第2話 幼すぎる

思った以上に精神が幼すぎる、その様に夢と遊びながら観察していた俺は思う。

何故なら、10歳なのにまるで幼稚園児の様に大喜びしながら、シル○ニアで効果音を口に出しながら遊ぶとか幾ら何でもおかしいのでは無いかと思うのだ。

俺が年齢的に10歳の時はこんな感じでは無かった気がする。

一応、大人への階段を登っていたのだから。

俺は目の前で遊んでいる、夢に聞く。


「.....夢。お前、何でそんなに子供っぽい遊びが好きなんだ?」


「え?」


「.....お前もしかして.....」


夢は分からないと、クエスチョンマークを浮かべる。

そんな夢を見ながら、俺は眉を顰める。

昔、医学書で見た事が有る。

この事をだ。


(巨大な精神的ショックを受けたら本人の精神が幼くなる可能性が有る)


という事をである。

俺は顎に手を添えて、夢を見つめる。

なんでこの事を言わなかった。

いや、言い出しづらかったのか?鈴さんは?

夢はシルバニ○で効果音を口ずさみ、ニコニコしていた。

わーい、なんて言っている。

まるでこれでは幼稚園児の様である。


「.....ハァ.....」


「どうしたの?お兄」


「面倒臭い事になった.....いや、お前の件でな」


とんでも無い事に巻き込まれたんじゃ無いだろうか俺は、面倒臭すぎる事に、だ。

でも、夢を見ていると.....何だか胸が苦しくなる、救いたくなってくる。

俺は夢を、だ。


『何で誰も俺を.....!!!!!』


『大丈夫。私が居るから』


俺はかつて、イジメられていた小学校時代、中学時代に母さんに救われた。

だから、仮にも挫折を味わなかった。

その母さんの意思を受け継ぐ時なんじゃ無いだろうか今は。

面倒な事はゴメンだが、俺はこんな姿の夢を救いたいと思った。

何時迄もこのままだと可哀想な気がしてきたから。

俺は立ち上がる。

そして夢を見下ろした。


「.....夢。これから宜しくな」


「.....え?あ、宜しく!お兄」


『貴方は人に手を貸せる様な存在になりなさい』


今がそうな気がしてきたよ母さん。

救うってこういう事なんだって、思った。



「ゴメンな。これからの一緒に生活する相談などをしていた.....んだが?」


「.....ゴメンなさいね。任せっきりになっちゃって。もう大丈夫よ.....ってどうしたの?お二人とも。浩介さんも」


「.....いや、夢と仲良くなったんです」


「お兄優しいよ!お母さん!」


突然、仲良くなっている俺達の光景に親父と鈴さんは目を見開いていた。

エプロン姿の鈴さんと親父。

俺は夢の頭に手を置く。

髪の毛を揺らしながら、俺の手にぶら下がって来た。

ニコニコしている。


「お兄ね!シル○ニアで遊んでくれたの!もっと聞いて!」


「はいはい。ちゃんと聞きますからね」


夢はニコニコで話す。

鈴さんは俺に頭を下げてそして静かにリビングに入って行く。

それを見計らって親父がヒソヒソと聞いてきた。


「.....突然どうしたんだ?さっきまで嫌々だったじゃ無いか」


「状況が変わったんだ。俺は.....義妹を大切にするってな」


「.....そうか。それならそれで良い。宜しく頼むぞ、浩介」


「.....ああ」


そして、俺達もリビングに入る。

今の時刻は11時58分だ。

取り敢えずは昼飯か、作るか、と思っていたが。

何だかリビングから良い香りがした。

これは?


「.....これは.....」


「鈴が作ってくれた。.....オムライスだ。懐かしいだろ」


「わーい!お兄も一緒に!」


「ふふっ。あまり暴れないの、めっ、よ。夢」


はしゃぐ、夢。

鈴さんがニコニコで俺を見てくる。

なんと言うか、オムライスは母さんが作っていたやつだ。

懐かしいなぁと思う。

親父に聞いたのだろうか?


「さて、冷めないうちに食べようか」


「ああ」


「お兄はこっち!」


親父が言ってから。

いきなり夢に引っ張られ俺は隣に腰掛ける。

そう言えば、久々だな。

この様なあったかい食事は。

いつも無言でほぼほぼ親父と共にコンビニ弁当だったから。

それだから俺が作っていたけど。

何もしないのは久々か。


「.....いただきます」


「はーい」


半熟卵がトロトロのオムライスだ。

パセリとオムライスとバタージャガイモである。

中身を開けるとトマトケチャップの良き香りがする。

俺は一口、唾を飲み込んで食べた。

クソ美味い。

ってーか、くそう。

なんだこの懐かしい感じは、味が別の意味で。


「.....えっと、もしかして熱かった!?」


食べていた、鈴さんが慌てる。

違いますよ、鈴さん。

ただ、懐かしくて涙が止まらない。

その様な、感じなんですよ。

涙を流していると、夢が俺を心配げに見ていてそれから。


「えっと、えっと、お兄!はい、テッシュ!」


「.....ティッシュな。有難う、夢」


夢が箱ティッシュを渡してくる、有難い。

なんだろうな、マジで懐い。

とにかく、懐い。

俺はその様に思いながら、心配している親父と、鈴さんと、夢を見つめて。

笑みを浮かべた。

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