.....ってそう言えば話してなかったな。
ナヨナヨしすぎているのは実はイジメ以外にもそれなりに理由が有る。
両親の離婚、イジメ、社会環境をきっかけに引き金が引かれて発病した。
それは、自閉症だ。
性格には統合したので、今は自閉症スペクトラムと名付けられているが。
「.....話してなかったですね、鈴さん。俺は実は自閉症スペクトラムなんです」
「.....!」
「.....!!!」
そういう事を俺は一切口にしない。
その為、珍しいという感じで親父が見開いた。
他人に言う事では無いけど家族なら別だ、話しても良いと思う。
鈴さんは信頼が出来る。
だから話しても問題無いと判断した。
「.....自閉症.....って.....そんなに優しいのに.....イジメに.....自閉症.....」
鈴さんが涙を流す。
どうやら口が聞けぬ程に衝撃を受けた様で口元を抑えて号泣した。
俺はそんな鈴さんに笑みを浮かべて首を振る。
「.....問題は無いです。だから、落ち着いて下さい。今は.....薬飲んで落ち着いています。今は.....夢の事だけ考えましょう」
「.....いや.....そういう訳にはいかないわ。浩介さん」
両頬をゆっくり掴んでくる、鈴さん。
右と左で挟む様な形だ。
そして、微笑んだ。
突然美人にその様にされて、俺はちょっと赤面する。
「.....私は家族。貴方は息子。だから私は.....貴方も助けるわ」
『私は貴方が心配だから、助けるわ』
見開いた。
何だろうか母さんと鈴さんが。
二人が重なって見えたのだ。
「.....」
俺はその光景に目を閉じて、そして開いた。
柔和な顔付をする。
「.....まるで母さんみたいに言いますね」
「お母さん、みたいじゃなくて、お母さんになるから.....浩介さんの為に」
「.....すいません。そうでしたね」
俺は恥ずかしくなりながら目を彷徨わせる。
夢をソファーに寝かせてニコッと笑み、立ち上がる鈴さん。
それから親父を見た。
「.....晴彦さん。私と結婚してくれて有難う御座います」
「え?あ、は、はい」
「ふふっ。何を固くなっているのですか」
鈴さん当本人も赤くなりながら後頭部をボリボリ掻いている親父に言う。
その光景に俺はクスクス笑ってから。
それから時計を見た。
20時45分か。
「.....すいません、会社の準備してきます」
「あ、御免なさいね」
「.....何がですか?全く謝る必要無いですよ」
俺は笑む。
それから目の前に有る書類を持って自室に戻ろうとした、その時。
ガシッと何かに掴まれた。
「.....むにゅぅ.....お兄.....」
「.....全く.....」
その寝顔は本気で幸せそうだった。
親父と鈴さんを見て暫く俺は口角を上げて夢の手を握り。
場に居て、夢を見守った。
☆
自室にて書類を準備しながら俺は考える。
稼がないと、と。
「.....頑張って稼がにゃあ.....」
スマホに課金する、薬とかに金の使い道が無かったのに。
夢の為に、鈴さんの為に、とその様に思えた。
学習机の椅子に腰掛けながら考える。
今頃、学習机かよって感じだが。
「.....22時か」
22時て。
時間なんてあっという間だな、と思うこの頃。
今日1日で相当に色々あった。
マジでワイルドだな。
「寝るか.....」
ギィ。
「.....?」
「お兄」
「.....コラ。お子様は寝る時間だぞ」
川の字で寝ていたんじゃ無いのか?と思いながら。
夢が眠たそうな目で俺の部屋に入って来るのに合わせて叱った。
すると、夢は見開いて頭を下げる。
何か、俺にでは無いが怯えている様にも見えた。
「.....寝られない.....」
「.....じゃあ一緒に寝るか?」
「うん.....!」
ニコニコしながら答える。
いやいや、全くもう。
まだ俺が寝るには早いがと、部屋の電気を消した。
そして、俺も横になって夢に布団を被せる。
が、暗闇の中お目目パッチリで。
俺を見つめてくる。
「.....お兄。何か話して」
「.....何を話せって言うんだ?」
「.....じゃあね.....桃太郎!」
「そんな無茶苦茶な.....」
いやいや。
そもそも鬼退治しか知らんぞ俺は。
と思ったが、創作した。
んで、話す。
気が付くと俺も寝ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます